京都市内のあるエリアで8年もの間、放浪生活を続けていた1匹の犬が昨秋、保護されました。放浪するようになった経緯は分かりませんが、保護されたとき首には深い傷があり、今も痛々しい傷跡が残っています。ただ、表情はずいぶんとやわらかくなりました。名前は「シロ」。今春、京都・大原にオープンした『犬のウェルネスリゾート ことまる』で「総支配人」を務めています。
【写真2枚】田んぼの水をすすりながら生きながらえた犬さん、保護当時
犬が総支配人? そうなのです、ことまるではバーニーズマウンテンドッグのバニラくんが「オーナー」、雑種のアイスちゃんが「総支配人見習い」、ゴールデンドゥードルのクッキーちゃんが「フロント」、雑種ココアちゃんが「コンシェルジュ」と、人間のオーナー・福村希さんの愛犬たちが、それぞれ“肩書”を与えられているのです。
『ことまる』を開業するきっかけになったのも愛犬たちでした。
「先代のバーニーズ・マロンはシニアになってからケアが大変だったので、バニラに介護が必要になったときに備えて、まずはトリミングのスキルを学びました。ドッグホテルを併設しているサロンに勤めて実務経験を積み、数年前に自然豊かで庭が広い場所へと引っ越した自宅の隣に『ことまる』をオープンしたんです」(福村さん)
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シロくんが保護されたのは2023年10月。最初は旧知の保護主からオープン前の『ことまる』に預けられていたのですが、そのまま福村さんの家族となり、「総支配人」に就任しました。ひどい傷を負い、田んぼの水をすすりながら命を繋いでいた犬が、ホテルの総支配人と呼ばれる立場になるなんて! 見事な転身ぶりです。
犬の心と体が整うホテル
『ことまる』はドッグホテルですが、「犬のウェルネスリゾート」と掲げているのは、福村さんの想いを表現するためです。
「ただ預かるのではなく、滞在中にわんちゃんがリフレッシュできて、心と体が整うような時間を過ごしてほしいから。そのお手伝いができればと思っています」
あわせて約600坪、脱走対策万全の3つのドッグランを駆け回り、温かい特製手作りごはんを食べ、明るい日差しが差し込む開放的な空間で一日を過ごす。「内臓から元気になってほしい!」という福村さんの言葉にもうなずけます。
シロくんの保護主さんもそうした想いに共感したから、譲渡したのです。
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「ことまるさんに来た子は最初不安そうにしていても、だんだんと表情が生き生きとしてきて、4、5日滞在した子は見違えるようにたくましくなっています。帰りたがらなくなる子もいるんですよ(笑)。ひどく心身が傷ついた状態だったシロも、ことまるさんの犬の習性に適した環境や食事で、本来の姿を取り戻しました」(シロくん保護主)
現在、『ことまる』の利用者は京都在住の方が多く、留守をする際に預けるようですが、京都は観光スポットの宝庫。府外から遊びに来て、犬を同伴できないスポットを巡る間、お泊りや一時預かりをしてもらうのもよさそうです。帰りたくなくなるほど快適な場所にいると思えば、飼い主さんの後ろめたさも少しは軽減するのでは?
シロくんはちょっとビビリな総支配人なので、飼い主さんが握手(オテ)を求めても応じてくれないかもしれませんが、お客様であるわんちゃんのことはとても穏やかに、紳士的に迎えてくれます。
(まいどなニュース特約・岡部 充代)
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