同性カップルに対して、「夫(未届)」「妻(未届)」という事実婚の夫婦と同じ続柄を記した住民票を交付する自治体が増えている。これに対し、所管官庁の総務省は「実務上の問題がある」として慎重姿勢を見せている。
長崎県大村市は5月、男性カップルに「夫(未届)」と記した住民票を交付した。同市の担当者は、互いをパートナーと宣誓することで行政手続きなどが受けやすくなる「パートナーシップ宣誓制度」の開始が背景にあったと説明。住民票に関する事務には裁量があり、「市としてできる対応を考えた」と話した。
栃木県鹿沼市や愛知県犬山市なども同様の運用を行っているほか、来月1日には東京都世田谷区と中野区が取り組みを開始する。中野区の酒井直人区長は今月24日の記者会見で、「多様性を認め合う社会への大きな一歩だ」と意義を語った。
事実婚は、健康保険や国民年金などに関しては法律婚と同等に扱われる。ただ、今回の続柄表記の変更で同性カップルが即座に同じ扱いとなるわけではない。
世田谷区の保坂展人区長は定例会見で、同性カップルの区職員に結婚の祝い金を出すなど男女の結婚との差をなくしてきたと説明。「企業が福利厚生などで一歩踏み出すきっかけになれば」と期待を込めた。
一方、住民基本台帳法を所管する総務省は、事実婚と同じ続柄表記になれば健康保険や国民年金などに関する手続きで「書類だけでは判断できなくなる」と問題視。取り組みについて報告があった大村市には再考を求めており、対応を注視しているという。