カーリング女子日本代表・上野美優が振り返る「楽しかった」日本選手権と「つらかった」世界選手権

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2024年10月28日 07:31  webスポルティーバ

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SC軽井沢クラブ
上野美優インタビュー(前編)

2023−2024シーズンのカーリング日本選手権(1月27日〜2月4日/北海道・札幌)で初優勝を飾ったSC軽井沢クラブ。その後、女子日本代表として世界選手権(3月16日〜24日/カナダ・シドニー)に臨んだ。そして現在は、2024−2025シーズンの世界選手権への日本の出場権獲得を目指して、カナダ・ラクームで開催されているパンコンチネンタル選手権(10月27日〜11月2日)に挑んでいる。日本の2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への出場にも関わる重要な一戦を前にして、同チームのスキップを務める上野美優に話を聞いた――。

――2023−2024シーズン、SC軽井沢クラブが初の日本選手権制覇。上野美優選手はそれに加えて、ミックスダブルス選手権でも山口剛史選手と組んで初出場初優勝と、充実のシーズンでした。まずはチームの日本選手権優勝について、振り返っていただけますか。

「大会前からチームの調子は比較的よかったのですが、強いチームも多いですし、『絶対に優勝できる!』という自信はありませんでした。大会に入る前に、あまり結果を意識していなかったので、それがよかったのかもしれません」

――予選1次リーグでは中部電力、予選2次リーグでは北海道銀行から黒星を喫しました。

「どちらの試合も自分たちがやりたい展開ではなく、相手にペースを握られて悔しい戦いとなってしまって......。『どうにか(自分たちのペースで試合を)したい』という気持ちがみんなにあって、大会中にチームでしっかり話し合えるきっかけとなりました」

――その成果が準決勝の中部電力戦、決勝の北海道銀行戦に生かされたのでしょうか。どちらの試合もラストロックまでもつれ込む接戦を制しています。

「負けてしまった試合のなかでも、今後につながるミスというか、チームが伸びるきっかけとなる部分もあったので、(決勝トーナメントでは)そこを意識して『ラウンドロビン(予選リーグ)とは違う戦い方をしよう』とチームで確認しました。あとは何より、『とにかく笑顔で楽しもう!』と言い合って挑みました。大会中に(課題を)修正、(チームが)成長できた実感があります」

――いずれの試合も厳しいラストロックが残っていましたが、上野選手が正確なドローを決めて勝ちきった、というのが印象的でした。ご自身の調子はよかったのでしょうか。

「悪くはなかったと思います。どの試合も、自分が(ドローを)投げる道は残っていましたし、スイーパーが(狙った場所に)持っていってくれるという安心感があったので、それを信じて投げるだけでした。接戦が続いて、実際に決勝の最後(の1投)まで優勝できるかわかりませんでしたが、目の前のショットに集中して、終わってみたら優勝できていた、という感じです」

――日本選手権のあと、日本代表として挑んだ世界選手権の話も聞かせてください。結果は3勝9敗でラウンドロビン敗退(11位)という、悔しい成績に終わりました。

「日本選手権が"楽しい大会"だったとすると、世界選手権は"つらい大会"でした。初戦のニュージーランド戦はなんとか勝てましたが、その後のトルコ、デンマーク、韓国との対戦では、世界ランキング的には『勝たなければいけない』という意識を持ちすぎてしまった気がします。そこで負けが続いてしまって、日本選手権の時のように波に乗ることができませんでした」

――そうしたことを含めて、初めて挑戦した世界の大舞台での結果や課題などについて、どう受け止めましたか。

「アリーナアイスへの対応だったり、特に観客がたくさん入るカナダ開催の世界大会でのアイスの変化といった部分でのアイスリーディングの遅れ、という点で(他国との)差が出てしまったと感じます。"たられば"になってしまうのですが、もう1投、2投決まっていれば、勝ちも増えていたかもしれないのですが......。ただその分、"その1投"の難しさを知った大会でもありました。それも含めて、すべて"経験"なのかもしれません」

――日本選手権ではあんなに楽しそうに戦っていたチームから笑顔も減ってしまった、そんな印象も受けました。

「自分でも『顔に出ちゃってるな』と感じていました。(大会の)序盤はなんとか楽しくできていたのですが、徐々に余裕がなくなってしまい、それをコントロールすることもできませんでした。でもそうした状況にあっても、みんなと『今までの自分たちではやれなかったことをしてみよう』といった話もできました。もちろん、チームとして励まし合ったりもしましたけど、負けているとお互いに言いにくいことも出てきます。そんななか、特に(上野)結生なんかははっきりと思っていることを言ってくれるので、チームとしてちゃんと意見を出し合えて、もがくことができた世界選手権でもありました」

――チームメイトして、妹の結生選手のプレーはどのように映っていますか。

「世界選手権でも大会序盤から一番崩れなかったのが結生でした。チームが(ショットで)苦戦しているなかで、最も安定感がありましたし、セカンドに入った試合でも安定したまま乗りきっていました」

――彼女のその強さをどう分析していますか。

「私の予想でしかないんですけど、世界ジュニアで3度もファイナリストになっている経験が生かされているのかもしれません。(チームとして)初の世界選手権でしたが、緊張もしていなさそうでしたし、頼もしかったです」

――姉の目から見て、結生選手のよさはどんなところでしょうか。ご自身にない部分みたいなものもありましたら、教えてください。

「とにかく元気で負けず嫌いですね。自分のことでも、チームのことでも、気になったら絶対にそのままにはしない人です。考えていないように見える時もあるのですが、そういう時でも自分の意見がしっかりあって、(自分より)結生のほうがふたつくらい先のことを考えているな、と思う時もあります」

――ご両親が会場で応援していらっしゃる姿もよく拝見します。仲のいいご家族で、日本選手権優勝の際にはご家族でお祝いなどしたのでしょうか。

「ミックスダブルス選手権のあとに、両親がケーキを用意してくれていたんですが、結生は、その日は両親とは別で動いていたようで、結生もケーキを買ってきてくれて。たくさんのケーキでお祝いしてくれました。両親が家のなかに『優勝おめでとう』とささやかな貼り紙も飾ってくれました」

(つづく)

上野美優(うえの・みゆ)
2001年3月12日生まれ。長野県軽井沢町出身。SC軽井沢クラブ所属。9歳でカーリングを始め、日本女子大在学時の2022年に出場した世界ジュニア選手権で、日本カーリング界初となる金メダルを獲得。次世代のエースとして注目を集める。2024年には日本選手権、ミックスダブルス選手権を制覇。女子選手としては初めて同一シーズンでの二冠を達成した。シチズン時計マニュファクチャリング株式会社勤務。趣味はカメラ。

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