さまざまな事情を抱えた人たちが利用するラブホテル。一般的には、ドキドキ、ワクワクしながら、ときにはソワソワと向かう場所だ。
今回は、ラブホで働いた経験がある2人の「意外な利用方法がある」と知ったエピソードを紹介する。
◆面識のない女性4人と意気投合し…
ラブホでアルバイトをしていた森川茜さん(仮名・20代)は、客との交流を通じて “ラブホの意外な楽しみ方”を知ったという。
「フロントで若い女性4人が楽しそうに会話をしていたんです。その中の1人が、『今、女子会プランやってるんですよね』と弾むような声でたずねてきました」
森川さんが働いていたラブホでは、クリスマスシーズンに「女子会プラン」を用意していた。
「バイトをはじめた頃は驚きましたが、もっと気軽にラブホを利用するきっかけになるなら、ステキなイベントだと今では思います」
そして、森川さんが客に「イベントプラン、やっていますよ」と案内したところ、意外な返事が返ってきたという。
“店員さんも一緒にどうですか?”
どうやらその女性たちと森川さんは同年代だったようで、森川さんは参加したい気持ちを抱きつつも、仕事中のために参加を断念することに……。
「4人の関係性をたずねてみると、まったく面識のないメンバーだったようです」
その日は、ラブホの近くでサブカル系のライブが開催されており、その場で意気投合したそうだ。
◆従業員なのに客としてラブホを楽しむという予期せぬ体験
「実は、私もそのサブカル系のキャラクターが好きなんですよね。仕事用の制服に目立たないように小さな缶バッチを付けていたのですが、それが“その道を究める人たち”にはバレていたようです」
フロントで誘ってきた女性は、森川さんの缶バッチを見て誘ってきたのだという。
「そのお客様は翌日まで利用すると言っていたので、仕事を終えてから女子会に参加することにしました。朝方までカラオケを楽しんだり、お菓子を食べて談笑したり、とても楽しい時間を過ごしました」
同じ趣味を持つ客たちと盛り上がり、カラオケでマイナー曲を選曲しても、「いいね」や「私もその曲好き」といった共感を得て、森川さんは興奮状態だった。全く面識のない人同士でありながら、初対面であることを忘れるほどだったという。
「この日、客として初めてラブホを利用しました。こんなに楽しい思い出ができるなんて想像もしていませんでした」
◆“休憩”が引き起こしたハプニング
堀田一郎さん(仮名・20代)は、清掃業務がもっとも忙しい時間帯に差しかかった頃、部屋のテーブルの上に置かれた“ある物”に気づいた。
「普通のバッグかもしれませんが、その高級感から“重要な荷物”であることがすぐに分かりました」
堀田さんがバッグのファスナーを少し開けてみると、目に飛び込んできたのは分厚い書類の束。さらにノートパソコンや商談資料らしきファイルも見えたという。
「私は直感的に『これは、すぐに届けないとマズい物だ』と思いました。こんな大切な物を忘れるのか疑問もありましたが、急いでフロントスタッフに報告し、お客様に連絡をお願いしたんです」
堀田さんが働いていたラブホでは、忘れ物対応のために一時的に客の連絡先を控えていたそうだ。
◆大感激する客
電話越しからは緊張した男性の声が聞こえ、焦りが伝わってきた。フロントスタッフが状況を説明すると、客は「すぐに戻ります!」とだけ言い残し、電話を切ったという。
その後、客はスーツ姿で汗をかきながらフロントに現れた。バッグを受け取るとホッとした表情で、「本当に助かりました。これを忘れたまま商談に行っていたら大変なことになっていたと思います」と感謝の言葉を繰り返したそうだ。
「どうやら、出張先での商談を終え、ラブホでひと息つこうと思ったものの、思った以上にリラックスして爆睡してまったみたいです。目が覚めた時には慌ててチェックアウトをし、次の商談先へ向かうタクシーの中でバッグがないことに気づいたとのことでした」
ホテルなのだから当然といえば当然だが、ひとりで休憩するために利用する客もいるものだと思った堀田さん。それにしても仕事で重要な資料を忘れていってしまうなんて……。
「ラブホで働いていると、普段では考えられない状況に遭遇することが多いですね」と締めくくった。
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―