マツダ「CX-80」の実質的最上級モデル? ディーゼルMHEVの仕上がりは

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2024年10月21日 08:11  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
マツダの新型車「CX-80」で最上級グレードは何かといえばプラグインハイブリッド車(PHEV)ということになるが、自宅でクルマを充電できない人にとっての最上級となれば、3.3Lの直列6気筒ディーゼルターボエンジンを積むマイルドハイブリッド車(MHEV)ということになる。どんな仕上がりなのか、試乗してきた。


CX-80のMHEVはどんな仕様?



今回は、CX-80のPHEVとMHEVを乗り比べることができた。PHEVに続いて乗ったのが、MHEVの「XDハイブリッド エクスクルーシブスポーツ」グレードだ。価格は587.95万円で、前に乗ったPHEVモデルよりも132万円ほど安かった。同じスポーツグレードなので、見た目はほぼ一緒だ。


搭載するMHEVシステムは、最高出力187kW(254PS)/3,750rpmm、最大トルク550Nm/1,500〜2,400rpmを発生する縦置き3.3L直列6気筒直噴ディーゼルターボエンジンに、48V電源の12kW(16.3PS)/153Nmを発生するモーターを組み合わせたもの。PHEVと同じくトルコンレス8速ATのAWDモデルだ。WLTCモード燃費は19.1km/Lで、74Lの軽油タンクを満タンにすれば航続距離は優に1,000kmを超える。



4気筒ガソリンエンジンを積むPHEVモデルは、エンジンが前車軸の内側にある「フロントミッドシップ」的なレイアウトが特徴的だった。MHEVはどうかと思って例のエンジンカバーを上げてみると、さすがに4気筒のようなボンネット内の空間は見られず、ヘッド上部にはもう1枚のカバーが取り付けられていた。ディーゼルエンジンの遮音対策を徹底しているのだ。


乗り心地の改善は?



エンジンをスタートさせると、わずかに6気筒ディーゼルの音と振動が伝わってくる。とはいえ、これは前日のPHEVモデルと比べたからで、条件としてはちょっと酷だ。逆に、エンジン音が聞きたいオーナーさんには嬉しいポイントと言える。



マツダの直6ディーゼルターボは結構な高回転型(CX-60の時にも感じた)なので、走り出しでモーターがアシストしてくれるのはありがたい。神戸の旧居留地内で撮影スポットを探しながらストップ&ゴーを繰り返したのだが、土曜日早朝で車両が少なかったもこともあり、大きなボディでも痛痒を感じなかった。


低速で少しざらざらした感じがあるのは、ディーゼルの振動なのかタイヤの銘柄違いによるものなのか……。といっても、さすがにCX-60(初期モデル)の時のようなものではないので、問題なしだ。前日のPHEVもそうだけれど、サスペンションのバネを柔らかくしたり、バンプラバーを短くしてストロークを稼いだり、リアスタビライザーを廃したり(まるでロードスター990Sのようだ)と、乗り心地の改善に心血を注いだマツダの思いが伝わってくる。



余談だが、思えば筆者は1995年の阪神・淡路大震災の直後に、報道カメラマンとしてこのあたりを取材しまくった記憶がある。すぐ先の三宮駅付近はビルが倒壊していたし、長田地区は焼け野原になっていた。停電で信号機は機能しておらず、道路はクルマやバイク、自転車や歩行者で大混乱する無法地帯だった。阪神高速3号線の高架が横倒しになっている衝撃的な光景もこの目で見た。それが今や、クラシカルな建物が昔のままのように再現され、それをバックに美しいCX-80の写真を撮ることができるのだ。嬉しいとしか言いようがない。

高速走行でキャラが変わる?



旧居留地内での撮影の後は件の阪神高速3号線に上がり、淡路島を目指した。60km/hの速度制限に合わせてACCを起動すると、エンジン回転数はわずか1,100rpm付近で粛々と回り始める。市内でちょい乗りを繰り返したせいで、燃費計はスタート時点の15.8km/Lが14.4km/Lまで落ちていたけれども、このまま走り続ければまた伸びていくのだろう。



淡路島に入って前が空いたところでスポーツモードに入れ、パドルでシフトダウンしてアクセルペダルを踏んづけてみる。すると、車内のサウンドは「グロロロロッ」という6気筒の野太いエンジン音だけに収斂され、一気呵成に車速を上げていく。レッドゾーンは5,000rpm超え。欧州で鍛えたCX-80の走りの真骨頂は、やはりこうした高速域にあるのだと確信できた。

ニュルブルクリンクも走った? CX-80開発秘話



試乗を終えて話を聞いたのは、CX-80の全体を取りまとめた商品開発本部の柴田浩平主査だ。


「ラージ商品群としての理想といいますか、目指す方向性があるので、CX-80の熟成には本当に時間がかかりました」と切り出した柴田さん。CX-60を発表したころは乗り心地の面でけっこう叩かれていたので、そのあたりも含め調整には苦労したのだろう。



とはいえ、「乗り心地をよくしようとすると、失われていくものもあるのがセオリー」(柴田さん)だ。具体的にはどうやってCX-80を鍛えたのか。柴田さんはこう振り返る。



「ステアリングの切りはじめでスッと頭が向きを変えて、その角度に応じてクルマが綺麗に回っていく。それがこのプラットフォームのよさで、そこをしっかりと残しながらいろいろな道を走ることで、乗り心地と走りの両立を目指しました」



実際、たくさんのトラックが走って路面があれた日本の工場地帯からドイツのアウトバーン、果てはニュルブルクリンクのサーキットまでという幅広い環境でCX-80を走らせ、熟成を重ねていったという。



では、CX-80はこれで完璧に仕上がっているのか? と聞かれたら、例えば大きめのバンプを乗り越えた時にはリアの落ち着きがもう少し欲しいなどの声が聞こえてきたりもする。そのためには電子制御のアダプティブダンパーなど、さらに高価なパーツの導入が必要になってくるのかもしれない。年次改良が得意なマツダのことだから、CX-80はまだまだ進化していきそうだ。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)

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