いつかは海外でのんびり暮らしたい。語学力を身につける意味でも海外で働きたい――そう思う日本人は少なくありません。
しかし、異国で暮らすのは簡単なことではなく、中には移住に失敗してしまうこともあります。では、海外移住で「成功」する人とはどういった人なのでしょうか。今回は移住に成功した方のケースを紹介します。
私(宮脇咲)は宮崎県から大学進学を機に上京し、現在はドバイに移住し、海外の物件をメインとした不動産投資をしている他、富裕層向けの海外移住支援も行っております。そういった経緯もあり、これまでに多くの海外移住者の方と知り合ってきました。
今回は、初めての海外移住で紆余曲折ありながらも、成功を手にした20代男女の実像をお伝えします。海外移住を検討している方は参考になるかと思います。
◆海外移住は思ったより簡単。ネットで仕事を見つけて移住
海外移住の動機は人それぞれですが、若い人では仕事をきっかけとして移住を決めるという人も多いです。今回紹介する成嶋こと里さん(20代女性)もその一人。成島さんはドバイに移住して1年。現在は不動産エージェントとして働いています。
成島さんは勉強した英語を実践的に活かす場で働きたいという思いからドバイへの移住を決意しました。そんな成島さんは、移住前に日本にいながらドバイでの仕事を見つけました。
「ドバイの求人はネットで調べて探しました。。Googleで「JAPANESE WANTED IN DUBAI(日本語訳で「日本人の求人 ドバイ」)」と検索し、高級ホテル内のレストランの仕事を見つけて応募し、リモートでの面接を経て採用に至りました」
なお、成島さんは国際系の大学に通っていたことや、留学経験もあったことから、移住前からTOEICのスコアが800点程度と一定の英語レベルに達していました。面接では英語での会話もあったそうで、移住を考えている方は英語の力を高めておいて損はないでしょう。
◆月給は日本企業の半分程度。しかしチップで思わぬ高収入に
ドバイの高級寿司レストランで働きはじめた成島さん。最も気になるのは収入面ではないでしょうか。
「基本給は一般的な日系企業に就職した場合の初任給の半分程度です。たしかに、金額的にはあまり多くないイメージかもしれません。しかし、ドバイではこれに上乗せがあるんです」
その秘密は、チップ。海外では日本よりもチップを渡す文化が浸透しています。
「チップが基本給の2〜3倍いただけますから、チップを入れて日本円で36万円〜40万円程度が月の収入となります。さらに、ホテルでの仕事ということもあり3食提供付き。そして、寮も完備されています。そう考えれば、東京では実質月収40〜50万円程度になります」
こういった生活インフラが充実している仕事がある点も海外で働く利点のひとつと言えるでしょう。
◆ドバイは「日本よりも治安がよい」
海外移住の懸念として多くの人があげる点として治安があります。日本よりも治安が良い国はなかなかないと思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、ただ、勤務していた職場ではチップ制度がありました。
「ドバイは日本同等もしくは日本以上に治安がよいですね。あまりおすすめはできませんが、飲食店でトイレに行く際にカバンを置いたまま席を立っても盗まれませんね。ドバイは富裕層が集中しているので、結果として働く人の環境や治安も良好に保たれているのかもしれません」
「移住当初は環境の違いに戸惑うこともありましたが、いまは不動産業界に転職して、さらに年収があがりました(※取材当時)。最初は宗教や文化の違いに驚くかもしれませんが、私がいた環境では、お金も貯めやすい条件だったので、海外で挑戦を考えている人にもおすすめしたいです」
◆移住するも仕事が見つからない
もう一人、移住で成功した方のケースを紹介します。
成島さんの場合、日本に住んでいる時点で英語力がありました。が、すべての移住者が英語力を身につけたうえで移住しているわけではありません。
そんな語学力に不安がある人には小林隼也さん(20代男性)の移住の事例が参考になると思います。
小林さんは語学力は高校卒業レベルと決して高くはなく、ワーキングホリデーを活用してカナダ・バンクーバーでの生活を開始しました。そんな小林さんは移住してすぐに困難に直面します。
「思い切ってバンクーバーに移住したものの、何も考えていなかったので生活の糧となる仕事を見つけられなかったんです。カナダでも大手の求人サイトでも探しましたが、100件以上応募してもほとんど返事が来ない状態。数か月仕事が見つからず、なにもせずに帰国することも選択肢としてよぎりました」
しかし、ここから小林さんは行動を起こします。
◆驚きの圧倒的な好待遇。皿洗いで月給45万円
求人サイトで仕事を見つけるのは難しいと判断した小林さん。以降はネットに頼らず、自分の足で仕事探しをはじめます。
「企業や店舗に直接レジュメ(履歴書)を持っていき、自分を雇ってほしいとアポなし訪問しました。突拍子もない行動に思えるかもしれませんが、実はこの方法はバンクーバーでは仕事を探す時の手段として定着していたんです」
体当たり的な職探しの結果、小林さんは無事飲食店での仕事を見つけることに成功。任されたのはディッシュウォッシャー、主に皿洗いをメインとした仕事でした。
そして小林さんはその仕事の給与に驚きます。
「皿洗いというとあまり賃金が高くない印象を持たれるかもしれませんが、日本の新卒の倍以上、45万円程度の月給でした。さらに、日本では当たり前となっている残業もまったくないことに驚きました。オフの日にはバンクーバーの大自然の中でのんびり過ごしています」
「日本よりも貯金ができていますね。月に1000ドルから2000ドル(日本円で約10万5000円から21万円)は貯金できています」
◆貯まったドルで新たな事業をスタート
ただし、小林さんはワーキングホリデーでの滞在であったため、期限は1年と定められていました。
しかし、カナダの環境、高待遇が気に入った小林さんは次の一手を打っています。
「お金が貯まったこともあり、仕事の合間で準備をしてアパレルショップを開業しました。カナダのヴィンテージアイテムを仕入れて日本で売るというビジネスです。一旦は日本に戻ることにはなりますが、今後もカナダを拠点とするための布石を打つことができました。
正直、カナダに来た当初は英語力もなく、意思疎通も危ういレベルでした。しかし、私のような立場でも仕事を探せましたし、1年間で語学力は格段に向上し、現地でのコネクションを築き、新たな事業も始められるようになりました。もしいま海外移住に迷っている人がいるならば語学力がほとんどいらない皿洗いからでもよいのでぜひカナダにきてほしいですね」
海外移住と聞けば、語学力や金銭面などさまざまな不安要素から諦める人もいるかもしれません。しかし、小林さんのようにワーキングホリデーを利用して期限付きで移住しても成功を収めることは決して不可能ではないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
<TEXT/宮脇咲(みやわき・さき)>
【宮脇咲(みやわき・さき)】
海外不動産投資家・海外移住コンサルタント。1997年宮崎県生まれ。UAEドバイ在住。お茶の水女子大学在学時に、暗号資産投資で大きな利益を出し、分散投資の一つとして不動産投資をスタートする。大学3年生の21歳から国内不動産投資を始め、国内3棟18室を保有し利回り20%以上の物件を運営し、その後いくつかの物件を売却。22歳で海外不動産投資へ進出し、ジョージア、トルコ(イスタンブール)、アラブ首長国連邦(ドバイ)に不動産を所有。現在は、個人投資家として資産運用をしながら、富裕層、経営者、投資家への資産コンサルティングのほか、海外移住のアドバイザーとしても活動。チャンネル登録者数約6万人のYoutubeチャンネル「さきの海外不動産しか勝たん」を運営。