「妻とは離婚したから結婚しよう」 既婚男性に10年もだまされていた女性、慰謝料請求はできる?

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2024年10月22日 10:10  弁護士ドットコム

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「妻とは離婚したから、結婚しよう」


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そう言われて、恋人の男性との結婚を10年間、待ち続けていた女性からの相談が、弁護士ドットコムに寄せられています。



男性は既婚者ではありましたが、すでに離婚したと女性に伝えたことから、交際が始まったといいます。2人は結婚するつもりで、男性から「一緒に住むための家を建てる」と言われて、ショールームを見て回ったりしていたそうです。



しかし、男性は離婚しておらず、女性が男性と住むつもりでいたマイホームは、実は男性とその妻との共同名義で建てられたもので、妻が住んでいることがわかりました。



女性は男性が既婚者だとわかったことから、もう会っていないそうですが、10年間だまされていた怒りから、慰謝料をもらいたいと考えているそうです。



女性によると、男性は資産がないことから、その妻にも責任を求めたいと考えているそうです。女性が望むように、この夫婦から慰謝料をもらうことはできるのでしょうか。河内良弁護士に聞きました。



●男性の行為は結婚詐欺になる?

——女性はこの男性を結婚詐欺(詐欺罪)で刑事告訴することはできますか。



「結婚詐欺」とは、「結婚する気がないのに、『結婚しよう』と嘘をつく」ことではありません。結婚を餌に、金品や経済的利益を騙し取って初めて、犯罪としての詐欺罪が成立します。



今回の事案では、女性が何かしらの金品や経済的利益を騙し取られた形跡はなさそうですので、刑事告訴は受け付けてもらえないと思われます。



——女性は男性と妻から慰謝料をもらいたいと思っているそうですが、それぞれ可能でしょうか。



まず、直接嘘をついていた男性に対する関係では、貞操権侵害を理由に、慰謝料請求は可能であると思われます。「独身と偽って交際」と検索してみるだけでも、様々な考察が出てくるので、興味深いところです。



ただ、男性の妻に対する関係では、慰謝料請求をして認容してもらうことは難しいと思われます。



男性の妻が、男性と共謀して、男性をして相談者女性と交際せしめたというような特別な事情が認められるなら別ですが、通常は、男性の妻も、男性の不貞行為の被害者に過ぎず、この被害者に対して慰謝料を請求して認容されることはないといわざるを得ないからです。



●女性が男性の妻から慰謝料請求されたら?



——女性は男性が既婚者であることを知らなかったといいますが、10年間不貞行為があったことには間違いありません。女性は妻から慰謝料請求される可能性はありますか。



妻の存在を知らなかったことについて、相談者女性に過失があったと認められる場合には、慰謝料請求が認容される可能性はあります。



したがって、その線を狙って、男性の妻が慰謝料請求をしてくる可能性は少なくないといえます。この場合、妻の存在を知らないことについての過失の有無は、最終的には裁判官による認定に委ねられます。



●「妻とは離婚した」という嘘を見抜くためには?

——「妻とは離婚した」といって不貞行為をはたらく既婚男性は散見されます。こうした場合、女性側が男性が既婚者であるかどうか、調べる方法はあるのでしょうか。



法律上の婚姻関係の有無は、戸籍謄本の記載を見ればわかります。また、独身であれば、独身証明書の発行を受けることも可能です。



これらの証明書は、原則として、男性本人にしか取得できません。したがって、男性に対して、「私はあなたが既婚者なのではないかと疑っている。戸籍謄本を見れば一目瞭然であるから、あなた自身で取得のうえ、原本を私に交付してほしい」と求めるというのも、ひとつの方法だと考えられます。



「交際を始めた後に、疑わしい事情があって、戸籍謄本を確認したいが、相手が応じてくれない」ということであれば、貞操権侵害に基づく慰謝料請求訴訟の準備として、弁護士に依頼して戸籍謄本を職務上請求してもらうという方法もあります。



しかし、職務上請求は訴訟提起を前提とした手段ですし、現物を見せることは慎重に判断すべきこととされていますので、あまりお勧めできる方法ではありません。




【取材協力弁護士】
河内 良(かわち・りょう)弁護士
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。
事務所名:河内良法律事務所
事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp



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