【F1】角田裕毅の評価は下がっていない 最終戦後レッドブルのマシンでテストの可能性も

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2024年10月25日 17:01  webスポルティーバ

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 落胆のオースティン(第19戦アメリカGP)から4日。ピエール・ガスリー(アルピーヌ)とプライベートジェットのチャーター機をシェアしてメキシコシティにやってきた角田裕毅は、すっかり立ち直ってリフレッシュしている様子だった。

 アメリカGPではなぜ後退したのか、なぜ正しい戦略が採れなかったのか──。表面的な結果に一喜一憂するのではなく、きちんと事実を見詰めることで整理し、自分たちに足りなかった部分を改善する。それが次に進むための方法だ。

「USGPはかなりレアな状況で、チームメイト(のリアム・ローソン)に限らずうしろからハードタイヤでスタートしたドライバーのリバースストラテジー(逆の戦略)がうまく機能しただけだと思っています。ああいったレアな展開を予測するのは難しかったし、あの状況で完璧なストラテジーを選択するのも難しかったと思います。チームを責めるつもりはありません」

 想定外のタイヤのデグラデーション(性能低下)の小ささゆえ、ギャンブルだったはずのハードが当たり、定石だったはずのミディアムがハズレだった。

 それと同時に、17周目という早い段階でピットインしたケビン・マグヌッセン(ハース)に釣られて、早めに入ってしまったことも敗因になった。その戦略ミスを招いたのは自身のフィードバック不足にも原因があったと、角田は理解している。

「タイヤはまだタレていなかったので、僕は焦っていませんでしたし、ピットインする前にタイヤの状況を(エンジニアに)毎ラップ、常に伝えるためのコミュニケーションはもっとうまくやれたはずだったと思います。そうすればもっといい戦略判断ができたかもしれません。これまでにも何度かそういうことが起きているので、チームとしても僕自身としても今後はこういうことがないように改善する必要があると思っています」

 角田とチームの行き違いによる戦略判断ミスはこれまでにも何度かあったことだが、徐々に改善が見られていた。しかし、後半戦の第16戦イタリアGPからレースエンジニアが交代したこともあって、オースティンではその意思疎通が十分ではなく、まだ引っ張ることができる状況がチームに伝わっていなかった。

 前を行くガスリーやマグヌッセンも同じ戦略で同じように後退し無得点に終わったこともあって、角田自身がドライバーとしてそれ以上に何かできたかと言えば、その余地はほとんどなかった可能性が高い。

【メキシコは特殊すぎるサーキット】

 むしろ、レース週末を通して好ペースを発揮し続けた角田は、ドライバーとして大きく落胆するところはなかったと気持ちを切り替えた。

「いいレースではなかったですけど、(ドライバー自身の仕事内容としては)あのレースが特別悪かったというわけではない。今までに悪いレースもたくさん経験してきているので、特に意識してふだんと違うことをして立ち直ろうとすることもないです。レース週末自体はずっとトップ10圏内にいてそんなに悪くなかった。戦略がうまくいかなかっただけなので」

 単独スピンはたしかに心象としてよくないが、ポイントを獲得できなかったのはスピンのせいではない。戦略的に苦しい状況に追い込まれたなかで、前のガスリーを抜くために周りのライバルたちよりもマージンを残さない走りをしていたからこそ、突風の影響を受けた時に立て直しきれなかった可能性が高い。

 いずれにしても、今週末のメキシコシティGPで好走を見せることができれば、移ろいやすい世間の目線は一気に角田へと向けられる。

 メキシコシティは標高2260メートルの高地であり、平地に比べて空気が20パーセントも薄い。つまりダウンフォースも薄く、マシンは通常のレースとは大きく異なる挙動を見せる。

 オースティンで9位入賞を果たしたリアム・ローソンも、2年前にFP1で走った経験はあるものの、特殊なサーキット特性を警戒している。

「ここはサーキットの特性があまりに特殊すぎるからトリッキーだと思うし、どうなるかまったくわからないよ。先週学んだことが助けになればとは思うけど、ここではマシンがほかのサーキットとまったく違った機能をするから、オースティンで見つけたセットアップの方向性はうまく機能しないと思う。

 マシンのパフォーマンスを最大限に引き出すのもかなり難しいと思うので、今週末は3回のフリー走行でビルドアップしていくことが重要になる。裕毅は新しいアップデートパーツを搭載して走り、その性能をフルに引き出すことが重要になるだろうね」

【目標はQ3に進んでポイント獲得】

 中団グループのライバルであるハースは、マシンをさらに改善して、ついにランキング6位の座をRBから奪い取った。

 しかし、RBとしてもオースティンに投入した新型フロアには手応えを掴んでおり、これからさらに改善を進めていく。ローソンの口ぶりからすると、今週末のメキシコシティGPは角田のマシンのみに新たなパーツが入る可能性もありそうだ。

「オースティンに投入したパッケージはよかった。オースティンではいろんな速度域のコーナーでもうまく機能していたので、間違いなく前進していますし自信を持てました。ただ、ここ数戦はハースが安定した速さを見せているので、ハースやウイリアムズと同等レベルに追いつくためには自分たちもハードにプッシュしなければならないこともわかっています」

 レッドブル周辺からは、最終戦アブダビGP後のテストでレッドブルに角田を乗せて、そこで実力を評価するという計画も伝わってきている。角田自身もそのことは否定せず、余程のことがなければそのチャンスが与えられることになりそうだ。

「そうですね、可能性はかなりあると思います。少なくともどんなドライビングができるのか自分を見せることができます。ようやくそのチャンスをもらえることはうれしいです。まだ実際にそうなると決まったわけではないですが、チャンスを最大限に生かしたいと思います」

 つまり、アメリカGPでの結果で角田に対するレッドブルの評価が下がったわけでもなく、ローソンには「残り5戦で安定してこのレベルのパフォーマンスを発揮すること」が求められているという。

 アメリカGPの見た目上のリザルトに影響されることなく、角田は自分自身のパフォーマンスを発揮し続ければいい。そうすれば、自ずと結果はついてきて、レッドブルで実力を試す機会もやってくる。

 昨年はダニエル・リカルドが予選4位という好走を見せたこの特殊なメキシコシティで、今年は角田が好走を見せる番だ。

「アメリカでの悔しさを晴らして、Q3に進んでポイント獲得で終わりたいと思います。全体を通して自分が楽しめるレースができたらと思っています」

 すでに角田の目は、終わった過去ではなく、それを糧にして未来へと向けられている。

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