千葉県市川市で、戦時中や戦後の混乱のため、小学校の卒業式に参加できなかった人たちの「卆寿(卒寿)の卒業式」が行われました。
【写真を見る】「こんなに生きていてよかったと思ったことはない」戦争で卒業式ができなかった90代の人たちに「卆寿(卒寿)の卒業式」 千葉・市川市
「おめでとうございます」
1人ずつ胸に花をつけてもらい、列になって進んでいく人々。戦争や戦後の混乱のため、「卒業式」ができないまま90代を迎えた人たちに向けた「卆寿(卒寿)の卒業式」が今月2日、千葉県市川市で行われました。
市川市が市制施行90年の今年、市の教育委員会が主催し、1945年から1947年にかけて、市内の小学校を卒業した44人が集まりました。
参加した人たちは「懐かしい人と会ってほんと嬉しいですわ」「ほんとに会えないもんね。何十年ぶりだろうね」など、久しぶりの再会で会話に花を咲かせる姿が見られました。
卒業式では、勝山浩司教育長がひとりひとりに、当時の小学校名と校長名を記した卒業証書を手渡しました。
「卒業生」を代表して挨拶をした岡野谷守利さん(92)は「食糧難のため、空腹で空腹で授業に集中できなかったこと」「警戒警報のサイレンが鳴り、急に自宅に逃げ帰ったこと」など、戦時下の学校生活の思い出を語りました。
動乱の時代を生き抜き、80年の時を経て卒業証書を受け取った心境は、どのようなものだったのでしょうか。
涙を浮かべ、手にした卒業証書をじっと抱きしめる姿が印象的だった93歳の女性は…
「きょうがこんなに平和で嘘みたい。こんなに生きていてよかったと思ったことはない」
登校中に戦闘機に銃撃され、兵隊に抱えられて大きな木の下に避難した体験を振り返り、平和なきょうを迎えられたことに涙が出たと話しました。
また、ウクライナやパレスチナなどの現状について参加者たちは「かつての自分たちを思い出す」「早く戦争が終わり、子どもたちが安心して学校に行ける環境になってほしい」と話していました。
90歳を過ぎた「卒寿の卒業生」たちは、今を生きる子どもたちの、平和を願っていました。
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