なぜ中古車の価格に「差」があるのか 割高or割安になる原因

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2024年10月19日 07:21  ITmedia ビジネスオンライン

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中古車の価格はどう決まるのか

 クルマを買う時に新車と中古車でどちらを選ぶか、迷う人はそれほど多くない。初期段階ではいろいろな選択肢があり、絞り込むまでは迷うかもしれないが、利用目的や予算がハッキリすれば、どちらを選ぶかは自ずと決まってくる。


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 高級車の中古車とコンパクトカーの新車を比較して購入を検討するようなユーザーはまずいないだろう。もちろん同じ予算で高級車が手に入るのは魅力的な要素だが、あくまで検討初期の段階で篩(ふるい)に掛けられる条件だ。


 最近では納期のかかる新車と、同じモデルの中古車(といっても走行距離の短い個体や、登録のみの新古車)を比較するケースはあるかもしれないが、新車といわゆる中古車を比較検討することはあまりない。


 新車と中古車は、実はまったく異なる商品なのだ。新車は基本的に定価があり、グレードやオプション装備などで価格や内容に差が生じるものの、原則的には均一商品だ。ところが中古車は走行距離や利用の仕方、保管状況によって、コンディションが変わってくる。


 そのコンディションを判断するのは自動車ディーラーや買取店に在籍する査定士(実際には営業マンなどの有資格者)の仕事だが、査定士でも主観によりコンディションの判断に差が出るものだ。それによって、ほとんど同じようなコンディションでも査定価格(そのクルマ本来の価値)には差が生じてしまうことになる。また降雪地域と非降雪地域ではクルマの需要傾向が異なり、評価も変わってくる。


 地域性によって需要が変われば、クルマの評価額にも差が出る。業者オークションは、そうした地域による価格差を利用して、中古車買い取り業者や販売業者が利益を得るシステムでもある。


 最近では、スマホのアプリやブラウザで全国の中古車を簡単に検索し、見比べることができる。中古車は毎日のように登録され、市場を充実させている。新車は限定車などがなければ、モデルチェンジの際に新しい仕様が登場するだけで、ラインアップの変化はあまりない。


 新車の場合は納期や値引きなどの条件面や予算だけを考えればいいが、中古車は毎日のように在庫車に変化がある。いかに自分の条件や好みに合ったクルマが市場に追加されるか、毎日のように情報収集しているクルマ好きがたくさん存在するのである。


●安心して買える「認定中古車」という制度


 前述のように、中古車は1台1台コンディションが異なる。前オーナーの扱い方やメンテナンスの内容によって、機械部分の摩耗や劣化具合が変わってくるのだ。これは素人には判断がつかないから、いつ壊れるか分からないクルマなど怖くて買えないという人も存在する。


 そんな中古車の問題点を解決するべく生まれたのが、認定中古車という商品だ。認定中古車は、新車販売を行うディーラーが点検整備をして品質を保証したもので、中古車としては充実したサービスなどがある。不動産に例えれば、中古物件をそのまま売るのではなく、リフォームして価値を高めて販売するようなものだ。


 その分、価格は割高になるが、素人が安心して買える中古車というのは大きなメリットだ。30年ほど前、ドイツ車から始まったこの認定中古車という制度は、今では国産ディーラーにも導入されている。少々割高だがしっかりと点検整備がなされ、長期保証が付帯される安心感からユーザーに選ばれるケースも多い。


 中古車という透明性(価格の根拠、品質の裏付け)の低い商品の中では、認定中古車は比較的透明性の高い商品に位置付けられる。そのため新車を選ぶ感覚で購入できることから、ユーザーに支持されているのだ。


 新車供給が不安定な現在では、ディーラーにとっても認定中古車は安定した収益を確保してくれる商品なのである。


●中古車の価値は変化する 再評価で値上がりも


 中古車の価格は1台1台異なる。定価がないため、査定価格などクルマの価値に中古車店がどれだけ利益を上乗せしようとも、販売店の自由だ。


 現実には相場より高いクルマはなかなか売れないから、年式や走行距離から相場を判断して販売価格を決める。実際は買い取りや下取りの時点でクルマの状態から査定価格が定まっているから、そこにいくら利益を乗せるかという判断になる。


 新車の時には不人気で生産台数も年数も少なく、モデルチェンジされてから再評価されて中古車価格が上昇するようなクルマもある。


 米国の25年ルール(生産から25年が経過したクルマは自由に輸入し登録できる)の影響で、かつての日本のスポーティーカーが人気となり、輸出が増えるとともに中古車価格も上昇している。日本では車両盗難の刑罰が軽いこともあって、近年こうした日本車の盗難事件が目立っている印象だ。


 以前は一定期間が過ぎれば自動車メーカーは補修部品を提供する義務がなくなるため、クルマは価値を失い、老朽化すれば廃車してスクラップになるのが常識だった。現在でもスクラップになるクルマは一定数ある(鉄の価格が上昇していることもある)が、部品を取り外して中古部品として再生したり、クルマ全体を部品取り車として新興国などに輸出したりするケースもあり、廃車されたクルマの活用法も変わってきている。


 ガソリン車でも、趣味性の高いクルマは価格が低下しにくい現象も起きている。以前なら10年落ち走行10万キロのクルマなど、中古車として価値のないものであったが、現在は部品を再生産したり、リバースエンジニアリング(製品を型取りして図面や部品を作り出すこと)で部品をリプロダクトしたりする業者も登場。かつての中古車市場とは構造が変わってきているのだ。


●安いクルマには事情がある


 地域性など需要の違いによって、同じ年式の同モデルでも、価格の高い中古車もあれば安い中古車もある。単に走行距離の違いだけの場合もあるが、それ以外にも付加価値を与えているケースも存在する。


 欧州車やスポーツカーなどを専門に扱っている中古車店などは、入庫してから入念に点検整備を施してコンディションを整えてから商品化しているところもある。


 専門店は在庫が豊富だが、購入後にメンテナンス費用がたくさんかかったり、故障続きでろくに乗れないなどの問題が起こったりすれば、たちまちユーザーは離れてしまう。長くビジネスを続けている専門店は、ユーザーに満足してもらえて、自分たちも効率よく仕事をこなせる方法を採っていることも多い。


 また、車両価格が安いのは中古車販売店の事情が絡んでいる場合も多い。下取り車として入庫したが、専門外の車種のため整備点検せずに現状販売で早く手放したい、というケースが代表例だ。


 EVのリセール性の低さは、バッテリーの寿命が予測できないだけに、当分は改善が難しそうだ。認定中古車としてバッテリーを交換した個体は今後、徐々にリセール性を高めていくだろうが、根本的な問題としてEV=バッテリーの価値である状況はなかなか変わりそうにない。


 最近のクルマはメンテナンスフリー化が進む一方で、電子制御が複雑化し、点検や簡単な修理(バッテリーやオイルの交換など)もディーラーの専用診断機を利用しなければできなくなっている。


 ドイツ車の中古車が割安なのは、国産車と違い、5〜6年も日本の環境で使用していると部品の故障率が高まり、メンテナンス費用がかさむからだ。


 最近のクルマは部品の樹脂化が進み、気候変動の影響もあって保管状況によるコンディションの差が広がる傾向にある。そのため、今後ますます中古車の価格を決める要素は複雑化していく。ガソリンの価格や供給動向がどう変化するかによっても、中古車の価値は変わっていくだろう。


(高根英幸)



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  • 中古の高級車に乗ってるのってだいたいDQNね
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