【ドラフト2024】センバツ準V右腕・竹田祐、「三度目の正直」で指名はあるか?

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2024年10月23日 07:30  webスポルティーバ

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 運命のドラフト会議(10月24日)が、間近に迫っている──。

 広島が真っ先に「ドラ1指名」を公表した宗山塁(明治大)、同じく競合必至な金丸夢斗(関西大)など、昨年に続いて今年のドラフト会議も大学生候補の人気が高い。そんななか、社会人のドラフト候補にも「実績No.1クラス」の投手がいる。

 2017年のセンバツ準優勝投手・竹田祐(履正社→明大→三菱重工West)だ。

 バロメーターとなる球速は、昨季から2キロアップの最速153キロ。大卒社会人3年目ながら、まだまだ伸びシロが期待できる右腕だ。

「球のキレがいいので、即戦力として通用すると思います!」

 阪神の内野手として活躍し、今季から三菱重工Westに加入した北條史也も、竹田の実力について太鼓判を押す。

 各球団のスカウトの評価も上々だ。「昨年に比べてストレートに馬力が増した。今オフに地力をつけてきた感。社会人1年目からエースを張っていることを評価している」「久々に見たら本格派投手になっていて驚いた!」と、この秋に向けて再び注目度が高まっている。

「4位以下なら、社会人」

 大学4年時の竹田は、いわゆる"順位縛り"により、指名漏れの憂き目に遭った。翌年、三菱重工Westに入社して社会人の道を進むと、秋の日本選手権では社会人初完投・初完封を飾る。準々決勝では同年の都市対抗覇者、ENEOS相手に9回を最少1失点と互角のピッチングを披露。ENEOSの主軸だった度会隆輝(現・DeNA)を"4タコ"に抑え込んだ。

 この活躍を見て、某パ・リーグのスカウトは「現時点ではドラフト上位クラス」と好評価をこぼしていた。しかし、昨秋のドラフトで竹田はまたしても指名漏れ......。

 2度の指名漏れ──。その屈辱を胸に、元センバツ準V右腕はいかにして「3年目の飛躍」を遂げたのか。話は、2023年ドラフト当日の夜までさかのぼる。

【社会人3年目、25歳、ラストチャンス】

 指名漏れの知らせに、竹田の父親は居てもたまらず大阪郊外の自宅からクルマを飛ばし、息子の住む兵庫県明石市の野球部寮まで駆けつけた。そして、2度の指名漏れの悔しさを和らげようと、回転寿司店に連れて行った。しかし、ふだん20皿はペロリと平らげる寿司を、竹田はショックのあまり「たった3皿しか食べられなかった......」と言う。

 そして迎えた2024年、社会人3年目。「プロへのラストチャンスだと思って、後悔なく毎日を過ごそう」と、竹田は不退転の覚悟で野球に向き合った。

 明大4年時は、プレートの三塁側を踏んでいたところを真逆の一塁側に変更。社会人1年目には、スリークォーターからオーバースローにするなど試行錯誤を繰り返して、今まで以上に進化の可能性を模索した。

 手始めに、2カ所の動作解析に通った。そこで己の現状を把握すると、フォームの修正に取り組んだ。さらには守安玲緒投手コーチの提案により、長年ノーワインドアップで投げていたスタイルを、明大3年秋に一度取り組んだ「常時セットポジション」に再トライした。

 すると、これが見事にハマった。

「上半身のムダな動きがなくなったことで、フォームのバランスがよくなった。今まではスピードを出そうとして力んでいたけど、今季は軽く投げようと心がけたら、逆にスピードが出るようになりました!」

 食生活も見直した。世界的テニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチが実践したことで広まった「グルテンフリー」も取り入れた。

「キッカケは『お腹のなかに小麦が溜まることによって、栄養が筋肉まで行きにくい』って大学の後輩から聞いたので。実践してみたら、身体がメッチャ大きくなりました」

 グルテンフリーを始めたことで、「睡眠の質がよくなった」のも大きな収穫だ。昨季のドラフト解禁年は登板過多の疲労によって「フォームがバラついた」ことで長らく不調に陥っていたが、睡眠の質が向上したことで「夏を乗り越えられた」と語る。

【明大の先輩・柳裕也直伝のカーブも披露】

 それらすべてのトライが噛み合ったことにより、道はついに開ける。今春のJABA京都大会で、自己最速の153キロをマークしたのだ。

 そして、社会人野球最大の舞台である、夏の都市対抗。3年連続で初戦を託された竹田は、初回からこの日最速の152キロをマークするなど、東京ドームで自身初となる大台を連発する。ところが3回、2死三塁からから連続二塁打を浴びて昨年ベスト4の王子に一時逆転されると、思わず「昨年(=4回を持たずKO降板)がよぎった......」。

 その流れを変えるべく、竹田は4回以降、変化球の割合を増やすピッチングへとシフト。その球種のバリエーションも実に豊かだ。

 得意のスライダーと「真っ直ぐの出力アップにつれて高速化した」フォーク、カットボール、それらに織り交ぜて「ここぞの時には必ず投げる」明大の先輩・柳裕也(現・中日)直伝のカーブと、すべての持ち球を駆使。以降は無安打に抑えると、終盤に味方が勝ち越し、結局9回を5安打3失点。8つの三振はすべて空振りで奪い、社会人では自己最多145球の力投で初完投・初勝利を飾った。

 もちろん、各球団のスカウトはこの大一番の試合をしっかりと視察。阪神は12球団最多の6人態勢で訪れていた。巨人や楽天が4人態勢でクロスチェックしていたのも、今ドラフトを占ううえでは見逃せないポイントだ。

 そんな竹田に、プロ入りにかける想いをあらためて尋ねた。

「今まで悔しい思いをしました......。けど、『あの日があったから大きくなれた』と、笑って話せる日がくればいいなと」

 また、3度目のドラフトを迎える現在の心境については、「1年間、やることをやってきて、自分でもまずまず納得の行く結果も出ました。『今年こそは!』と思っているので、ソワソワはしてないです(笑)」。

 2度の挫折を乗り越え、「三度目の正直」なるか──。かつてのセンバツ準V右腕は、「その時」が来る瞬間を待ちわびている。

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