引き出し、逆方向、ロングティー、タイミング…ロッテ・井上晴哉のプロ11年を振り返る

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2024年10月27日 08:44  ベースボールキング

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ベースボールキング

ベンチ前でポーズをとるロッテ・井上=ZOZOマリン
◆ 2014年〜2016年

 今季限りで現役を引退したロッテの井上晴哉は、“幕張のアジャ”の愛称で親しまれ、18年と19年に2年連続24本塁打を放ち、現役通算76本のアーチを描いた。

 13年ドラフト5位でロッテに入団し、1年目のオープン戦で12球団トップの打率を記録し、3月28日のソフトバンク戦では球団の新人では64年ぶりに開幕4番を託されたが、同年は36試合に出場して、打率.211、2本塁打、7打点。15年は5試合の出場にとどまり、16年はファームで「1打席で三振して、2打席目にホームランを打ったんですけど、自分の中でこうやってみようかなというのがハマった。1打席目を受けて修正することが出来たというのも、こうやってみようと一度前にやっていたことを引き出しとして、実戦で出せた。結果、サイクル安打になった」と5月20日の日本ハム二軍戦でサイクル安打を達成。

 当時の取材でよく口にしていたのが“引き出し”だ。「その時の状態によるんですけど、自分の状態をいち早く察知すること。察知することが遅れれば遅れるぼど崩れていく。遅れる前に対処は出来ると思う。ここがおかしいな、ちょっとおかしいなでも、ほったらかしにせず察知して、こういう風にやっていこうかなという練習方法であったり、打席に入るときの意識だったり、色々考えながらやっていますね」。

 「今は引き出しを出してやりながら修正することができる。一軍では代打が多いと思うので、1打席でどうにかしていかないといけない。今は段階としては、試合でフルに出ているが、最初の1打席目を代打だと思って挑むしか練習方法はない」。

 1打席で勝負する難しさを口にしていたが、同年一軍では35試合に出場して打率.232、2本塁打、16打点の成績だったが、「(1打席目は)スゴイ意識している。代打でもスタメンでもそうですけど、1打席目ってその試合の調子に繋がるし、意識している」と代打での打率は.333をマーク。一、二軍の行き来が多かったが、同年はファームで打率.342で首位打者に輝いた。

▼ 井上の入団3年目までの一軍打撃成績
14年:36試 率.211 本2 点7
15年: 5試 率.182 本0 点0
16年:35試 率.232 本2 点16

◆ レギュラー定着できなかった2017年

 16年、チームトップの24本塁打、92打点を挙げたデスパイネが退団。「デスパイネがいなくなってチーム的には痛いと思う。だが個人的にはチャンス。やらないといけない時があると思う。それが今かもしれない」と、井上に大きなチャンスが訪れた。

 1月の自主トレは日本生命の先輩・大島洋平(中日)らと行い、「体の使い方というか、体幹。コアな部分。可動範囲を狭めるとケガがしやすくなる。それを広げてケガをしにくい体作りを行っています」と体幹を鍛えた。

 17年のシーズンに向けては、「周りのことを言う前に1年間しっかり、自分の考えたことを継続することが大事。シーズン中にそれができたとしても、終わりまでしっかり続けていきたい」と16年途中からテーマに掲げていた1打席目での打撃、調子が下降したときにどういった対策をするかという引き出しを継続していく考えを示した。

 「2ケタは打ちたい。最低目標」とし、「(長打力を)期待されていることは確か。3年が終わり全然結果を残せていない。2ケタ打って存在感を示さないといけない」と目標を掲げた。開幕からチームが低迷する中で、4月9日終了時点で打率.345をマークしていたが、徐々に下降線を辿る。10月5日の楽天戦でサヨナラ適時内野安打を放ったが、「自分が何をしないといけないのか、結果ばかりを追いかけてしまった。自分のやるべきことが継続できていなかったところもあります」と、35試合に出場して、打率.230、11打点に終わった。

▼ 2017年の一軍打撃成績
17年:35試 率.230 本0 点11

◆ 飛躍の2018年

 井口資仁氏が監督に就任した18年。井上にとっても大きな飛躍を遂げる1年となった。

 この年は「ボディーターンというか、体からバットを離さない。打つ時は伸びるんですけど、極力体の近くで手は遠くみたいな感じです」とボディーターンを強く意識するようになった。

 打撃練習では「調子がいいときはそっち(逆方向)の方に打球が多くなる。その打球を追いかけるというか、意識はそっちにおいて自分の調子自体はそっちがいっているときはいい形でもあるし、そういう打球を打てるようにやっています」とセンターから逆方向への打球が増えた。

 「オープン戦は思うような形がいったり、いかなかったりというのがありますし、単純に結果だけを追いかけていないというのもあります。やりたいことを意識してできている。それがシーズンを通して続けられるようにやっていきたいです」。

 3月30日の楽天との開幕戦では14年以来の4番で迎えると、翌31日にはプロ入り初となる2打席連続本塁打と好スタートを切った。プロ5年目で初めて4月中に二軍落ちすることなく、5月以降も一軍でプレーし、5月20日には自身の応援歌も誕生したが、5月は月間打率.208、2本塁打、12打点。

 交流戦ではセ・リーグ主催試合の時にベンチスタートということもあった。「あの時にドミンゲスも調子が良くて打っていたし、正直俺じゃなくてもいいのかなと不安な気持ちもあった。最終的には自分がやらなきゃと奮い立たせて、自分を鼓舞してやってきたのは良かった」。

 復調のきっかけとなったのは、へんとう炎で登録抹消となった後、一軍再昇格を果たした6月23日の西武戦。「へんとう炎になる前も落ちて、ちょっとよくなったなと思ったときにへんとう炎になった。チームに迷惑をかけたと思いますし、その中で不安な気持ちも自分の中でありながら、やらないといけないというのがあって、そういったところで結果が出たというのが大きかった」と、今井達也から自身初となる満塁本塁打を放つと、翌24日には2打席連続本塁打を放った。7月には月間打率.400、7本塁打、23打点で自身初となる月間MVPを獲得。

 18年以前は結果を欲しがっていた時期もあったが、「試合に出させてもらっているときに、切り替えもできながら、一番切り替えができたのが大きい。打てない打てないといっても、チャンスで一本打ちたいとか、1試合1本とか。そういうもんじゃなくて、大事なところで打てるバッターになりたいと自分の中で思っていた」と精神的にも一回り大きくなった。

 最終的には133試合に出場して、打率.292、24本塁打、99打点とキャリアハイ。「今までは何をしたら良くなるかと悪い反省で考えていましたが、今年は打てた理由を深く探っていきたい」と良かった部分を徹底的に追求していく考えを持ちオフに突入した。

▼ 2018年の一軍打撃成績
18年:133試 率.292 本24 点99

◆ 2年連続24本塁打を放った2019年

 「前半は見ての通りきつかったですし、そこからなんとか盛り返せましたけど、最後のところで失速してしまった。勝てるようなバッティングができなかった」。

 オープン戦で打率.125(32−4)に終わると、シーズンが開幕してからも打率.043、1打点と状態が上がらず4月6日に二軍落ち。それでも、4月23日に再昇格を果たすと、再びレギュラーに返り咲き、打率.252、24本塁打、65打点の成績でシーズンを終えた。

 打撃三部門の成績について井上は「盛り返しましたけど、ちょっと足りないですし、本当に去年(18年)は出来過ぎというのはあった。それぐらいやらないといけないポジションだと思いますし、打たないといけないと思う。今年(19年)は満足もしていない。24本は去年と一緒とはいえ、超えたかったですね」。

 これまで井上は、1日1日で体調も違うしスイングも違ってくると話してきた。その中でハマらなかったこともあったのか——。

 「う〜ん。自分でやろうとしていることを、あまりさせてもらえなかった。去年のこともあったから、変に自分にプレッシャーをかけたのもありますし、データ、研究されたというのもあると思いますけど、そういうところを超えていかないといけないんだろうなと思いますね」。

 特に後半はインコース攻めが多かったようにも見えた。

 「最後らへんは攻められましたよね。インコースをさばけるようになるというのが、ひとつなんですけど、甘い球をちょっと打ち損じているのが多かった。そういうところになりますかね」。

 成績が下降したのは、レギュラー2年目の意識もあったのだろうかーー。

 「そういうのはない。僕らも一生懸命やっているから、相手も打たれたくないと思ってやっているし、2年目がどうとか関係ないと思いますね」。

 「チームの勝利にひとつでも貢献したい」と8月20日の楽天戦以降、本拠地・ZOZOマリンスタジアムでの全体練習前にロングティーを行い、試合前に向けて入念な準備を行ってきた。ロングティーをはじめて以降、ZOZOマリンでの打撃成績は、打率.368(57−21)、3本塁打、8打点と練習の効果がかなりあった。

 「もうちょっと自分のなかでバッティングをいろいろ変えないといけないと思うんですけどね。考え方というかいろいろ、体の使い方とか」。“変化”を求めてシーズンオフに入った。

▼ 2019年の一軍打撃成績
19年:129試 率.252 本24 点65

◆ 苦しみながらもチームトップの67打点を挙げた2020年

 「(打点は)チームに一番貢献が高いと思うので、本塁打王もそうですけど、打点王もチームにとっていいことだと思う。狙っていきたいです」。

 春季キャンプ中の取材で、20年に向けてこのように意気込んでいた。打点はチームトップの67打点(113試合・447打席)で、昨季の65打点(129試合・509打席)を上回った。その一方で、2年連続24本放った本塁打は15本と減少し、打率も.252からわずかに低い.245だった。

 「今の時期にやっておかないといけないことのひとつ」と春季キャンプの打撃練習では右方向への強い打球を徹底的に打った。実戦が始まってからは20年最初のオープン戦となった2月29日の楽天戦の第1打席に、「先頭の(福田)秀平さんが打ったので、負けてられないなという気持ちで入りました」とレフトスタンドに豪快な一発。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕が6月19日に変更となり、3月以来の実戦となった5月30日の紅白戦では「実戦が久々でホームランの感覚ってこんな感じだったかなていう感じですね」と本塁打を放ち、6月の練習試合でも初戦となった2日の日本ハムとの練習試合ではいきなり猛打賞を達成した。6月9日の中日との練習試合でも「しっかり捉えることができました」と勝ち越しのソロを放った。

 シーズンが開幕してからは開幕3戦目となった6月21日のソフトバンク戦で、20年第1号となる満塁本塁打を放つなど、6月はチームトップの打率.393、8打点をマークする好スタート。7月も打点、本塁打を積み重ねていき、28日の楽天戦では、球団の日本人選手では90年の初芝清氏以来となる1試合の3本のアーチを描き3本塁打、5打点の大暴れ。

 8月に入るとさらに調子があがった。7月31日の楽天戦から8月9日のオリックス戦にかけて9試合連続安打。4番を打っていた安田尚憲の後を打つ5番打者として、8月16日の日本ハム戦では2安打3打点、25日の楽天戦でも2安打2打点をマークするなど、8月は4本塁打、20打点、得点圏打率は.400と抜群の勝負強さを誇った。チャンスで打つだけでなく、25安打、22四球と出塁率は.451を記録した。

 9月は27日のソフトバンク戦で1試合4打点を挙げる試合もあったが、本塁打はなし。打点も7月、8月ともに20打点を記録した打点も、9月は11にとどまった。10月3日の西武との試合前練習では、何かを確認するようにティー打撃の前に黙々とスイングを繰り返す姿があった。試行錯誤しながら7日のオリックス戦で8月21日のソフトバンク戦以来となる第13号3ランを放つと、13日の楽天戦では涙のサヨナラ適時二塁打。

 復調の兆しを見せたかと思われたが、当たりが止まる。10月16日の第1打席から10月24日のオリックス戦の第2打席にかけて20打席連続無安打。10月21日の西武戦では『8番・一塁』で先発出場し、23日のオリックス戦ではスタメンを外れた。リーグ優勝、CS争いが佳境を迎えた10・11月は打率.176(91−16)、3本塁打、8打点と苦しんだのは、チームにとっても井上にとっても痛かった。

▼ 2020年の一軍打撃成績
20年:113試 率.245 本15 点67

◆ 故障と希望の光が見えた2021年と2022年

 18年から3年連続で100試合以上、2桁本塁打を達成してきたが、21年はチームが優勝争いを繰り広げる中、井上は23試合の出場にとどまり、打率.196、1本塁打、6打点。同年10月29日には八王子市内の病院で右手関節三角繊維軟骨損傷に対しての関節鏡下にて縫合術。

 リハビリでは「野手よりピッチャーの方でリハビリトレーニングをやっていたので、投手と喋る機会が多かったです。その機会じゃないと投手と喋ることがなかったですね」と、投手と一緒に汗を流し、復帰を目指した。井上は22年6月14日の西武との二軍戦で実戦復帰を果たし、同月18日のヤクルトとの二軍戦で復帰後初アーチ。7月6日に初昇格を果たした。

 復帰初戦となった同日の日本ハム戦に『5番・一塁』でスタメン出場し、安打こそ出なかったが犠飛を含む3四球、9日のオリックス戦で山本由伸からレフト前に弾き返し22年初安打をマーク。17日のソフトバンク戦では22年初本塁打を放った。24日の日本ハム戦では2本の適時打を放つなど3打点の活躍を見せたが、翌25日にPCR検査の結果、症状はなかったが新型コロナウイルス陽性判定を受け離脱。

 7月31日のオリックス戦で復帰を果たすも、スコアボードにHランプをなかなか灯すことができなかった。

 それでも、8月10日のソフトバンク戦の2−4の8回一死一塁の第4打席、ライトフライに打ち取られたが藤井皓哉のストレートを、井上らしい持ち味である逆方向に鋭い打球を放っていた。

 「打球が上がらないにしても、強い打球が打てるというのもひとつの手応えはありました。その次の日にできるか、できないかというのはわからないですが、あの打球を目指してはいますよね」。故障前と変わらず今も、逆方向への長打というのを意識している。

 手術前だったら、スタンドに放り込めている感覚はあったのだろうかーー。

 「目の感覚としてはいける球だと思うんですけど、まだ右手の使い方が変わっているところがあるので、苦労はしていますね」。

 またストレートに若干、押され気味なところも気になるところ。

 ストレートの対応に関しては「痛みとかもないですし、わりと自分の感覚としては悪くないなと思っているんですけど、どうしてもあっち(右方向)が上がらない感じなんですよね」と明かした。

 そこは実戦を重ねていくなかで、徐々に対応できるものなのだろうかーー。

 「目の方は慣れてはいるんですけど、自分の練習の感覚というものですかね」。

 練習にも変化が見られた。新型コロナウイルスが流行する前の2019年までは試合前練習前の自主練習で、グラウンドでロングティーを行うことが多かったが、今は「室内とかたまに外でやったりしますけど、ティーで重たい球を打ったり、体のバランスを整えるという感じですね」と、ティー打撃に切り替えた。

 その理由について「ロングティーをやってもいいんですけど、今の自分の体としてはそっちの方があっているというか、リハビリ期間にこういう練習を入れてみようというのはちょっとあった。今はそれを継続しようかなという感じです」と説明した。

 「怪我もあってリハビリもあって、明けてコロナもあったり自分的にはすごいガッといきたいところだったんですけど、いけないところもあったりした。調子が良かったり悪かったりの波がある。手術が明けてからいろいろ一軍で通じるところ、通じないところ、手術する前と後で感覚も違うので、“まだちょっとこういう風にやったほうがいいかな”と試行錯誤しながらやっていますね」。

 22年8月までは試行錯誤していたが、好転したのが9月。「おかげさまで怪我の功名という形で自分のバッティングを見つめ直すことができたし、どうやって打てたのかなという研究を進めることもできた。新たに左手の使い方、脇の使い方、空間の使い方もそうだし、そこに対してもうちょっと考えながら動かせるようになってきたかなと思います」。月間打率.302(86−26)、4本塁打、19打点、得点圏打率は驚異の.550と抜群の勝負強さを誇った。

▼ 2021年と2022の一軍打撃成績
21年:23試 率.196 本1 点6
21年:60試 率.246 本7 点34

◆ タイミングに苦労した2023年

 “怪我の功名”で新しい感覚を手にし、左手の感覚はうまく使えているが、23年は“タイミング”に苦労した。

 同年5月23日に一軍登録抹消されてから、ファームの試合では左足の使い方をいつもと変えていたり、色々と試しながら打っているように見えた。

 「左足もそうですだけど、右足もちょっとあまり使えていなかった時もあったので、意識的に使えるようになり、やっと戻ってきたという感じですね」。

 下半身の使い方に関しては「色々試しながらでしたけど、前の形が合っているのかなと思ったり、使い方というのはね。進むよりは1回戻ってもいいのかなという時に思い出したくらい」と教えてくれた。

 6月は井上らしい“右中間への長打”が多かった。6月7日の楽天二軍戦では、瀧中瞭太から外角134キロのカーブをライト方向に本塁打を放てば、6月17日のソフトバンク二軍戦では奥村政稔の外角の変化球を逆らわずに右中間を破る適時二塁打。さらに、6月24日の楽天戦では塩見貴洋の外角シュートを右中間スタンドに一発。井上らしさが戻ってきた。

 ファームでは「内田さんから野球は90度使っているけど、練習はセンター、左中間、右中間の45度を極力使うように」と、内田順三臨時打撃コーチ(当時)から助言をもらった。6月26日の楽天二軍戦の試合前練習では、マシン、左の打撃投手の時にひたすら右中間方向に打っていたのもそういったことが関係していたようだ。その日は右中間を中心に打っていたが、一軍の試合前練習では6月30日の楽天戦の試合前練習では広角に打つなど、広角に打っている日もあった。7月6日の西武戦の試合前練習では「バランスが中間だから」と22年まで在籍していたマーティンが使っていた黒茶のバットで打っていた。

 夏場以降は左足の使い方を小さくするなど、試行錯誤。結局23年は、「タイミングなんですよね。クイックが速いピッチャーだったり、球の速いピッチャーというのは一軍にバンバンいるから二軍で感覚よく打っていても、タイミングの部分が大きく遅れるのが目立っていたので、そこかなと思います」と、32試合に出場して、打率.179、1本塁打、8打点だった。

▼ 2023の一軍打撃成績
23年:32試 率.179 本1 点8

◆ 現役引退となった2024年

 「打つしかないと思われているだろうし、自分自身も自覚している。そこしかない」。

 24年の春季キャンプで、24年は打って貢献すると宣言した。「やっぱりタイミングが遅れるのが怖い。ちょっと小さめに取れる。すぐに右足に溜められるスタンスといったら、ちょっと小さくなりました。若い時は何も考えなくても良かったけど、自然とワンテンポ、あ〜なんか遅れたなとかというのが目立ってきた」。

 23年夏以降は左足を小さくしてタイミングを取っていたが、「それを通常にしようかなと。小さくしてゆっくり取れるようにしようかなと」とのこと。

 春季キャンプ中には、「変化球とか色々混ざっているのをみていないから、どれくらい対応できるかわからないけど、タイミングを遅れなければなんとか対応できると思うし、真っ直ぐに対してのタイミングが取れるかな」と話していた。

 ZOZOマリンスタジアムでのオープン戦に合流するまで、石垣島春季キャンプ、ロッテ浦和に戻ってからは「合流する日をだいたい考えて、あとは浦和に帰っての試合がある、実戦でどうするかを考えながらやっていました」。

 一軍に合流してから早速結果を残した。タイミングについても「早めに始動してというのがうまくいっていますし、タイミングは測れていると思います」と手応え。

 開幕を近づくにあたって、投手陣のレベルも上がってくる。そこにどう対応していくかが課題になってくる。「そうですね、今やっていることをどれくらい対応できるのか、試合で対応していって応用していくみたいな感じですね」。

 結果を求めながら、取り組んでいることの精度を上げなければならない。「難しいですけど、そこは打つしかないので、はい」。

 井上が守る一塁はライバルの多い激戦区。「入った時から外国人とやってきたし、共通だと思うし、どのみち外人とやり合って相手が衰えるわけじゃないけど、それに負けないくらい、一緒のレベルでもいいと思う。負けたという感じもしていない」とキッパリ。

 開幕に向け「本当に打つだけだと思うので、若い子達に負けないようにやっていきます」と意気込んでいたが、今季は一軍出場することなく、ユニホームを脱ぐことになった。

 井上は引退の際、球団を通じて「プロで11年間、もうちょっと出来たかなあと思う部分もあります。特に99打点をあげた18年。あと1打点で100打点だっただけに悔しい気持ちはありましたが、その辺も自分らしいかなあと今は思います。色々な経験をさせていただきましたが、すべてロッテじゃないと経験できなかったことばかりだと思います。こういう経験をさせていただいた監督、コーチの皆様、いつも支えてくれた方々に感謝の気持ちで一杯です。そしてなによりもいつもボクの背中を押してくれたファンの皆様、ありがとうございました。皆様との素敵な思い出を胸に、アジャ井上は気持ちよく引退します。ボクはロッテが大好きです。ごっちゃし!!」とコメントした。

 試行錯誤しながら戦い抜いた11年間のプロ生活。試合前の打撃練習、そしてZOZOマリンスタジアムで何度も見せてきた“逆方向”への本塁打をこれから見られなくなるのは寂しくなる。

▼ 井上晴哉の通算打撃成績
通算:601試 率.250 本76 点313

取材・文=岩下雄太

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