災害に備えて「ソーラーパネル」でスマホを充電してみた モバイルバッテリーの選び方も解説

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2024年10月24日 06:11  ITmedia Mobile

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非常時の備えとしてモバイルバッテリーとソーラーパネルを購入した

 近年、気候変動の影響で自然災害が増加している。防災への意識が高まる中、スマートフォンは災害時の重要なツールとなっている。災害情報の収集、家族や知人との連絡、避難所の位置確認など、スマートフォンが命を守る情報源になることを考えると、非常時の電源確保は防災対策の要といえる。


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 今回は、筆者が非常用持ち出し袋の見直しを行う中で選んだ、ソーラーパネルとモバイルバッテリーについて紹介する。


 きっかけは、防災の日に「東京防災」を改めて読み直したことだった。最新版の「東京防災」には、モバイルバッテリーについて興味深い記載があった。「スマートフォンの充電器はソーラー式と乾電池式の複数を常備しておく」というのだ。筆者宅にあった初版の東京防災ではソーラー式の言及はなかったため、最新版では新しい知見を取り入れているのだろう。


 この記述を読んで、我が家の防災対策を見直すことにした。非常用持ち出し袋を新しく用意する際に、ソーラーパネルを入れておき、バッテリーについても新たに購入して備えておくことにした。


●ソーラーパネルとモバイルバッテリーの選択


 東京防災ではソーラー充電型のモバイルバッテリーが推奨されているが、筆者はあえてソーラーパネルとモバイルバッテリーを別々に選択した。その理由は主に2つある。


 まず、故障リスクの低減だ。一体型製品は一部が故障すると全体が使えなくなる。特に、バッテリーの経年劣化が懸念される。分離型なら、バッテリーが劣化してもソーラーパネルは使用可能だ。次に、長期的な性能維持が挙げられる。分離型ならバッテリーのみを新しいものに交換でき、システム全体の性能を維持しやすい。より性能の高い製品が登場したら、個別にアップグレードできる利点もある。


 これらの理由から、長期的な信頼性と性能維持を重視し、別々の製品を選ぶことにした。災害はいつ起こるか分からない。だからこそ、長期的に性能を維持できる防災グッズの選択が重要だと考えた。


●ソーラーパネル選びのポイント


 ソーラーパネルを選ぶにあたり、以下の点を重視した。


1. 出力:スマートフォンを充電できる十分な出力があること


2. 携帯性:非常用持ち出し袋に入れられるサイズと重量であること


3. 耐久性:屋外での使用に耐えられること


4. 変換効率:曇りの日でもある程度の発電ができること


 一般的に、スマートフォンの充電に適したソーラーパネルは5W〜30W程度の出力のものが選ばれる。小型軽量で十分な充電能力を持つという点で、このレンジが携帯性と実用性のバランスが取れているためだ。


 一方、100Wなどの大型ソーラーパネルは、主に携帯用電源との併用を想定している。これらの大容量パネルは、ノートPCやその他の電力消費の大きい機器の充電、あるいは長期の野外生活などでより多くの電力が必要な場合に使用される。ただし、サイズと重量が大きくなるため、機動性は低下する。


 今回の選定では、防災用としての携帯性を重視し、これらの条件を満たす製品として、FlexSolar製の20Wソーラーパネルを選択した。


●選んだソーラーパネル:FlexSolar 20Wソーラーパネル


 この製品の最大の特徴は、折りたたみ式で持ち運びやすい点だ。展開時のサイズは462×304×14mmだが、折りたたむと304×248×15mmと14型ノートPCとほぼ同じサイズになる。重量も実測で約428gとこの手のパネルの中では軽い。


 メーカーのFlexSolarは中国のMeigetekが所有するブランドで、米国に拠点を展開するなど、一定の販売実績があるようだ。


 変換効率は最大24%で、曇りの日でもある程度の発電が期待できる。また、パネル表面には耐久性の高いETFE素材を使用しており、屋外での使用や長期保管に適している。


 出力は最大20Wで、USB Type-A端子とUSB Type-C端子の2ポートを備えている。どちらかのポートやケーブルが使えなくてももう片方が機能するという点で、災害時の冗長性を確保できる。


 懸念点としてはソーラーパネルが対応している急速充電規格がQuickCharge 3.0規格で、業界標準となりつつあるUSB PD(Power Delivery)と互換性を持っていない点が挙げられる。QC3.0非対応機種とのリンクはUSB規格のBCP(Basic Charging Protocol)1.5Aで最大7.5W給電になると予想される。これがこのソーラーパネルが低価格で販売されている理由でもあるのだろう。


 価格は執筆時点(2024年9月)で5345円だった。これはAmazon.co.jpでの10%オフクーポンを適用した後の価格だ。同クラスの製品としては標準的な価格帯といえる。なお、こういったクーポンやセールは頻繁に行われているので、購入時には最新の価格をチェックすることをおすすめする。


●モバイルバッテリー選びで押さえておきたいポイント


 モバイルバッテリーの選定では、長期保管時の性能維持と安全性を最重視した。筆者は安全性を特に重視し、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用した製品を選んだ。しかし、一般的には通常のリチウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーで十分だろう。


 選ぶ際のポイントは以下の通りだ。


1. 安全性:実績のあるメーカーの新しい製品を選ぶこと。最新の製品は安全性が向上している


2. 容量:数日間の使用に耐えられる十分な容量があること。1万2000mAh程度あれば、スマートフォンを2〜3回充電できる


3. 出力:USB PD対応など、急速充電に対応していること。緊急時に素早く充電できる


4. 入力:本体の充電が速いこと。ソーラーパネルからの充電にも対応しているといい


5. 耐久性:防災用途なので、多少の衝撃や温度変化に耐えられること


6. サイズと重量:携帯しやすいコンパクトさであること


 リン酸鉄リチウムイオン電池は、700度という高温でも安定して動作し、熱暴走のリスクが非常に低い。しかし、最新の高品質なリチウムイオン電池でも、安全性は大幅に向上している。


 自己放電率については、どちらも月に1〜2%程度で、長期保管には十分な性能だ。つまり、自己放電率だけを見れば、リン酸鉄リチウムイオン電池にこだわる必要はない。


 結局のところ、実績のあるメーカーの新しい製品を選ぶことが、最も現実的で信頼できる選択肢となるだろう。安全性、性能、価格のバランスが取れているからだ。


 どのタイプの電池でも、適切な管理が重要だ。半年に1度程度の定期的な点検と充電を行い、極端な高温や低温を避けて保管することをお勧めする。


●選んだモバイルバッテリー:エレコム リン酸鉄モバイルバッテリー(12000mAh/PD20W/C×1+A×1)


 エレコム製の1万2000mAhモバイルバッテリーは、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用した数少ないモバイルバッテリーの1つ。この点が最大の決め手となった。


 リン酸鉄リチウムイオン電池を選んだこともあり、重量は実測で309gある。手に持ってみてもずしりと重く感じる印象だ。充放電性能は一般的で、USB PDによる急速充電に対応している。


 重量は、両方合わせて約740gとなる。非常用持ち出し袋に入れて歩いてみたが、もとから食料品などを詰めていたこともあり、追加の負担としてはそれほど大きくは感じなかった。


 価格は執筆時点(2024年9月)で4609円。通常のリチウムイオン電池を使用したモバイルバッテリーと比べると若干高めだが、珍しいリン酸鉄リチウムイオン電池を採用していることを考えれば妥当な価格といえる。


●ソーラーパネルは20Wでも実用的、充電規格がボトルネックに


 ソーラーパネルについては、9月の秋晴れの日に1時間ほどテストを行ってみた。使い方は簡単だ。直射日光の元で広げて5秒ほど置き、スマホやバッテリーとケーブル接続するだけでよい。日差しが十分であれば、充電が進む。


 「Google Pixel 9 Pro」と接続してUSB電流電圧チェッカーで計測したところ、FlexSolar 20Wソーラーパネルは最大で8.2Wの出力を記録。これは定格の41%程度だが、スマートフォンの充電には十分な電力だ。


 ソーラーパネルの実力をフルに発揮できてないのは、スマートフォンとの接続がUSB規格のBCP 1.5Aで行われているため。モバイルバッテリーとの組み合わせでも充電速度は若干落ちるが、実際の防災用途では大きな問題にならないと判断した。


 充電開始時は4.8Vほどだった電圧は、すぐに5V付近で安定した。電流は最初1.7A程度と高めだったが、充電が進むにつれて徐々に減少し、1時間後には0.4A程度まで低下した。これは典型的なリチウムイオンバッテリーの充電パターンだ。


 バッテリー残量59%から充電を開始し、1時間の充電でスマートフォンのバッテリー残量は69%まで上昇した。この間、ソーラーパネルは約1.275Ahの電流を供給し、総エネルギーは約6.076Whだった。このペースで充電を続けた場合、1万2000mAhのモバイルバッテリーは単純計算では約9時間25分(565分)で充電が完了することになる。


 しかし、実際の充電時間はこれよりも長くなる可能性が高い。日射量の変化や気温などの環境要因、モバイルバッテリー自体の充電効率(通常80〜90%程度)、そして充電終盤での充電速度の低下などを考慮する必要があるからだ。これらの要因を踏まえると、実際の充電完了までの時間は12〜14時間程度と見積もるのが妥当だろう。


 つまり、晴れた日であれば、朝から夕方までの日照時間内で、このソーラーパネルを使って1万2000mAhのモバイルバッテリーを満充電にできる可能性が高い。これは災害時の電源確保という観点から見ても、十分に実用的な性能といえる。


●曇りの日でも日差しが出ていれば使える


 曇り空の日でも検証を行ってみた。晴れの日と比べると充電性能は落ちるものの、それでも十分に実用的な結果が得られた。10時台の1時間の充電で約0.71Ahの電力を供給し、総エネルギーは約3.35Whだった。これは晴れの日の約55%の性能だが、災害時の緊急用電源としては十分な出力といえる。


 充電中の電流値は大きく変動しており、これは雲の動きによる日射量の変化を反映していると考えられる。それでも電圧は安定して約4.7V前後を維持しており、ソーラーパネルの制御回路が適切に機能していることが分かる。


 この結果から、FlexSolar 20Wソーラーパネルは曇り空の下でも一定の充電能力を発揮し、災害時や屋外での使用において信頼できる電源となることが確認できた。ただし、晴れの日と比べて充電時間が長くなることを考慮し、可能な限り晴れた日にバッテリーを充電しておくことが望ましい。


●モバイルバッテリーは容量50%程度で保管するのがベター


 今回の検証に合わせて、モバイルバッテリーの適切な保管方法について改めて調べてみたら、意外な発見があった。


 一般的には満充電で保管するのがいいと思われがちだが、実は30〜50%前後の充電レベルで保管するのが最適だという。この範囲なら自己放電を抑えつつ、過充電のリスクも避けられるのだ。また、0度から25度の温度範囲で保管することで、バッテリーの劣化を最小限に抑えられる。


 これらの知見を踏まえ、使用しないときは充電レベルを50%程度に調整し、涼しい場所に保管することにした。


 災害用として保管する上での注意点となるのは浸水への対策だ。ソーラーパネルは防水だが端子部は防水仕様ではない。また、モバイルバッテリーも防水仕様ではないため、非常用持ち出し袋に入れる際は別途浸水対策を行った方がいいだろう。


 また、平時から使用方法に慣れておくことも重要だ。筆者は半年に1回、ソーラーパネルとモバイルバッテリーの点検を行い、実際に充電してみることを決めた。


 災害はいつ、どこで起きるか予測できない。そんなとき、スマートフォンは私たちの命綱となる。災害情報の収集、家族や友人との連絡、さらにはSNSでの安否確認など、充電されたスマートフォンは現代の防災に欠かせないツールだ。


 だからこそ、その電源確保は最優先事項の1つといえる。本記事で紹介したソーラーパネルとモバイルバッテリーの組み合わせは、この課題に対する効果的な解決策の1つだ。読者の皆さんも、自身の生活スタイルを考慮して、最適な防災グッズを選んでみてはどうだろうか。小さな準備が、いざというときの大きな安心につながる。今日からでも、あなたの防災対策を見直してみよう。



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