スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み

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2024年10月28日 06:00  ログミー

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スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に…

柴田雄平氏(以下、柴田):3つ目のポイントは採用についてです。2022年当時、社員数が半年で倍増するようなスピード感での採用を行っていました。しかし、当時はスキルを重視しすぎた結果、文化とのミスマッチが発生し、早期離職が多く見られました。

4年前には一度、社長の僕と今は役員になった社員の2人だけという状況に陥り、業務委託メンバー10人ほどで業務を回していた時期もありました。採用フローや基準が明確でなかったことや、企業文化が十分に言語化されていなかったことが原因で、採用する人物像が曖昧だったのです。そのため、勢いだけで採用を進めてしまい、結果的に失敗に終わることが多くありました。

この反省を踏まえ、現在では採用フローやスタンス、求める人物像をしっかり定義しています。例えば、どんな条件の応募者でも最低2回の面談を行い、1次面談には必ず2人以上のメンバーが参加します。

そして、特に重要なのが、インターン期間を必ず設けることです。最低でも3ヶ月のインターン期間を設け、その間、僕自身が月に1回面談を行い、適性を確認するかたちにしています。これにより、採用と文化のミスマッチを防ぎ、組織にフィットする人材を確保しています。

僕たちの採用プロセスでは、1次面接や2次面接は非常にスピーディに行っていますが、実際に採用決定に進む人は、半年ほど一緒に働いてみて、価値観や企業文化、やりたいことがある程度一致している状態でないと難しいということを実感しています。

僕らの仕事は、超ハードワークなんです。単に労働時間が長いというわけではなく、頭をかなり使う必要があるし、資料の作成も多いです。また、マーケティングはお客さまにとって売上の基盤を支える重要な事業であるため、厳しい要求が来ることもあります。

そういった環境に耐えるマインドセットがないと、厳しい場面も少なくありません。そのため、スキルよりもマインドが整っている人を優先して採用するようにしています。

マインドとスキルのバランスの重要性

柴田:みなさんの会社でもあるかもしれませんが、マインドとスキルのバランスを取ることが重要です。マインドが高くてスキルも高い人は理想的ですが、そういった人を見つけるのは難しいです。スキルがSランクでマインドが低い人と、スキルがあまりなくてもマインドが高い人、どちらを採用するかという選択肢もあります。

僕たちは、基本的にマインドが高い人を採用し、スキルが高ければラッキーという考え方を持っています。

現在の方針としては、マインドがSランクでスキルがCランクの人は採用しませんが、スキルがBランク程度あれば採用するというかたちにしています。2024年からは、これをさらに明確にし、中途採用の場合は、ある程度のスキルがあれば月額40万円スタートという給与体系にすることを決めました。

これにより、スキルとマインドのバランスを重視しながら、長期的に会社に貢献できる人材を確保できるようにしています。なので、賞与を含めた場合、最低でも年収500〜600万円スタートくらいにしようという意思決定を今期行いました。

僕たちは採用時に使う質問リストを決めており、コンピテンシーに基づいて確認する内容や聞きたい質問を定義しています。

具体的には、「強み」に対して確認すべきポイントを整理し、それに基づいて質問を用意し、採用面接でどのように聞いていくかを事前に決めています。

今「インターン期間で卒業される方の割合を」というご質問をいただきました。インターン期間に関しては、「卒業」という言葉が辞める意味か、それともクリアする意味かによりますが、辞める人に関して言えば、インターン期間中に厳しく評価しているため、7割ほどが残り、辞める人は約3割といった割合です。

インターンは年間で約3,000人の応募があります。その中で実際に通る人は少数に絞られています。

「いい人とだけ働きたい」というコメントは、僕もまったく同感です。採用プロセスでは、スキルだけでなく、人柄や価値観の合致も非常に重要だと考えており、それが確認のポイントになります。スキルがあるかどうか以上に、「いい人かどうか」が大事だというのは、僕らも常に意識している部分です。

2023年の実績で言うと、約10名の採用につながりました。今後も採用フローやコンピテンシーの見直しは継続的に行っていく必要があると考えています。

会社全体の一体感が低下した原因と対策

柴田:僕たちは採用でかなりの失敗を経験してきたので、慎重に進めています。特に、新しく採用した人材が続かないという状況は、会社にとって大きな損失になります。採用して育成したのに、早期離職してしまうと、売上も利益も生み出されないまま終わってしまいますからね。

売上や利益をいつから生み出してくれるかをしっかり見極めることが重要で、組織が30人を超えると、売上が増えて順調に見えても、半年で9人が退職するという事態も発生します。この「30人の壁」は多くの企業が経験する問題ですが、僕たちも同様にこの課題に直面しました。

組織の人数が30人、50人、100人と増えていくにつれ、組織構造が複雑化し、特に30人を超えたあたりからコミュニケーションの減少が顕著になりました。異なる価値観を持つ従業員が増える中で、「この人はよく働いている」「この人はそうでもない」といった評価の不公平感が生じやすくなります。特に、残業する人としない人の差が目立つようになりました。

そのため、全従業員を公平に評価することが難しくなり、事業部ごとのマニュアル整備が急務となりました。評価の基準を統一し、全員が平等に評価される仕組みを整えることで、組織としての安定性を確保しようと努めています。このような取り組みが、30人の壁を乗り越えるために不可欠だと感じています。

現在では「50人の壁」に直面しており、固定費の増加や会社全体の一体感の低下が問題になっています。売上が40億円規模に達すると、組織の一体感が失われる傾向がありました。これを解消するために、僕は1社で40億円を目指すのではなく、10億円の会社を10個作るという戦略を考えています。

一体感の低下の原因として大きかったのは、「関係の質」の悪化です。

具体的には、コミュニケーションの減少や従業員の公平な評価ができなかったこと、マニュアルが整備されていなかったこと、そして、入社後の育成体制が不十分であったことが挙げられます。

特にスキルが低い人材を採用してしまった場合、オンボーディングのプロセスが整っていなかったため、スキル不足が顕著になり、その結果、組織全体に悪影響が出てしまったのです。

「関係の質」が上がると売上も上がる

柴田:「関係の質」とは、よく「質の循環」と呼ばれるものに関連しています。これには「グッドなサイクル」と「バッドなサイクル」があり、バッドなサイクルに入ってしまうと組織が悪い方向に進んでしまいます。

具体的には、結果の質ばかりを追い求めると、管理者や経営層が「誰が9月の売上達成を妨げたのか」といったかたちで、誰かの責任にするような思考に陥ります。これにより、関係の質が悪化し、社員同士の信頼が損なわれます。関係が悪化すると、自然と社員のやる気も低下し、「もう辞めたいな」と感じるようになります。

こうした悪循環を改善するためには、結果ではなく「関係の質」から始めることが重要だと考えています。関係の質を向上させることで、行動や結果が自然と良い方向に進んでいく、グッドなサイクルを生み出せるようにしていきたいと思っています。

まず、売上に対するフォーカスはいったん置いておき、「今、僕たちは本当にパフォーマンスが出ているのか?」「クライアントの満足度はどうなのか?」「クライアントとの関係は良好なのか?」といったかたちで、深く考えるようにしています。そうすると、「このクライアントのために何ができるか?」とポジティブに考え始めるんです。

ポジティブな思考で捉えることで、新しいアイデアが生まれ、人を非難するような行動が減り、「その会社のためにどうポジティブな提案ができるか」を考えるようになります。これにより、行動が変わり、最終的には売上も上がってくるという流れです。

これは人間関係においても大事な考え方だと思っています。ちょっとしたコミュニケーションでも、「今日、この人のために何かしよう」と思ったり、「自分に余裕を持つために少し考えてみよう」とすることで、結果が変わり、それが売上に反映されることが多々あります。

下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み

柴田:関係の質を向上させるために、僕たちが取り組んだのが、「3つの『約束』を作ること」や「全社会」という全社ミーティングを実施すること、そして「7つの『らしさ』を評価すること」や「合宿やワークショップを開催すること」などです。

「3つの約束」とは、冒頭で述べたように「この3つの文化を大事にしよう」という方針であり、「7つのらしさ」は僕たちが企業文化として大切にしている要素です。これらを評価制度に組み込み、社員がその「らしさ」に基づいて行動しているかどうかを確認しています。

数値化が難しい部分もあるため、自己評価と他己評価を取り入れ、これを「全社会」で発表するかたちにしています。こうして、自分たちがどのように行動しているかを可視化し、組織全体で共有できる仕組みを作っています。

うちの場合、全社会は非常に自由なスタイルで進行しています。例えば、ワークショップを地方で開催したり、全員で自分たちのやりたいことや3年後の目標を共有するような場を設けています。全員が共有認識を持つための活動を大事にしています。

また、コミュニケーションスタイルも以前からあったものを変えています。僕たちは基本的に名前かニックネームで呼び合い、良いところを見つけたらSlackでシェアする文化があります。さらに、全員のカレンダーには誕生日が登録されていて、誰の誕生日かをみんなで共有できるようにしています。

お客さまと案件を達成したときや、ちょっとしたことを社内で称賛する文化もあり、ドキュメント文化も大切にしています。すべての業務はGoogle DriveやNotionに集約されており、広告運用のチームに関しても、FacebookやGoogle、YouTube、LINEといったプラットフォームの最新情報やアップデートがすべて確認できるようになっています。

それ以外にも、クリスマスにはみんなで遊んだり、クライアントさんへのお中元や、社員の家族にお中元とお歳暮を送る文化もあります。会社から毎年送ることで、社員の家族とのつながりも大切にしています。

さらに、オフィスで交流会を開催したり、Slackでやたらとスタンプを作ったり、全国にいるお客さまからのお土産がオフィスに届くことも多く、これもまた社内の一体感を醸成する要素になっています。

結果として、下半期は退職者がまったくいなかったのですが、やはり「関係の質」については細かく言っています。

特にコミュニケーションの重要性については、「常にコミュニケーションを良くするために、相手のことを考えよう」「誰かが仕事をやりやすくするよう心掛けよう」という点を強調しています。

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