限定公開( 1 )
2015年11月に茨城県取手市の市立中3年の女子生徒がいじめを苦にして自殺したとされる問題で、適切な対応をとらなかったなどとして停職1カ月の懲戒処分を受けた当時の担任教諭が処分の取り消しを茨城県に求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(増田稔・裁判長)は10月31日、処分取り消しを認めた1審・水戸地裁に続いて「処分は違法」と判断し、茨城県の控訴を棄却した。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
【関連記事:■カップル御用達「ラブパーキング」、営業拡大で3年目へ 70代男女管理人を直撃】
判決文などによると、女子生徒が自殺したことについて、茨城県が設置した調査委員会が2019年3月に公表した報告書は、いじめと自殺の因果関係を認めた上で「担任教諭の学級運営や指導等の言動が、クラス内の関係性に変化をもたらし、本件生徒に対するいじめを誘発し、助長した、という点に大きな特徴がある」などと指摘した。
茨城県は2019年7月25日、「生徒に対するいじめを認知し得る状況にありながら、適切な対応を怠り、いじめを認知できなかった」などとして担任だった教諭に停職1カ月の懲戒処分を下した。
これに対して、教諭は2019年10月、茨城県人事委員会に対して審査請求をしたが、2021年9月に「処分に違法又は不当な点は認められない」として却下された。
|
|
そこで教諭は2022年3月、「いじめは、他の教員や学校も本件生徒や保護者から事前に何の情報を受けていなかった」などとして処分取り消しを求める訴えを起こした。
1審の水戸地裁(三上乃理子・裁判長)は2024年1月12日、女子生徒への進路指導など茨城県が停職処分の理由とした教諭の六つの行為について、「調査委員会がいかなる資料を根拠に認定したのかは明らかでなく、裏付ける証拠はない」などと指摘して県の主張を退けた。
その上で、「原告の各行為は、信用失墜行為及び全体の奉仕者たるにふさわしくない行為に当たるとは認められない」として処分の違法性を認め、取り消しを命じた。この判決に対し、茨城県側が控訴していた。
そしてこの日、東京高裁の増田裁判長は判決で、「本件処分は懲戒事由を欠く違法なもの」と判断し、茨城県の控訴を棄却した。
|
|
判決後に記者会見を開いた教諭の代理人である有川保弁護士は「原審以上に(教諭の行為が)自殺との関係はないと踏み込んで判断してくれた。画期的な判決」と述べた。
本人の代わりに記者会見に出席した教諭の夫は、「妻は5年も研修を受けさせられている。今回の判決で妻の名誉はだいぶ回復されたと思うが、長い間誹謗中傷を受けてきた。今までよく耐えてきたと思う」と説明。
「改めてお亡くなりになった生徒のご冥福をお祈りいたします。県や市には、この判決を真摯に受け止めていただきたいです」などとする妻のコメントを代読した。
|
|
|
|
Copyright(C) 2024 bengo4.com 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。