「中国車はあぶない」のイメージ覆せるか BYD、長澤まさみCM起用の効果は?

2

2024年10月25日 05:21  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

中国のBYD、米テスラや韓国ヒョンデとは異なる販売戦略

 俳優の長澤まさみさんを起用し、「ありかも、BYD!」のキャッチコピーが印象的なテレビCMを展開する、中国の自動車メーカー「BYD(比亜迪)」。日本には2023年1月にBEV(バッテリー式電気自動車:Battery Electric Vehicle)の「ATTO 3(アット・スリー)」を国内初投入し、これまでに計3モデルを販売している。


【その他の画像】


 世界のEV市場(販売台数)を見ると、2023年第4四半期にBYDは米テスラを抜いて1位となったが、日本の乗用車市場への参入にあたってどのような戦略を描いているのだろうか。オンラインではなくディーラー販売にこだわる理由や、テレビCMを展開する狙いなど、BYDの日本法人「BYD Auto Japan」(横浜市)の東福寺厚樹社長に聞いた。


●中国企業BYDとは?


 BYDは世界有数のリチウムイオン電池メーカーとして、1995年に中国の深センで設立。自動車事業には2003年に参入し、EV生産に必要な主要部品を全て自社生産できる点などを強みとしている。


 日本では2005年にビーワイディージャパンを設立し、公共交通機関向けにEVバスの販売やEVフォークリフトの直販など、B2B事業を長年にわたって手掛けてきた。乗用車の導入に向けてBYD Auto Japanを設立したのは2022年7月のことだ。


 日本の乗用車市場への参入のきっかけは「2020年から欧州を筆頭に先進各国への輸出を決定したタイミングで、日本もターゲットに入っていたため」だという。


 同社は2020年、刀の形をした「ブレードバッテリー」という独自開発したLFP電池(リン酸鉄リチウムイオン電池)を発表。高度な車体剛性と安全性を実現したことで、同社を世界的なEVメーカーに押し上げた原動力ともいわれている。乗用車にブレードバッテリーを搭載したことをきっかけに、グローバル展開を強化した。


 「日本だけがターゲットだったわけではないが、グローバル展開を進める中で日本は当然ターゲットとすべき市場だった。2022年の自動車販売台数を見ると、日本はインドに抜かれ4位になったものの、乗り換え需要は高く、EVの観点ではまだまだ伸びしろばかりの市場であると判断した」


●米テスラや韓国ヒョンデとは異なる販売戦略


 2023年に日本発売モデル第1弾のATTO 3を投入するにあたって、同年1月から商談や試乗の案内が可能な「開業準備室」を全国20店舗で構えた。翌2月には、ショールームを備えた日本1号店となる「BYD AUTO 東名横浜」をオープンした。


 現在、ショールームを備えた店舗は33カ所あり、2025年末までに100カ所以上にすることを目標にしている。ちなみに、開業準備室を含めると、目標の半数を超える計58カ所に達している(10月24日現在)。


 現時点では本格的なショールームは備えていないものの、試乗や購入に関する相談および購入後のアフターサービスの受付などが可能な開業準備室を含めると、目標の半数を超える計58拠点まで達している。


 このように従来型のディーラー販売を重視する理由として、東福寺氏は「EVで日本市場に参入した米テスラや韓国ヒョンデはオンライン販売を基本としていた。BYDもオンラインを検討したが、中国製のEVは日本初であったことや日本ではBYDの知名度が低いこともあり、ディーラー販売のほうが受け入れられると判断した」という。


 「実際に車体を見て試乗してもらうことで、ドアの開閉やシートの着座、ハンドルの感覚などが分かる。乗り換えであれば今乗っているクルマとの比較もでき、購入までのプロセスを大切にする人にはリアル店舗の良さを感じてもらえる。何もない状態から100カ所を目指すことは苦労もあるが、面白みもある」


●テレビCMでメインターゲット以外にも認知拡大を狙う


 プロモーションについては、2024年4月より長澤まさみさんを起用したテレビCMを流している。パリ五輪開催前となる7月中旬まで放映し、9月からは再放映を開始した。


 メインの購買層はガジェット好きの男性やファミリー層だが、あえてマス向けのテレビCMを選択した。長澤まさみさんを起用した理由は「家庭の中で“金庫番”となる人も含めて、幅広い層に認知してもらいたい」狙いがあった。


 「中国製のEVというだけだと『危ないのでは』と決意がゆらいでしまう可能性がある。だが『長澤まさみさんが“ありかも、BYD!”という決めゼリフで出演しているCMのクルマ』となれば、印象が異なる。実際にCM放映後、週によっては来場者数が1.5〜2倍ほどに増加した」


 そのほかCM放映前からも各モーターショーへの出展や試乗ができるイベント「BYDキャラバン」を実施するなど、各種プロモーションを展開している。


●毎年1〜2車種を投入予定、PHEV販売の可能性は?


 日本ではSUVのATTO 3のほか、2023年9月にコンパクト型ハッチバックの「DOLPHIN(ドルフィン)」、2024年6月にセダンの「SEAL(シール)」をそれぞれ発売している。いずれもBEVだ。


 受注台数(10月中旬)を見ると、最初に発売したATTO 3が1870台で最も多く、DOLPHINが1000台、SEALが500台を突破しているという。ATTO 3はSUVということもあり、幅広い層に受け入れられているようだ。


 DOLPHINはガジェット好きの人に支持されており、東京都だと補助金を利用すれば300万円を切ることも。SEAL購入者の半数は、セダンタイプ(輸入車や国産のクラウンなど)からの乗り換えだそうだ。


 今後については、毎年1〜2車種の投入を予定。「2025年も1車種は確定、もう1車種についても間に合うように動いている」


 日本でBEV以外を販売する可能性について「BYDは現在PHEV(プラグインハイブリッド)とBEVの二刀流で販売しており、世界で初めて量産型PHEVを販売した会社でもある。現時点では未定だが、将来的には日本でもPHEVの販売を検討する方向で本社ともディスカッションをしている」という。今後の展開に注目したい。


(熊谷ショウコ)



このニュースに関するつぶやき

  • 日本で日本車以外を買う人はどこに価値を見出しているのか。それはブランドだと思う。ベンツに乗ってる、BMWに乗ってるってのはステータスになりうる。中国車に乗ってたらバカにされるから買わないでしょ。
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(2件)

ニュース設定