“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ

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2024年10月28日 11:00  ログミー

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タモリさんが「人間の達人」と言われるわけ

高橋浩一氏:今日のテーマは「自然体」についてです。特にこのVoicyは、リーダー、経営者、マネージャーの方に聞いていただいていることも多いんですけれども。

人に影響を与える側になると、例えば「役職者だからこれをしなきゃいけない」「リーダーだからこれであらねばならない」「経営者たる者○○しなければならない」と、もちろんこういうあるべき論もあるんですが、今日は自然体という角度からお話をしてみたいなと思います。

最近読んだ本の中で『なぜ、この芸人は売れ続けるのか?』という本があります。これはいろいろな芸人さんの名前が出てくるんですが、中西正男さんという芸能記者の方が、今まで出会った芸人さんたちをピックアップしながらエピソードを紹介している本なんです。

出てくる方が大物で、例えばダウンタウン、タモリ、明石家さんま。そういう人たちを始めとして、全部で25人出てくるんですね。誰もが知る国民的タレントのタモリさんは「人間の達人」とありますが、こんなエピソードがあったということで本の中から引用したいと思います。

まず、ネプチューンの堀内健さん。ホリケンさんがちょっと行き詰っていた時に試行錯誤していたと。「『タモリのボキャブラ天国』に出て、本当に全部変わりましたからね」ということを話されていたんですが、人生の恩人として掲げていらしたのがタモリさんでした。

「最初から『ボキャブラ』でうまくいっていたわけではないんです。最初は変なことをやって、スタッフさんに『よくわからない』と、言われていたんですよね」と。

ただ、その時に、「ある週の収録の時に『それは君がもっと知られる存在になってからやったほうがいい。それまでは普通にしておいたほうがいい』なんてことも言われました」と。それで、堀内健さんがいろいろと考え込んでいた時にスタジオで、1人で座っていた時にタモリさんが笑いながら近寄ってきてくれたと。

「重たい雰囲気で1人で沈んでいたところに、笑って近づいて来てくれただけで、なんかその笑顔が自分をすごく救ってくれた。それから翌週からはおもいっきりやりたいことをやれました」ということが書かれています。

タモリさんから学ぶ「力の抜けた自然体」の姿

そして、ふかわりょうさんも本を書くにあたって、タモリさんとのエピソードを書かれているんです。「タモリさんは僕の距離で見てきた中でも、どこにも力が入っていない。ご自身では力を抜くという意識すらないんでしょうけど、お蕎麦屋さんに向かう時も生放送に向かう時も、どこに行くにも力が入っていない」と。

「その様がまるで僕には浮力だけで動いているように見えたんです」ということです。ふかわりょうさんもタモリさんについて、「力の抜けた自然体」という(印象があるという)ことです。

(タモリさんのことを)本に書いて、タモリさんから留守電で折り返しが掛かってきた時に、「本に書いてくれてありがとう」みたいな一言があって、「その一言を本当にサラッと言ってもらったことに、すごく救われました」ということを書かれています。

そしてキングコングの西野亮廣さんも、タモリさんに飲みに行こうかと誘われて、「絵を描いたらどう? 本を書いたらどう?」という一言を言われて、翌日から西野亮廣さんは本を書き始められました。今では誰もが知る絵本作家となっていらっしゃいますが、そのきっかけもタモリさんとの会話だった。

それぞれの共通点というのが、何と言うか本当にサラッとという感じで、でも深い。この塩梅が絶妙であるということなんですね。例えばリーダー、経営者、マネージャーの方にとっても、すごく含蓄の深いところじゃないかなと思います。

タモリさんって、いろんなタレントが人生の恩人として掲げる方なんだけど、ものすごく金言となるアドバイスをもらったとか、すごくドラマチックなワンシーンがあったというよりかは、むしろ逆で。なんとなく日常の1コマでサラリと言われた一言が、しっかり残っているということだと思うんですよね。

スポーツのように、仕事も力を入れるほどうまくいかない

この「自然体」ということについて、自分なりに感じたことを次にお話ししていきたいと思っています。自然体って言葉で言うのは簡単だけど、なかなか難しいですよね。

僕自身も一番最初に誰かに影響を与える立場になった時で言うと、25歳の時に起業しました。会社組織を作って組織をどんどん育てていこうとした時に、最初の会社では2年半しか働いていませんでしたので、僕が新卒で入った会社では、自分が上司として、何かの役職者として人に接するということをやったことがなかったんですね。

それが自分で会社を作って組織が大きくなってくると、当然ながらマネジメントをする立場になるんですが、当時はとにかくまだ若かったわけです。27歳とかで自分のメンバーが何人かできて、30歳になる前には何十人という人を束ねないといけない。最初はとにかく肩に力が入っていたというか。

僕は高校、大学とテニスをやっていたんですが、とにかくテニスの打ち方も力が入っていて、しょっちゅう足がつっていて、「力の入れすぎだ」と言われていたんです。

スポーツだけじゃなくて、仕事でもとにかく力んでやっていたわけです。やっぱり若かったというのもあるんですが、「舐められないようにしなきゃ」みたいなのもありましたし、メンバーには自分の望む姿になってもらわないといけないとか、指導をしないといけないとか。

今思うと、「○○しなきゃいけない」という思いにものすごく支配されていたというか、振り返るとそんな感じがするわけです。

当然ながら、そんなに肩に力が入った状態でテニスをするとうまくいかなくて、力めば力むほどうまくいかない。スポーツも似ていると思うんですよね。ゴルフとかテニスでも、力が入るとボールがうまく飛ばない。

でも、力みが抜けるとスポーンとボールがうまく飛ぶことがあると思うんですが、仕事もやっぱり似ていて、力を入れるほどうまくいかないということがありました。

「みんなの力を借りて助けてもらう」のもリーダーの役割

僕自身はマネジメントがうまくいかないことばかりで、ある年に大失敗をして、ある時は組織を前の年に比べて2倍の規模にしたんだけれども、業績はぜんぜん上がらなかったです。当然ながら赤字になってしまうんです。やることをやったんだけれども、全部うまくいかなかった。

そういうことを経験した時に、やむなくというか、もうやり尽くしたから自分が力を入れようにも入れどころがなかったんですよね。その時に、当時のメンバーの人たちがいろいろと助けてくれて。

このエピソードは、僕が前に『無敗営業 チーム戦略』という赤い表紙の本の冒頭に書いたんですが、上司として、マネージャーとして、経営者として、「何かをしてあげないといけない」みたいな意識がすごく強かったんです。

実は、そんなに「してあげなきゃいけない」とか、わざわざおこがましいことを思わずとも、みんなの力を借りて助けてもらうのがリーダーとしての大事な役割の1つである。

もちろん何かを指し示すとか、方針をちゃんと伝えたり、リードすることももちろん大事は大事なんですけれども。万事導かなきゃいけないと考えるのではなく、むしろただ自然体でいるだけで、みんなに力を貸してもらえる。それでうまくいくこともあるんだなと、ふと楽になった。そういう思いがありました。

ということで、やっぱり自然体が大事だなとあらためて思うんです。ただ、その裏側には、僕自身力が入り過ぎてしまった失敗体験があります。

それでさっきのタモリさんのエピソードを見つけて、やっぱり肩に力の入っていない状態は、結果として人に影響を与えることになるんだなと、1周回ってそんなことを思っている次第です。

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