「今まで自分がやってきたことの180度真逆が新しさ。それをぜひつかみ取りたいと常々思っている」―。2023年、手塚治虫文化賞特別賞を受けた漫画家の楳図かずおさんが口にした言葉だ。当時86歳。「ホラー漫画の神様」と呼ばれたが、ギャグからSFに至るまで、その創作意欲はジャンルを横断する縦横無尽なものだった。
人気絶頂だった1970年代、週刊少年サンデーの依頼でギャグ漫画「アゲイン」を発表。「当時、サンデーは『ギャグのサンデー』と呼ばれていたけど、赤塚不二夫さんの連載が終わってギャグがない状態に。『じゃあ、僕がやります。ギャグ、自信あります』と言った」。そんな飽くなき挑戦心に満ちた姿勢が、後の代表作「まことちゃん」の誕生につながった。
22年、個展「楳図かずお大美術展」で発表した「ZOKU―SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館」も大きな挑戦だった。80年代に連載したSF作品「わたしは真悟」の続編。新作としては実に27年ぶりだったが、「スタイルがすごく新しくて、一瞬で良いなと感じた。やっぱり新しいものをやりたいって、いつも思う」と、変わらぬ情熱を見せていた。
身ぶり手ぶりを交え、「いつかきっと、運命的な大波が来る。心待ちにしているところ」と語る姿は、生涯を通じて無邪気な少年のようだった。