相変わらずゲームシーンでは“チート級”の実力 11月15日発売の高コスパCPU「Ryzen 7 9800X3D」(約8.7万円)を試して分かったこと

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2024年11月06日 23:21  ITmedia PC USER

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ITmedia PC USER

Ryzen 7 9800X3Dのパッケージ。先代と比べるとハイエンドなXシリーズらしいスリムなパッケージとなった

 AMDが11月15日午前11時に、デスクトップPC向けの新型CPU「Ryzen 7 9800X3D」を発売する。パッケージ(ボックス)版の想定販売価格は8万6800円となる。先代の「Ryzen 7 7800X3D」と比べると、発売当初で1万5000円増しという価格設定だ。


【その他の画像】


 製品名の通り、Ryzen 7 9800X3DはAMD独自の「3D V-Cacheテクノロジー」を適用することでL3キャッシュの容量を大幅に増量したモデルとなる。L3キャッシュの増量が特にゲームにおいて効果が大きいことは、過去のRyzen X3Dシリーズのレビューでも明らかとなっている。


 この記事では、AMDから提供を受けたレビューキットを用いて、Ryzen 7 9800X3Dの性能をチェックしていく。


●Ryzen 7 9800X3DはどんなCPU?


 一部おさらいを兼ねて、Ryzen 7 9800X3DがどんなCPUなのかを確認していこう。


 その名の通り、Ryzen 7 9800X3Dは2024年夏に発売されたデスクトップ向け「Ryzen 9000シリーズ」に属する。モデル名の「X」は高性能タイプであること、「3D」は3D V-Cacheテクノロジーを適用していることを意味する。


 CPUアーキテクチャは最新の「Zen 5」で、先代(Zen 4アーキテクチャ)と比べるとシングル/マルチスレッド性能を引き上げる一方で、同等モデルと比べてTDP(熱設計電力)を引き下げることで消費電力当たりの性能(いわゆる「ワッパ」)を改善している。


 CPUソケットはRyzen 7000シリーズから使われている「Socket AM5」なので、Ryzen 7000/8000/9000シリーズに対応する既存のマザーボードを流用してアップグレードすることも可能だ(※1)。


(※1)マザーボードの出荷時期によっては装着前にUEFI(BIOS)の更新が必要(更新に際してCPUが必要な場合は、搭載しているUEFIが対応するCPUを用意しなくてはならない)


 本製品は3D V-CacheテクノロジーでL3キャッシュを増量しているが、「第2世代」となって実装方法が若干変わっている。


 従来(第1世代)では、CPUコアからなる「Core Complex Die(CCD)」の“上”に追加のキャッシュメモリを積層実装していた。それに対して、Ryzen 7 9800X3D(第2世代)ではCCDの“下”に積層実装するようになった。


 追加のキャッシュメモリの実装箇所が変わったことで、CCDを含むCPUパッケージの主要なチップをより効率的に冷やせるようになった。このことで、従来はベースモデルよりも低かった最大動作クロックの底上げと、完全なアンロックへの対応を実現している。Ryzen 7 9800X3Dの場合、先代の「Ryzen 7 7800X3D」と比べるとベースクロックは500MHz、最大クロックは200MHz向上した。


 Ryzen 7 9800X3Dと、本CPUのベースとなった「Ryzen 7 9800X」の主な仕様は以下の通りだ。


・Ryzen 7 9800X3D


・CPUコア:8基16スレッド(4.7GHz〜5.2GHz)


・L1キャッシュ:480KB


・L2キャッシュ:8MB


・L3キャッシュ:96MB


・TDP:120W


Ryzen 7 9700X


・CPUコア数:8基16スレッド(3.8GHz〜5.5GHz)


・L1キャッシュ:640KB


・L2キャッシュ:8MB


・L3キャッシュ:32MB


・TDP:65W


 比べて気になるポイントは、動作クロックの幅が“狭く”なり、TDPが55W引き上げられたところだろう。特にTDPだけを見れば、16コア32スレッドの最上位モデル「Ryzen 9 9900X」と同等だ。


 消費電力の“引き上げ”は、どこまで性能に影響するのか――次のページからベンチマークテストでチェックしてみよう。


●Ryzen 7 9800X3Dの実力をベンチマークテストでチェック


 ここからは、Ryzen 7 9800X3Dの実力をベンチマークテストを通してチェックしていく。


 今回AMDが提供したレビューキットは、Ryzen 7 9800X3D(パッケージ版)の他、マザーボード、メモリやSSDもセットになっている。足りないパーツは筆者が用意し、ベンチマーク環境を構築している。


 参考として、今回は過去にベンチマークテストを実施したRyzen 9000Xシリーズのスコアや、Ryzen 7 9800X3Dのテスト時に近い環境を構築した「Core Ultra 200Sシリーズ」のスコアも掲載する。


 計測時期の違いによりOSやデバイスドライバのバージョンが異なるためあくまでも参考程度に捉えてもらえれば幸いだ。


CINEBENCH R23


 まず、3Dレンダリングを通してCPUのパフォーマンスを確認できる「CINEBENCH R23」を実行した。スコアは以下の通りだ。


・シングルコア


・Ryzen 7 9800X3D:2192ポイント


・Ryzen 9 9950X:2215ポイント


・Ryzen 9 9900X:2187ポイント


・Ryzen 7 9700X:2196ポイント


・Ryzen 5 9600X:2174ポイント


・Core Ultra 9 285K:2398ポイント


・Core Ultra 5 245K:2181ポイント


マルチコア


・Ryzen 7 9800X3D:2万2862ポイント


・Ryzen 9 9950X:4万293ポイント


・Ryzen 9 9900X:3万2616ポイント


・Ryzen 7 9700X:1万9858ポイント


・Ryzen 5 9600X:1万6682ポイント


・Core Ultra 9 285K:4万262ポイント


・Core Ultra 5 245K:2万4763ポイント


 Ryzen 9000シリーズ内で比べると、Ryzen 7 9800X3DのスコアはRyzen 7 9700Xに近い。「Ryzen 7 9700XのL3キャッシュを増量したCPUがRyzen 7 9800X3D」だと考えると、そこまでの違和感はない。


 シングルコアのスコアを見てみると、Ryzen 9000シリーズは割と“横並び”だ。一方、マルチコアは「コアの数」と「TDP」の違いがリニアに影響している様子がうかがえる。


 Ryzen 7 9800X3Dは、CPU単体では「ワッパがいい」と評することは難しい。ただし、引き上げられたTDPの分はしっかりと性能向上の恩恵にあずかれそうだ。


Blender Benchmark


 もう1つ、CPUを使うテストとして「Blender Benchmark」も試した。


 その名の通り、Blender Benchmarkは2D/3Dアニメーション制作ツール「Blender」をベースとしたベンチマークテストアプリで、レンダリングを通してCPUやGPUのパフォーマンスをチェックできる。


 今回は「Monster」「Junkshop」「Classroom」の3つのシナリオをCPUで実行し、1分当たりに生成できたサンプル(オブジェクト)の数を比較する。結果は以下の通りだ。


・Monster


・Ryzen 7 9800X3D:145.910652個


・Ryzen 9 9950X:255.233524個


・Ryzen 9 9900X:200.184328個


・Ryzen 7 9700X:124.063776個


・Ryzen 5 9600X:100.753558個


・Core Ultra 9 285K:251.667320個


・Core Ultra 5 245K:144.613399個


Junkshop


・Ryzen 7 9800X3D:102.355844個


・Ryzen 9 9950X:183.687416個


・Ryzen 9 9900X:144.937113個


・Ryzen 7 9700X:90.231814個


・Ryzen 5 9600X:72.078098個


・Core Ultra 9 285K:166.318361個


・Core Ultra 5 245K:95.567365個


Classroom


・Ryzen 7 9800X3D:70.827779個


・Ryzen 9 9950X:128.055700個


・Ryzen 9 9900X:101.518040個


・Ryzen 7 9700X:62.825483個


・Ryzen 5 9600X:51.117842個


・Core Ultra 9 285K:121.514872個


・Core Ultra 5 245K:71.578991個


 結果の傾向は、CINEBENCH R23のマルチコアスコアに近い。CINEBENCH R23はもちろん、Blender BenchmarkもCPUコアの“純粋な”演算性能を見るテストなので、Ryzen 7 9800X3Dの良好なスコアはL3キャッシュ増量よりも動作クロック向上による効果と見るべきだろう。


PCMark 10


 続けて、PCの総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」の総合スコアを比べてみよう。


・Ryzen 7 9800X3D:9989ポイント


・Ryzen 9 9950X:1万949ポイント


・Ryzen 9 9900X:1万632ポイント


・Ryzen 7 9700X:1万646ポイント


・Ryzen 5 9600X:9120ポイント


・Core Ultra 9 285K:9529ポイント


・Core Ultra 5 245K:9001ポイント


 ここまでRyzen 7 9700Xよりも高いスコアを記録してきたRyzen 7 9800X3Dだったが、このテストでは負けてしまっている。Ryzen 7 9800X3Dが勝つと思っていたので少し驚いてしまったが、テストの内容を考えるとあり得ない結果というわけでもない。今後のUEFIやOS、ドライバの最適化によってRyzen 7 9800X3Dが逆転することがあり得るかもしれないが、あっても“辛勝”くらいになるかもしれない。


 「普段使い」という範囲では、3D V-Cacheによる大容量L3キャッシュの恩恵はあまり大きくない。ただし、この後に続くテストを見れば分かるが、それは「Ryzen 7 9800X3Dの性能が低い」ということを意味しない。


3DMark


 続けて、3Dグラフィックスの総合ベンチマークテストアプリ「3DMark」から、DirectX 11ベースの「Fire Strikeシリーズ」と、DirectX 12ベースの「Time Spyシリーズ」を一通り実行してみた。総合スコアは以下の通りだ。


・Fire Strike(フルHD:1920×1080ピクセル)


・Ryzen 7 9800X3D:5万1620ポイント


・Ryzen 9 9950X:5万719ポイント


・Ryzen 9 9900X:4万9572ポイント


・Ryzen 7 9700X:4万9218ポイント


・Ryzen 5 9600X:4万6596ポイント


・Core Ultra 9 285K:4万3523ポイント


・Core Ultra 5 245K:4万2988ポイント


Fire Strike Extreme(WQHD:2560×1440ピクセル)


・Ryzen 7 9800X3D:3万2674ポイント


・Ryzen 9 9950X:3万3054ポイント


・Ryzen 9 9900X:3万2274ポイント


・Ryzen 7 9700X:3万1862ポイント


・Ryzen 5 9600X:3万783ポイント


・Core Ultra 9 285K:3万1420ポイント


・Core Ultra 5 245K:3万1291ポイント


Fire Strike Ultra(4K:3840×2160ピクセル)


・Ryzen 7 9800X3D:1万7951ポイント


・Ryzen 9 9950X:1万8036ポイント


・Ryzen 9 9900X:1万7833ポイント


・Ryzen 7 9700X:1万7730ポイント


・Ryzen 5 9600X:1万7339ポイント


・Core Ultra 9 285K:1万7926ポイント


・Core Ultra 5 245K:1万7823ポイント


Time Spy(WQHD:2560×1440ピクセル)


・Ryzen 7 9800X3D:2万5467ポイント


・Ryzen 9 9950X:2万5014ポイント


・Ryzen 9 9900X:2万4848ポイント


・Ryzen 7 9700X:2万4506ポイント


・Ryzen 5 9600X:2万2391ポイント


・Core Ultra 9 285K:2万5697ポイント


・Core Ultra 5 245K:2万4969ポイント


Time Spy Extreme(4K:3840×2160ピクセル)


・Ryzen 7 9800X3D:1万2430ポイント


・Ryzen 9 9950X:1万3806ポイント


・Ryzen 9 9900X:1万3328ポイント


・Ryzen 7 9700X:1万2066ポイント


・Ryzen 5 9600X:1万1239ポイント


・Core Ultra 9 285K:1万4148ポイント


・Core Ultra 5 245K:1万2972ポイント


 今までのテストと打って変わって、Ryzen 7 9800X3Dが上位に踊り出るケースが増えた。テストによっては、Ryzen 9 9950Xのスコアも上回っている。


 3D V-CacheテクノロジーによるL3キャッシュの増量は、単調な命令(作業)を行うプログラムよりも複数の命令が入れ替わり立ち替わり実行されるプログラムでこそ効果を発揮しやすい。多くのゲームは、まさに「複数の命令が入れ替わり立ち替わり実行されるプログラム」なので、単純に動作クロックを高めるよりも、L3キャッシュを多くした方がパフォーマンスの向上につながるのだ。


 3DMarkの主要なベンチマークテストは、比較的負荷の重いゲームで使われるような3Dグラフィックス機能のパフォーマンスを確かめる。プログラムの作りはゲームのそれに近いので、ゲーム同様とにL3キャッシュの増量がスコアの向上に貢献している。


 ただし、描画解像度が高くなる(≒処理負荷が大きくなる)ほどスコアの差は小さくなる。これは解像度が高くなるとCPUのパフォーマンス差がボトルネックとなりにくい(GPUのパフォーマンスの方がものをいう)からだ。


 とはいえ、Ryzen 7 9800X3Dは“最上位”ではないものの高いゲーミングパフォーマンスを発揮できることは間違いなさそうだ。


FF14ベンチマーク


 より実際のゲームプレイに近い場面でも、Ryzen 7 9800X3Dの高性能は生かせるのか――ゲームベースのベンチマークテストとして、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」と(旧FF14ベンチマーク)と、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」(新FF14ベンチマーク)をそれぞれ実行してみよう。


 旧FF14ベンチマークは、少し古めのPCを基準に開発されている。そのため、現在では「少し軽量なゲームベンチマーク」ということになる。設定次第では、CPU内蔵のGPUでも良いスコアを記録できる。


 一方の新FF14ベンチマークは、ベースとなるゲーム(ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー)においてグラフィックスエンジンが刷新されたこともあり、GPUを中心にシステム要件が引き上げられた。そのため、旧FF14ベンチマークとは異なり、そこそこ“重たい”テストになった。


 今回はどちらも画質を「最高品質」設定とした上で、「フルHD(1920×1080ピクセル)」「WQHD(2560×1440ピクセル)」「4K(3840×2160ピクセル)」の3解像度でスコアを計測した。なお、新FF14ベンチマークでは、フレームレートが60fpsを下回った際に超解像技術(※1)を有効化している。


(※1)NVIDIA DLSS(Deep Learning Super Sampling) 2.0またはAMD FSR(FidelityFX Super Resolution)に対応している(今回はDLSS 2.0)


 スコアは以下の通りだ。


・旧FF14ベンチマーク


・フルHD


・Ryzen 7 9800X3D:4万7206ポイント


・Ryzen 9 9950X:3万7376ポイント


・Ryzen 9 9900X:3万5826ポイント


・Ryzen 7 9700X:3万7517ポイント


・Ryzen 5 9600X:3万6740ポイント


・Core Ultra 9 285K:3万5621ポイント


・Core Ultra 5 245K:3万1191ポイント


WQHD


・Ryzen 7 9800X3D:4万593ポイント


・Ryzen 9 9950X:3万1416ポイント


・Ryzen 9 9900X:3万400ポイント


・Ryzen 7 9700X:3万2215ポイント


・Ryzen 5 9600X:3万2076ポイント


・Core Ultra 9 285K:3万1272ポイント


・Core Ultra 5 245K:2万8815ポイント


4K


・Ryzen 7 9800X3D:2万2471ポイント


・Ryzen 9 9950X:2万1332ポイント


・Ryzen 9 9900X:2万1055ポイント


・Ryzen 7 9700X:2万1780ポイント


・Ryzen 5 9600X:2万1703ポイント


・Core Ultra 9 285K:2万1183ポイント


・Core Ultra 5 245K:2万572ポイント


新FF14ベンチマーク


・フルHD


・Ryzen 7 9800X3D:3万9073ポイント


・Ryzen 9 9950X:3万738ポイント


・Ryzen 9 9900X:2万9705ポイント


・Ryzen 7 9700X:3万1701ポイント


・Ryzen 5 9600X:3万1014ポイント


・Core Ultra 9 285K:3万2ポイント


・Core Ultra 5 245K:2万5220ポイント


WQHD


・Ryzen 7 9800X3D:2万8704ポイント


・Ryzen 9 9950X:2万5483ポイント


・Ryzen 9 9900X:2万5282ポイント


・Ryzen 7 9700X:2万5617ポイント


・Ryzen 5 9600X:2万5424ポイント


・Core Ultra 9 285K:2万4814ポイント


・Core Ultra 5 245K:2万3252ポイント


4K


・Ryzen 7 9800X3D:1万4105ポイント


・Ryzen 9 9950X:1万4518ポイント


・Ryzen 9 9900X:1万4801ポイント


・Ryzen 7 9700X:1万5071ポイント


・Ryzen 5 9600X:1万4817ポイント


・Core Ultra 9 285K:1万4110ポイント


・Core Ultra 5 245K:1万4038ポイント


 旧FF14ベンチマークの特にフルHD/WQHD解像度では、Ryzen 7 9800X3Dのスコアが圧倒的に高い。「あれ、設定間違えたかな……?」と思ったのだが、間違いではなかった。4K解像度になると差は縮まるものの、それでもRyzen 7 9800X3Dがトップに立っている。


 新FF14ベンチマークも傾向はおおむね同様だ。


FF15ベンチマーク


 では、もう少し処理が重いゲームタイトルではどうなるか? 続けて「FINAL FANTASY 15 WINDOWS EDITION BENCHMARK」(FF15ベンチマーク)を試してみよう。こちらは画質を「高品質」とした上で、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度でテストを実行した。結果は以下の通りだ。


・フルHD


・Ryzen 7 9800X3D:2万2724ポイント


・Ryzen 9 9950X:2万2282ポイント


・Ryzen 9 9900X:2万1309ポイント


・Ryzen 7 9700X:2万1915ポイント


・Ryzen 5 9600X:2万1446ポイント


・Core Ultra 9 285K:2万2373ポイント


・Core Ultra 5 245K:2万844ポイント


WQHD


・Ryzen 7 9800X3D:1万9757ポイント


・Ryzen 9 9950X:1万9413ポイント


・Ryzen 9 9900X:1万8939ポイント


・Ryzen 7 9700X:1万9134ポイント


・Ryzen 5 9600X:1万9564ポイント


・Core Ultra 9 285K:1万9652ポイント


・Core Ultra 5 245K:1万9355ポイント


4K


・Ryzen 7 9800X3D:1万1761ポイント


・Ryzen 9 9950X:1万1654ポイント


・Ryzen 9 9900X:1万1861ポイント


・Ryzen 7 9700X:1万1936ポイント


・Ryzen 5 9600X:1万1958ポイント


・Core Ultra 9 285K:1万2092ポイント


・Core Ultra 5 245K:1万2153ポイント


 どの解像度でも、Ryzen 9000シリーズの中ではRyzen 7 9800X3Dがトップに立った。フルHD/WQHD解像度では、Core Ultra 200Sシリーズも上回っている。


 もちろんゲーム自体が重たいので、動作クロックがより高いCPU、あるいはコア数の多いCPUとの差は小さいのだが、Ryzen 7 9800X3Dの位置付けとしては「ミドルレンジ〜ミドルハイ」でありながらも、最新世代のフラグシップCPUとほぼ変わらないか、上回るスコアを出せている。3D V-Cache恐るべしと、言うべきだろうか。


●重量級の「AAAゲーム」でも性能を発揮できる?


 ここまでのテストは、あくまでもベンチマークアプリを用いたテストであり、実際のゲームプレイと違い「決まった順にテストを実行するもの」だ。


 そこで実際のゲームをいつも通りにプレイして、その平均フレームレートを比較してみようと思う。今回は「ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(アーマードコア6)」「Cyberpunk 2077」「Microsoft Flight Simulator」の3タイトルを遊び比べた。


アーマードコア6


 アーマードコア6は発売から1年が経過しているが、パッと見のグラフィックスの細かさの割には意外と負荷は軽い。それでも、CPU内蔵GPUでは「最高画質」あるいは「高フレームレート」で遊ぶのは難しい。超重量級のゲームタイトルを遊ぶ予定はないにしても、「アーマードコア6が快適に遊べるくらいの性能」が、自作PCの予算/構成を考える際の1つのベンチマークにもなっている。


 そんな本タイトルの平均フレームレートは以下の通りだ。


・フルHD


・Ryzen 7 9800X3D:120.0fps


・Ryzen 9 9950X:119.8fps


・Ryzen 9 9900X:119.8fps


・Ryzen 7 9700X:119.7fps


・Ryzen 5 9600X:119.8fps


・Core Ultra 9 285K:114.5fps


・Core Ultra 5 245K:117.2fps


WQHD


・Ryzen 7 9800X3D:120.0fps


・Ryzen 9 9950X:119.5fps


・Ryzen 9 9900X:119.7fps


・Ryzen 7 9700X:119.8fps


・Ryzen 5 9600X:119.8fps


・Core Ultra 9 285K:112.7fps


・Core Ultra 5 245K:114.5fps


4K


・Ryzen 7 9800X3D:118.9fps


・Ryzen 9 9950X:116.9fps


・Ryzen 9 9900X:117.1fps


・Ryzen 7 9700X:116.6fps


・Ryzen 5 9600X:117.8fps


・Core Ultra 9 285K:115.8fps


・Core Ultra 5 245K:113.7fps


 Ryzen 7 9800X3Dは全解像度で“ベスト”を記録した。フルHD/WQHD解像度では、上限の120fpsに張り付いている。他のCPUにおける結果を見れば分かる通り、GPU“だけ”では上限張り付きは難しい。フレームレートに上限設定がなかった場合は、どうなっていたのだろうか……?


Cyberpunk 2077


 Cyberpunk 2077は、現行のPCゲームの中でも上位を争う高負荷タイトルだ。今回は、ゲーム内に設けられたベンチマーク機能を使って平均フレームレートのチェックを行った。


 ゲーム設定はプリセットの「レイトレーシング:ウルトラ」を選択し、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度でテストした。DLSS(超解像技術)も有効にし「クオリティ・フレーム生成あり」をオンにしている。結果は以下の通りだ。


・フルHD


・Ryzen 7 9800X3D:237.26fps


・Ryzen 9 9950X:224.82fps


・Ryzen 9 9900X:218.38fps


・Ryzen 7 9700X:224.81fps


・Ryzen 5 9600X:217.69fps


・Core Ultra 9 285K:203.4fps


・Core Ultra 5 245K:203.46fps


WQHD


・Ryzen 7 9800X3D:191.59fps


・Ryzen 9 9950X:181.99fps


・Ryzen 9 9900X:183.17fps


・Ryzen 7 9700X:180.37fps


・Ryzen 5 9600X:184.26fps


・Core Ultra 9 285K:174.94fps


・Core Ultra 5 245K:169.98fps


4K


・Ryzen 7 9800X3D:124.05fps


・Ryzen 9 9950X:120.6fps


・Ryzen 9 9900X:119.61fps


・Ryzen 7 9700X:120.05fps


・Ryzen 5 9600X:120.33fps


・Core Ultra 9 285K:120.55fps


・Core Ultra 5 245K:119.95fps


 「さすがにヘビーなのでRyzen 7 9800X3Dには荷が重いのでは……?」と思っていたのだが、全ての解像度でRyzen 7 9800X3Dがトップに立った。これにはびっくりした。


 GPU側でDLSSを使ったりフレーム生成を有効化したりしている効果もあるが、最上位CPUをも超えるフレームレートをたたき出せるとなると、ゲームにおける3D V-Cacheの効果はとても大きいことは間違いない。


Microsoft Flight Simulator


 Microsoft Flight Simulatorも、重量級タイトルとして定番だ。精細に描かれる風景は、さながら実写を見ているかのような再現度だ。一方で、その分読み込まれるデータ量が多いことから、GPUだけでなくCPUにもかなりの負荷がかかる。


 今回はDLSSをオンにしてフレーム生成も有効とし、フルHD/WQHD/4Kの3つの解像度においてディスカバリーフライトの「モナコ」をAI操縦し、CapFrameXで2分間の平均フレームレートを計測した。結果は以下の通りだ。


・フルHD


・Ryzen 7 9800X3D:262.8fps


・Ryzen 9 9950X:178.9fps


・Ryzen 9 9900X:179.81fps


・Ryzen 7 9700X:192.4fps


・Ryzen 5 9600X:188.4fps


・Core Ultra 9 285K:176.9fps


・Core Ultra 5 245K:174.4fps


WQHD


・Ryzen 7 9800X3D:239.4fps


・Ryzen 9 9950X:181.0fps


・Ryzen 9 9900X:186.4fps


・Ryzen 7 9700X:191.3fps


・Ryzen 5 9600X:178.2fps


・Core Ultra 9 285K:174.3fps


・Core Ultra 5 245K:170.1fps


4K


・Ryzen 7 9800X3D:177.4fps


・Ryzen 9 9950X:146.1fps


・Ryzen 9 9900X:147.4fps


・Ryzen 7 9700X:146.6fps


・Ryzen 5 9600X:147.5fps


・Core Ultra 9 285K:145.1fps


・Core Ultra 5 245K:142.8fps


 これまた、Ryzen 7 9800X3Dが全解像度で快勝した。


 ゲームの快適さに占める割合として、もちろんGPUは非常に大きなウエイトを占める。しかし、例えば高解像度なゲームともなれば、精細に作られたオブジェクトの描画に際し、データをストレージから読み出したり、データを処理したりする命令をためておく際に必要なCPUのキャッシュメモリも、性能を大きく左右する。


 その点でいえばやはり3D V-Cacheの「大容量のL3キャッシュメモリ」の効果は絶大だ。Ryzen 7000シリーズと比べてCPUコア自身のパフォーマンスも向上したこともあり、Ryzen 7 9800X3Dはまさにゲームシーンではチート級の速さを実現してしまうというわけだ。


●ゲーム以外の「重たいこと」でも3D V-Cacheは効果ある?


 ここまで「CPU自体の速さ」「一般的なPC操作」「ゲームでのパフォーマンス」を見てきたが、最後にもう1つ、PCに高い負荷をかけるクリエイター向けの作業にスポットを当ててRyzen 7 9800X3Dの性能を確認しよう。


 今回は「Adobe Lightroom Classic」を利用し、ニコンのデジタルカメラ「Nikon Z 7II」で撮影した100個のRAWファイルを、そのままの解像度でJPEGファイルとして書き出しを行う所要時間を計測した。結果は以下の通りだ。


・Ryzen 7 9800X3D:26.99秒


・Ryzen 9 9950X:30.1秒


・Ryzen 9 9900X:31.8秒


・Ryzen 7 9700X:33.4秒


・Ryzen 5 9600X:38.3秒


・Core Ultra 9 285K:25.16秒


・Core Ultra 5 245K:26.61秒


 Ryzen 9000シリーズ内の比較では、やはりRyzen 7 9800X3Dが短時間で済んでいる。書き出しに使ったLightroom Classicアプリのパフォーマンスアップ効果もあるのかもしれないが、少なくとも「写真の現像や書き出し」程度であれば、Ryzen 7 9800X3Dはコア数のより多いCPUと同程度の性能を持っている言っていいだろう。


 もちろん写真(静止画)の編集よりも負荷の掛かる動画編集では、上位CPUに分がある結果になると思うのだが「ゲームでも遊ぶ。テレワーク時には仕事にも使う。趣味にも使う」ようなマルチな用途を1台のデスクトップPCで済ませようとしたときに、Ryzen 7 9800X3Dはどの方面にもちょうどいいパフォーマンスを発揮するCPUといえる。


●ワッパはどう?


 Ryzen 7 9800X3Dは、TDPが120Wに設定されている。これは歴代のRyzenの中では比較的高い方なのだが、実は先代のRyzen 7 7800X3Dから変わっていない。今までのRyzen 9000Xシリーズが「TDP低くなったけど、性能上がったよ」的なアピールをしていたことを考えると、「え、TDP(≒消費電力)高くない?」という残念感が先に立ってしまう。


 そこで、実際の消費電力をワットチェッカーを使って調べてみた。今回はWindowsにログインした後、10分間放置した状態を「アイドル状態」、3DMarkのTime Spy Extremeを実行した際のピーク電力を「高負荷時」として計測した。結果は以下の通りだ。


・Ryzen 7 9800X3D


・アイドル時:88W


・ピーク時:471W


Ryzen 9 9950X


・アイドル時:91W


・ピーク時:573W


Ryzen 9 9900X


・アイドル時:91W


・ピーク時:546W


Ryzen 7 9700X


・アイドル時:91W


・ピーク時:507W


Ryzen 5 9600X


・アイドル時:91W


・ピーク時:497W


Core Ultra 9 285K


・アイドル時:65W


・ピーク時:459W


Core Ultra 5 245K


・アイドル時:65W


・ピーク時:441W


 さすがにCore Ultra 200Sシリーズと比べると消費電力は大きいのだが、他のRyzen 9000Xシリーズと比べると消費電力は抑えられている。TDPの大きさの割に、ワッパは良好といえそうだ。


●3D V-Cacheの効果は新世代でも抜群!


 3D V-Cacheテクノロジー搭載のRyzenは、ゲーム時のパフォーマンスに特に秀でていることが特徴だ。AMDのうたい文句通りの性能を発揮することは、過去のモデルでも証明されている。


 それは、第2世代に進化した3D V-Cacheテクノロジーを備えるRyzen 7 9800X3Dも同様だった。今回のテスト結果を見れば分かる通り、今まで以上にゲームシーンでのパフォーマンスを向上させてくれることは間違いない。


 最近はSocket AM5対応マザーボードやDDR5メモリモジュールの価格もだいぶ落ち着いてきて、手頃な価格なものも増えてきた。ゲームに重きを置いて新しいPCを組みたいと考えたとき、熟成が進みつつあるSocket AM5の環境に、ゲームシーンでは最上位CPUをも超える性能を発揮しうるRyzen 7 9800X3Dを組み合わせれば、コストパフォーマンス(コスパ)面でも秀でた選択肢だろう。


 もちろん、本CPUは日常作業でも十分に速いためタイムパフォーマンス(タイパ)にも優れているともいえる。Ryzen 7 9800X3Dはさまざまな面で「パフォーマンス」を重視したい人に、最もオススメできるCPUの1つだ。



このニュースに関するつぶやき

  • これでファミコンのエミュレーターは動かせるんだろうか・・
    • イイネ!0
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