【F1】角田裕毅「わずか22秒でリタイア」に責任はない ただ「不運」で片づけることもできない

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2024年10月30日 07:20  webスポルティーバ

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 11番グリッドから好発進を決めた角田裕毅(RB)は、前を行くニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)、アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)のスリップストリームを順に使い、彼らよりも速度を稼いでアウト側に並びかけていった。

 そしてターン1に向けたブレーキングで前に出た瞬間、左リアに衝撃を感じたのと同時にマシンが右を向き、スピン状態のままウォールへと叩きつけられた。

 この間、わずか15秒。角田のマシンはそのまま為す術(すべ)なくコースオフしていき、7秒後にはランオフエリアの終点にあるバリアにうしろから刺さって止まった。

 こうして角田裕毅のメキシコシティGPは、わずか22秒で終わってしまった。

「ターン1の入口でスペースがありませんでした。アレックス(・アルボン)もスペースがなかったですし、誰も責めることはできないと思います。完全にレーシングインシデントだと思います。もしターン1をクリアできていれば、かなりの台数をオーバーテイクできていたはずですけど、うまくいきませんでした」

 角田が悪いわけでも、アルボンが悪いわけでもなく、連鎖反応の発端となったイン側のピエール・ガスリー(アルピーヌ)が悪いわけでもない。高速からの急減速で複数のマシンが密集した、避けようのないインシデントだった。

 それは角田だけでなく、アルボンをはじめとしたほかのドライバーたち、RBやウイリアムズの首脳陣など、レースを知る者たち全員の共通見解だった。

 しかし、これを不運で片づけることはできない。

 ハース勢はまたしても中団トップの7位・9位でダブル入賞を果たし、一方のRBはリアム・ローソンのハードタイヤスタートも不発でノーポイント。すでに10点もの差がついてしまった。

 そもそも、このような混雑した場所からスタートしていなければ、混乱に巻き込まれるリスクは圧倒的に少なかったはずだ。

 金曜フリー走行で2回ともに3位、予選直前のFP3でも7位。メキシコシティでの角田には、予選で中団トップの座を掴み獲るだけの速さがあったはずだった。

 しかし、予選Q2でクラッシュを喫し、自身は11位、そしてローソンのアタックも赤旗でフイにして、Q3進出を阻む結果になってしまった。

【角田の「悪いクセ」が出てしまった】

 この週末、最大の失策はそこにあった。

 中団上位を争う7台が0.1〜0.2秒差にひしめく大接戦で、プッシュしなければ簡単にQ3進出を逃してしまう難しいシチュエーションだったことは確かだ。もちろんそのなかには、土曜になってタイムを上げてきたチームメイトのローソンもいた。

 しかし、そのなかで角田は余裕を持ってQ3に行けたはずだったのに、ターン12でフロントタイヤをロックアップさせて挙動を乱し、クラッシュしてしまった。

「セクター2では自己ベストを更新できていたので、あんまりプッシュしているわけでもありませんでしたし、今週末、あそこでロックアップしたことは一度もなかったので、ちょっと変な感じで驚きました」

 角田はそう訝(いぶか)しんだが、ターン12入口の縁石は路面にアンチスリップ塗料でペイントしただけのものであり、それが原因でロックアップしたわけではない。それよりも、ターン12手前にある50メートルの再舗装区間から旧舗装に戻るバンプを越える瞬間にブレーキングをしたことで、ロックアップした可能性が高い。

 ロックアップを避けるために、ターン12に向けてはバンプ手前で早めにブレーキングをするよう予選でも決勝でもケアしていた。しかし角田自身が言うように、プッシュしていなかったにもかかわらずそこでブレーキングしてしまったのだとしたら、目の前のアタックラップや一つひとつのコーナーに対する意識が知らず知らずのうちに疎(おろそ)かになっていたのだろう。

 デビュー直後の2021年イモラ(第2戦エミリア・ロマーニャGP)の予選にせよ、今年のハンガロリンク(第13戦ハンガリーGP)の予選にせよ、好結果が望める状況下で無意識のうちにプッシュしすぎてしまうのは、角田の悪いクセだ。

 好結果を掴み獲るために意識してマシンの限界ギリギリを攻めた結果なら、まだ仕方ないと言える。しかし、そうではない。

 チーム全体としても、こうしたバンプの把握とそれに対するドライビング管理の徹底ができていなかったのだとしたら、ケアが足りなかったと言える。

【予選のクラッシュが悔やまれる】

 バリアに突っ込んだ角田のマシンは大きなダメージを負ったが、予選後に許されるわずかな作業時間内にメカニックたちが確認作業を行ない、翌朝決勝の5時間前から解禁されるパーツ交換作業時間のなかでマシンの修復を成し遂げた。

 予選後のパルクフェルメ(車両保管)下では、時間外作業や仕様変更を行なえばピットレーンスタートとなってしまう。そのため、チームは壊れたパーツの交換とひとつしかない新型フロアの補修作業を行ない、慌ただしい作業時間内で懸命にマシンを修復し、なんとか角田のマシンを11番グリッドへと送り出したのだ。

 角田の担当レースエンジニア、エルネスト・デジデリオはこう語る。

「裕毅のマシンに搭載されていた新型フロアは、メキシコシティにはひとつしか持ち込んでいなかった。だけど、それを直すことができたんだ。まるでミラクルだったよ。

 このチームにいるコンポジットのエキスパート3人が壊れたフロアをひと目見て、『これくらいお茶の子さいさいだよ」って言ったんだ。私の目からすれば大きく壊れているようにしか見えなかったけど、パーフェクトに修復されていた。そのおかげでピットレーンスタートを免れた」

 そうやってグリッドへと向かうレコノサンスラップで、角田は「マシンのフィーリングは昨日とまったく同じだよ、みんな、ありがとう」と言って謝意を伝えた。

 それだけに、わずか22秒でレースを終えなければならなかったのはつらかった。角田の責任ではないとみんなが理解してはいても、余計に予選のクラッシュが悔やまれる。

 ただの不運で片づけるのではなく、完璧なドライバーとして結果を掴み獲るために自分に何ができたのか。角田はそれをしっかりと見つめ直さなければならない。

 その試練を乗り越えた先に、何が待っているのか。勝負はまだ終わってはいない。

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