関田誠大は「チームを勝たせられるセッター」連続逆転勝利で見せた戦術的才能の一端

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2024年10月23日 09:51  webスポルティーバ

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 試合前のウォーミングアップ。何気ないオーバーハンドパスだったが、ボールは生きているように弾んだ。

 関田誠大がボールに触ると、命を吹き込むようだった。張り詰めた臀部、しなやかなハムストリグ、太い体幹。それぞれが連動し、肩、腕、そして指先にまで神経が行き渡っている。ボールのどこを、どのタイミングで強く柔らかく押せば、どんな軌道を描くのか、それを知り尽くしているのだ。

 関田の凄みは、"ボール扱いがうまい"で収まらないところにある。戦略的な視点。それがチームの浮沈につながっている。

「周りのよさを引き出すのが、自分の仕事」

 関田は言う。攻守を司る男の矜持である。

 10月19日、エントリオ。ジェイテクトSTINGS愛知は、ウルフドッグス名古屋の本拠地に乗り込んでいる。それぞれが岡崎市、稲沢市をホームタウンにする愛知のライバル、というだけでない。サントリーサンバーズ大阪や大阪ブルテオンを含めて、優勝を争う強豪同士の対決だった。両チームとも人気選手が多く、会場には女性を中心に満員の観客が詰めかけ、熱気が立ち込めていた。

 第1セットは、ウルフドッグスが先手を取る。オポジットのニミル・アブデルアジズがパワフルな一撃を連発。セッターの深津英臣の多彩なセットアップで、山崎彰都もセンスを発揮。そしてエース、高梨健太のサーブがさえ渡って、それがブロックの強さを引き出すと、一気に点差を引き離していった。大歓声にもあと押しされ、25−17で制した。

「新しいチームで、新しいメンバー」

 ミハウ・ゴゴール監督がそう説明したように、ジェイテクトは戦い方を模索していた。それが、前節はVC長野トライデンツに敗れる波乱を引き起こし、この日も出足は押される形になった......。

 その流れを変えたのが、ジェイテクトの攻守を司るセッター、関田だ。

「1セット目を取られても、先週よりよくなっていて、チームとして戦っている感じが楽しかったです。絶対に勝てる、とは思って臨んでいたので......」

【ゲームのリズムを作った】

 そう語る関田は、2セット目の立ち上がり、サービスエースを取るなど、3連続ブレイクに成功した。これで、呆気なく流れを引き戻す。着実にサイドアウトを取って、トリー・デファルコ、宮浦健人、藤原直也を自在に使い、得点を重ねていった。18−20と2点差に迫られたが、再び関田がサーバーで連続ブレイク。22−25で競り勝った。

 3セット目も、関田のサーブで相手を撹乱し、先手を取る。接戦のなか、ウルフドッグスにミスが出始め、デファルコ、宮浦が豪快にスパイクを打ち込むたび、セットアップした関田は歓喜で体を震わせていた。怒涛の流れで、16−25と大差をつけて奪った。

「チームとして打開していく、試合を乗り越えていく、というのはとても楽しかったです。僕としてもサイドアウトを取らないといけない、っていう責任を感じながらやっていたんですけど。(周りが)パスを非常に頑張ってくれて、スパイカーも一生懸命やってくれていて。その思いを感じながら、今日は臨めたと思います」

 関田は、試合をそう振り返っている。ゲームのリズムを作る。その点で、彼がコントロールした試合だった。

 すでに流れをつかんだ4セット目、反撃に出たウルフドッグスに対し、関田はトータルな攻守でサイドアウトを取り、粘り強いプレーに徹している。そしてリベロの小川智大が拾い、高橋健太郎がブロックで連係し、長いラリーを制すと、一気にポイントを取っていった。味方が振った右腕が不可避に顔へ当たって、鼻血を出すアクシデントもあったが、勝利へ突き進んだ。

「ラリーに関しては、ものにできると信じていました。(関田)誠大のトスのチョイスもよかったので。ロングラリーを取るチームは、やはり勢いに乗れるので大事です」(ゴゴール監督)

 ジェイテクトは19−25でこのセットを取り、セットカウント1−3で勝利を収めている。

「チームを勝たせられるセッター」

 それが関田の信条だが、確実に実行していた。今や史上最強と言われる日本男子バレー代表を牽引してきた戦術的才能の一端を見せた戦いだったと言えるだろう。勝ち筋を見出す。その点で、やはり傑出している選手だ。

 最後に、ウルフドッグスで一昨シーズン、優勝を果たしたヴァレリオ・バルドヴィン監督に質問を投げた。

――「2セット目以降はミスが多かった」とのことですが、攻守を司る関田選手の精度がミスを誘発した、というのはありますか?

「それはないです。相手が何もしていないのにミスをしてしまった。たとえばパイプ(攻撃)でラインを踏んでしまうとか。自分たちのミステイクでした。これでは相手がジェイテクトでなくとも......」

 そう言って否定したあと、こうも続けた。

「関田のような優秀なセッターがいる、安定した戦いができるチームが相手だったら、なおさらでしょう。ミスの代償を払うことになりますね。つまり、負けることになるのです」

 関田を擁するジェイテクトは、翌日のウルフドッグス戦もセットカウント、2−3と逆転で勝利している。3勝1敗で3位に浮上。これで上昇気流に乗るか。次節は大阪で、首位に躍り出た日本製鉄堺ブレイザーズと対戦予定だ。

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