名古屋郊外で女性向けエステの店を経営しているAさんは、会社員の夫と高校生の2人の娘と一緒に暮らしていました。毎日夜遅くまで働く夫と自宅に併設したサロンで働くAさんとの共働きで、娘は2人とも私立高校に通っています。
【グラフ】「子どもの学費・教育費を払える自信がない」と答えた人の割合は
ある日、そろそろ長女の進路について考えなければならない時期になり、どこに進学するのか家族会議をすることになりました。そこで長女は「留学したい」と言い出します。長女は日本よりも海外で経験を積む方が、将来的にいいだろうと考えていたのです。
Aさんも長女の意見には賛成です。ただ実際に留学に行かせるとしたら、どれくらい費用がかかるのかが気になります。特に最近は円安が進んだので、金額的にも膨らんでいるのではないかと心配になります。長女の留学の思いを実現するにはどうしたらいいのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの高田充史さんに話を聞きました。
ー実際に留学に関する問い合わせは増えているのでしょうか
|
|
お客様から留学に関する相談を受ける機会は、以前よりも増えている傾向にあります。
実際に留学させようとするとそれなりに費用が必要なため、希望はあっても相談にはいたっていないというケースもあると思います。
留学に関する相談が増えている背景には、幼少期から英語教育を受ける機会が増えている点が考えられます。また日本社会におけるグローバル化が徐々に浸透する中で、語学を習得し海外で活躍しようという意欲のある人材は、企業からも強く求められている傾向が高まりつつある点が挙げられます。さらに新型コロナの影響がなくなり、海外との行き来がしやすくなったというのも理由のひとつです。
ー実際に留学するとしたらどれくらいの費用が必要なのでしょうか
留学先の場所や、期間によってさまざまです。内閣官房が2023年5月に公表している資料によると、留学経験者の留学総費用は期間が1年未満の人のうちで100万円未満と回答した割合が約半分で、1年以上の場合は4割の人が200万円以上だったと回答しています。
|
|
ーその費用はどうやって手当すればいいのでしょうか
Aさんの場合は長女の留学を想定していなかったため、費用を積み立てていなかったのではないでしょうか。急に留学が決まり資金的に余裕がないのであれば、例えば日本学生支援機構の給付型奨学金や貸与型奨学金、学校独自の奨学金を活用したり、日本政策金融公庫や金融機関などが提供している教育ローンを利用したりといくつか方法があります。
もし子どもが小さいうちから留学を視野に入れているのであれば、最低でも15年ほどのスパンで資金を用意していくことを推奨しています。手段としては積み立てNISAや、運用型の保険を活用する方法などです。
もっとも大事なことは、子供の将来の留学資金など、予想外の支出も考慮した早めの人生設計(ライフプラン)をしておくことです。家族の将来に向けた計画を事前にしっかりと立てておくことで、急な出費にも慌てず対処することができるようになります。
ーここ数年円安が進みました。将来の為替変動の影響はどう考えればいいでしょうか
|
|
たしかに為替変動により、留学費用は変動します。とはいえ時間をかけて資金を用意しておいた方がいい点は変わりません。為替変動の影響を最小限に抑えるのであれば、ドル建ての保険などの運用を考えるのもいいでしょう。一度決めた運用方法にこだわらず、定期的に見直すのも重要です。
◆高田 充史(たかだ・あつし)株式会社Erwin 代表取締役。独立系FP法人として「マイホーム購入の相談窓口」と「マネープランの相談窓口」を運営。住宅購入の資金契約や住宅ローン比較診断、ライフプラン作成など主に個人の資金相談を専門として、対面とオンラインで過去1000件以上の相談件数を積み重ねている。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)