「鉄道きっぷのオンライン予約」は便利だが課題も多い 各社のサービスを使って感じたこと

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2024年10月25日 06:11  ITmedia Mobile

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上越・北陸新幹線の顔、E7系(提供:東日本旅客鉄道)

 2010年代に入ってからか、鉄道のきっぷをWebで予約する人が増えたようで、JRグループのみどりの窓口は駅によって営業時間を縮小、もしくは廃止の傾向にある。また、多くの駅で指定席券売機が導入され、20世紀に比べると、買いやすい環境が整った。そこでWebによるきっぷの予約、発券サービスについて、メリットとデメリットを考えた。


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●Web予約は高速バスが充実している


 Web予約については高速バスの方が充実していると思う。個人的な話で恐縮だが、2014年4月に夜行列車衰退の影響でやむなく夜行の高速バスに乗ることにした。ところがきっぷの買い方が分からない。みどりの窓口で買えるはずもなく、パソコンで「どこに行ったら買えるのか?」を検索したところ、高速バスネットにたどり着いた。すなわち、外出してまで買いに行く必要がないのだ。


 高速バスの運賃は通常から割引まで、購入もクレジットカード、コンビニエンスストアでの現金払いなど、選択肢もある。会員登録後、クレジットカードによる後払いを選択。いざ乗ってみると乗客の大半はスマートフォンを出し、運転士が画面のQRコードを読み込む。乗車券のQRコード化についても、鉄道より進んでいたようである。


 私はデジタルにうといアナログ人間で、鉄道のきっぷでWeb予約したのは、東急電鉄大井町線急行のQシートのみ。このときはQシートルポも含め、取材が立て続けに発生したため、駅で買う余裕がなく、やむなく専用サイトにアクセスして購入した。


 鉄道のきっぷでWeb予約に消極的なのは、パソコンやスマートフォンが使いこなせない他、ダイヤ改正になると「JR時刻表」誌(交通新聞社刊)を購入し、季節向けの臨時列車を除き簡単に調べられるからだ。高速バスの場合、JR時刻表に専用のページがあるとはいえ、JRバスグループ以外のバス事業者のダイヤも掲載されているため、きっぷの買い方も異なる(JRバスグループとの共同運行は除く)。


●JR東日本のえきねっとは「検索の使い勝手」が良好


 えきねっとは20世紀から展開しているサービスで、1997年頃にはタレントの加藤紀子をCMに起用し、電話予約サービスを宣伝していた。現在は会員登録をすれば、駅の窓口などに行かなくても、インターネット上でJRのきっぷ、えきねっと限定割引商品を購入できる他、チケットレスでの乗車、利用に応じたJRE POINTの付与、利用もできる。


 えきねっとで購入したきっぷは、JR東日本・北海道・東海・西日本の駅で、そのマークがある指定席券売機、みどりの窓口で受け取りができる。ただし、営業時間は駅ごとに異なるので、事前に確認した方がよい。


 ログインしない、購入しない形でJR東日本のえきネットにアクセスすると、トップ画面に「新幹線・JR特急列車を探す」があり、すぐに検索できるようになっている。


 試しに乗車駅を東京、降車駅を秋田、経由駅を仙台、羽前千歳に設定。乗車日を2024年10月27日(日曜日)、出発時間を5時00分に選択した。経由駅は3つまで入力できる。


 検索したところ、先頭と2番目に東京6時32分発の東北・秋田新幹線〈はやぶさ1号・こまち1号〉の秋田行きが登場した。仙台で仙山線の普通電車山形行き、羽前千歳―山形間は折り返し乗車が可能なため、山形で山形新幹線〈つばさ123号〉新庄行きに乗り換え。この列車は羽前千歳を通過する。終点新庄で奥羽本線11時22分発の普通電車秋田行きに乗り換え、秋田には14時11分に到着する。


 この検索は使い勝手がよく、駅名についてはJR東日本以外の駅も候補として表示される他、乗り換えの回数、乗車区間の距離(営業キロ)、大人1人あたりの値段(運賃、特急料金など)、優等列車のみながら検索列車の空席状況が表示される。


 この他、航空機の早割に相当する「新幹線eチケット」「特急トクだ値」「在来線チケットレス特急券(トク割)」がある。いずれもJR北海道の新幹線、在来線特急にも広げており、買いやすい、利用しやすい体制を構築した。


 ただ、えきねっとは新幹線、在来線特急の特定列車に特化した印象があり、ジグザグルートの乗車券などは申し込めない。JR東日本によると、経路や所要時間の短い経路を優先的に案内しており、複雑な経路、4列車以上の申し込みなど、希望の経路が検索結果に表示されない場合もあるという。


 さらにJR東日本は認識している課題として、「商品が多岐にわたることから予約手続きが複雑になること、画面遷移や注意事項などのご案内などが多いことや、商品ごとの違いが分かりにくいというご意見」を挙げた。今は改善に向けて、模索している最中といえる。


 私が気になるのは、えきねっとの会員でないと購入できないことだ。出張などで頻繁に乗る方ならともかく、年に1回程度の方にとっては会員登録自体が面倒なので、会員外でも購入できるようにしてほしいところだ。


●JR北海道「特急トクだ値」の欠点は、乗り継ぎ利用ができないこと


 JR北海道に関しては、乗車日前日の23時50分までに「特急トクだ値」を申し込むと、最大55%引きで当該の特急に乗車できる。


 例えば、特急〈オホーツク〉の札幌―網走間は、通常期1万540円(運賃7370円、指定席特急料金3170円)のところ7360円で、特急〈大雪〉の旭川―網走間は通常期8560円(運賃5610円、指定席特急料金2950円)のところ4270円で利用できる。


 ただ、この特急トクだ値には欠点がある。特急の乗り継ぎ利用ができないことだ。


 先述した特急〈大雪〉は旭川で特急〈ライラック〉に接続するが、それぞれを購入しなければならない。特急〈ライラック〉〈カムイ〉の2860円(通常期は運賃2860円、指定席特急料金2360円の計5220円)、特急〈大雪〉の4270円を分けて買うと7130円になり、特急〈オホーツク〉利用に比べ230円安くなるという“ウラワザ”が成立するとはいえ、そのような買い方をする人は極めて少ないだろう。


 特急乗り継ぎに関しては、旭川―稚内間の特急〈サロベツ〉も同様。札幌―稚内間の特急〈宗谷〉は7200円(通常期は運賃7920円、指定席特急料金3170円の計1万1090円)に対し、特急〈ライラック〉〈カムイ〉の2860円、特急〈サロベツ〉の4440円を分けて買うと7300円となり、100円高い。


 過日、特急〈大雪〉の不振や快速格下げの可能性が報じられたが、札幌―北見・網走間は2種類購入すれば乗れることを宣伝、もしくは特急〈オホーツク〉用でも利用可にするなど、テコ入れといった営業面の強化が求められる。


●チケットレスに力を入れるJR東日本とJR北海道 大幅な割引も


 JR東日本は特急券のチケットレス化を進めており、スマートフォンの画面が指定席特急券代わりとなる。「在来線チケットレス特急券」は100円引き、「在来線チケットレス特急券(トク割)」は大幅に割り引いている。


 JR北海道は「在来線チケットレス座席指定券」と称している。手稲―札幌間の〈ホームライナー〉は指定席が530円のところ210円(子供100円)、グリーン車が780円のところ310円(子供同額)としており、以前のような割安感を与えることで利用促進に努めている(乗車整理券時代はわずか100円を追加するだけで乗れた)。


 しかし、新千歳空港―札幌・小樽間などの快速〈エアポート〉の指定席uシートは840円のまま。せめて300円に引き下げできないだろうか。JR北海道の“ドル箱列車”とはいえ、チケットレスに割安感をアピールしてほしい。また、特急〈ライラック〉〈カムイ〉もチケットレスによる割引がなく、特急トクだ値に力を注いでいる。両立させないと、利用客のさらなる増加に結び付かない。


●JR西日本のe5849は、予約できる範囲が広いのが特徴


 JR西日本のe5849は、インターネットのe、御予約の「5849」を語呂合わせしたという、いかにも関西に本社を構える企業らしいネーミングだ。


 先述のえきねっとと同様、駅に行かなくても、自宅やスマートフォンで座席などをゆっくりと選べることをセールスポイントにしている。JR西日本は「IC(交通系ICカード)やチケットレス乗車であれば、乗車前のきっぷの発券も不要となり、スムーズにご乗車いただけます」と強調している。


 さらにえきねっとと大きく異なるのは、予約できる範囲が広いこと。山陽・九州新幹線新大阪―鹿児島中央間、西九州新幹線武雄温泉―武雄温泉間、北陸新幹線東京―敦賀間をはじめ、JR西日本・四国・九州エリアの特急列車(一部の快速列車含む)、JR東海・東日本の一部エリアの新幹線・特急列車などにも対応している。


 ログインしない、購入しない形でJR西日本のe5849にアクセスする。新規予約にクリックすると、「リストから選択」「駅名を入力」の2種類がある。


 「リストから選択」をすると、10種類の中から選択する。試しに「奈良/加茂⇔天王寺/新大阪/大阪[通勤特急/うれシート等]」を選択し、乗車駅を新大阪、降車駅を奈良(駅名は快速停車駅のみ表示)、乗車日を2024年10月28日(月曜日)、出発する時間帯を19時00分に選択すると、いくつかの候補が表示される。


 新大阪19時43分発、全車指定席の通勤特急〈らくラクやまと〉奈良行きには、きっぷは6種類表示され、全て「〇」表示なので購入可能を表す。JR西日本はチケットレス系の特急券を選択すると、通常期および繁忙期のA特急料金を割引した価格で購入できる。


 主ななものを取り上げると、「通常のきっぷ」は新大阪―奈良間の乗車券950円、指定席特急券1730円を合計した2480円で発売。


 特急券のみ購入できる「eチケットレス特急券」(J-WESTカード会員専用の特急券で詳細は後述)は1090円、「チケットレス特急券」はA特急料金の閑散期と同額の1530円で発売。特に前者は大幅割引をアピールすることで、会員の増加や列車の誘客につなげたいのだろう。


 きっぷを決めた後、会員登録しなくても、名前、電話番号、メールアドレスを予約すれば購入できる。ネット予約に不慣れな方、ネットの操作に戸惑う場合がある方にとってはありがたい。


 「駅名を入力」では、乗車駅から降車駅までの乗車券を購入する。試しに2024年10月27日(日曜日)5時00分出発、新大阪から下関までを選択。さらに「詳細な検索方法」をクリックし、乗換駅を指定する。


 ここで困ったことに直面する。えきネットと同様、最大3つまでしか表示しないのだ。例えば、新大阪から山陽新幹線に乗り、新下関で山陽本線に乗り換える場合は簡単に買える。しかし、経路は割愛するが、最長片道きっぷなみのジグザグルートの乗車券が買えないのである。


 考えられる理由は2つある。1つ目はジグザグルートの乗車券を買う人がめったにいないこと。2つ目はみどりの窓口でも発券に時間がかかることだ。経由地も全て印字できず、係員が手書きで補筆する。


 なお、JR西日本の「Aシート」「うれしート」の指定席券には「通常の指定席券」「チケットレス指定席券」があり、通常の指定席券はe5489、みどりの券売機、全国のみどりの窓口で購入できる。チケットレス指定席券はe5489でのみ購入でき、みどりの券売機とみどりの窓口で購入できない。


●JR西日本もチケットレスに注力 特急券の種類によって割引の差も


 近年はJR西日本もチケットレスサービスに力を注いでいる。


 「J-WESTチケットレス」は関西圏の特急を中心に展開しているもので、スマートフォンの画面が指定席特急券代わりとなる。


 例えば、米原―新大阪間の通常期は2390円を要するが、チケットレスサービスを利用すると1450円で、大幅に割り引かれる。ちなみに同区間の新幹線指定席特急料金の通常期は3060円で、時間がかかる分、低廉な料金でカバーする。


 「eチケットレス特急券」はJ-WESTカード会員専用の特急券で、会員外でも購入できる「チケットレス特急券」とは、かなり差をつけている。


 例として、新大阪―和歌山間を挙げると、普通車指定席のeチケットレス特急券は1090円、チケットレス特急券は1530円となる(右記の閑散期料金と同額)。通常期は1730円なので、割り引いていることが分かる。


 新幹線接続の重責を担う快速〈マリンライナー〉にも適用され、eチケットレス特急券だと指定席210円、グリーン車470円。チケットレス特急券だと指定席330円(きっぷだと通常は530円、日によって330円)、グリーン車1000円(きっぷと同額)である。


 いずれも乗車日当日の購入も可能で、急用などでの利用が容易にできる。


 気になる点を2つ挙げよう。


 1つ目はチケットレス特急券がほとんど割り引いていないこと。JR西日本はコロナ禍による大減収で、廉価なB特急料金を全廃して、A特急料金に一本化した。さらには一部の特急で全車指定席化に踏み切った。せめてeチケットレス特急券並みとはいかずとも、B特急料金に値引きにしてもよいのではないだろうか。


 2つ目は山陽新幹線と在来線特急の乗り継ぎに関したチケットレスサービスがない。今後はえきねっとなども含め、チケットレスサービス限定で乗り継ぎ割引(2024年3月16日〔土曜日〕のダイヤ改正で全廃)を復活させるなど、より利用しやすい体制の構築を願いたい。


●えきねっと、e5489で共通している課題


 えきねっと、e5489で共通していることは2つある。1つ目はコンビニエンスストアや金融機関のATMでの支払いに対応していること。そのほとんどは現金払いのみという制約がある。


 2つ目は、みどりの窓口のように万能ではないことだ。まず、青春18きっぷやJR他社の企画乗車券を扱っていないことを挙げたい。青春18きっぷは国鉄時代から40年以上も続くベストセラー商品なのだから、より買いやすい環境を整備してほしいと思う。この他、東北・北海道新幹線の特定特急券(東北新幹線盛岡以北で適用)、立席特急券、寝台券も車なども取り扱いの対象外である。


 次に例として、特急〈ひたち〉を利用する際、東京―浪江間274.4キロの乗車券についても、東京―上野間は新幹線経由、上野―浪江間は在来線経由といった買い方もできない。東京―浪江間は東京近郊区間エリアなので、在来線経由(エリア内に限る)の乗車券は有効期間が1日限りで途中下車もできないのだ。新幹線経由にすると、途中下車ができるうえ、有効期間も3日間に増える。


 クレジットカードでも1回払いのみ対応している。JR東日本・西日本とも自社ブランドのクレジットカードを運営しており、例えば、前者のビューカードであれば、管内のみどりの窓口に限り、分割払いができる。もっとも、特定のクレジットカードだけで分割払いが認められるのもいかがなものかと思う。


 最後に、えきネット、e5489とも、列車限定、席数限定、区間限定を撤廃した方がよい。より鉄道を利用しやすく、より鉄道に親しみやすく、より鉄道を選んでいただくためにも。


(岸田法眼)



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