◆ 秋季キャンプの紅白戦で2回無失点の快投
復活へ力強く号砲を鳴らす快投だった。
高知県安芸市で行われているタイガースの秋季キャンプ第1クールの3日目。今キャンプ初実戦となる紅白戦で白組の先発マウンドに上がったのが、伊藤将司だった。1年目から昨年まで開幕ローテーションの一角を担った左腕は志願しての実戦登板。今季4勝に終わった男には、明確なテーマがあった。
「ストレートも空振りとか、ファウルもゾーンで取れてたので良かったかなと思いますね」
任された2イニングで投じた22球はほとんどが直球だった。初回、一死で対峙した佐藤輝明には直球を主体に追い込むと最後はチェンジアップで空振り三振。
「まっすぐをしっかり投げたら、変化球も安定してくるし、振ってくれたりもするので。やっぱりまっすぐはやっていけたらなと思います」
2回無失点で終えた紅白戦であらためて直球の重要性を再認識したように深くうなずいた。
2軍降格を経験するなど、4年目でキャリア最少の13先発に終わった今季はその“まっすぐ”押しの投球ができなかったようだ。
「(シーズン中は)自分でも納得いかないストレートもあるし、ファウル取れない球もあるし、それが結果に出たのが多かった」。本人は苦しかったシーズンをそう回想した。
秋季キャンプを前にした甲子園での秋季練習ではブルペン入りしてシーズン中に安定しなかった投球フォームの修正に着手。自身がポイントに挙げる左肩の動きに着目して映像も見返した。
「左肩が動いている時が一番良い状態。そこが固まって(左肩が)上がらずにこのまま(球を)上に投げている感じだったので、そこの修正をしている」
右手を掲げるのが特徴的な伊藤将のフォームにおいて、その右手と連動する左手をどこまで上げきって腕を振れるかが“生きた”まっすぐを投げるための生命線になるという。
経過は順調のようだ。「やっぱりゾーンで空振りだったり、ファウルが取れたりとか、そこでストレートの強さが分かると思う。良い感覚で試合では投げられたんで。試合で確認できたっていうのがものすごくでかいかなと思います」。紅白戦で演じた2回完全投球は来季へ向けて手応えを深める大きな6つのアウトになった。
今後は実戦を封印し、キャンプではブルペン投球を中心にフォーム固めに時間をそそぐ。「試合では投げられたので、それを来年に生かせるように」。安芸で手にした直球の確かな感触が逆襲への歩みをより力強くした。
文=遠藤礼(スポーツニッポン・タイガース担当)