母の金で続けたAKB推し活「オレの推しに寄生するな」 別メンバーを一方的に憎んだ男の末路

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2024年11月09日 09:50  弁護士ドットコム

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アイドルグループ・AKB48のメンバーに対して、インターネット掲示板などに「襲撃、惨殺、虐殺します」、「両親も皆殺し」と書き込んだなどして、脅迫罪に問われていた20代男性に対して、大阪地裁は2024年11月6日、懲役6月・執行猶予3年(求刑:懲役6月)の判決を下した。


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長く同グループのファンクラブメンバーとして活動していた被告人だったが、振る舞いなどが問題視され、度々ファンクラブを退会させられていたことも発覚。今回の犯行への呆れる言い分には、検察官からたびたび「その考えが間違っているのわかりますか」などと問いただされる場面があった。(裁判ライター・普通)



●「自身の推しの人気に寄生している」と悪感情

スーツを着用して出廷した被告人はすらりとした体格が特徴的で、顔の半分がマスクで覆われているものの、整った顔立ちのように見えた。ただ、被告人席でも、証言台でも常に腕組みをしており、独特な雰囲気をまとっていた。



起訴状によると、被告人はインターネット掲示板にて前記書き込みをしたほか、SNSのダイレクトメッセージ機能を用いて被害者本人に対して「お前のことを殺しに行きます」などと送信した。被告人はいずれの事実も認めた。



検察官の冒頭陳述などによると、被告人は高校卒業後、定職につかず母親と暮らしていた。被告人は被害者とは異なる同グループのメンバーAのファンだった。供述調書によると、「被害者は、Aに寄生して楽に人気を取ろうとしていた嫌いだった」など、被害者への悪感情を明らかにしていた。



事件は被害者自らが所属先に相談したことと、掲示板の他のユーザーが「悪質過ぎるので逮捕してください」と、大阪府警に通報したことにより発覚した。



●推し活費用は母親が負担していた

弁護側の書証として、被告人がメンタルクリニックに通っている領収書と、反省文が取り調べられた。反省文には、被害者への謝罪の言葉の他に、「矛先をなんでも向けてしまった」、「被害者も一人の人間で敵でも味方でもない」などと書かれていた。



情状証人として出廷した被告人の母親は、幼少期からの被告人の様子を証言した。家族に対しても周囲に対しても、困ったことは先頭に立って助ける性格であり、やさしく真面目などと評した。



弁護人「本件は、やさしいとは逆の行動をとっているようですが」
母 親「混乱しています。指導に不足があったのかと」



弁護人「不足というのは」
母 親「私なりに一生懸命しておりますが、足りなかったのかと思います」



最近では、被告人からアイドルを追いかけるための費用を要求されることで、家庭内で衝突が発生していた。しかし、その対応としては「希望に応えられるようにしていた」という。今後は、母親だけでなく、親戚も協力して被告人の行動の監督と、就労施設に通うことのサポートを行うことを誓約した。



●自分が脅されても「やれるものならやってみろ」

被告人質問では、被害者に対する謝罪の言葉、自身が被った誹謗中傷等について供述していたものの、随所に自身の価値観が垣間見えた。



弁護人「惨殺とか襲撃と書かれた文言、客観的に見てどう思いますか」
被告人「大迷惑、恐いと思います」



弁護人「自分が書かれたら恐いと思いませんか」
被告人「私自身なら、やれるならやってみろと思いますね」



その背景として、被告人自身も掲示板にて多くの誹謗中傷を受けていた。中には「心斎橋で集団リンチして、道頓堀に落とす」などというのもあったという。しかし、これら誹謗中傷も、元は被告人が被害者に対する不満をファンクラブ内でぶつけていた結果だったようだ。



最終的な事件のきっかけは、被告人に投げかけられた誹謗中傷の中で、被告人の家族にまで言及したものがあったためだった。それへの反抗として、ファンの大切な人を傷つける書き込みをするという思いに至った。直接的な加害行動を行うつもりはなかったという。



弁護人「今後、推し活に関してはどう考えていますか」
被告人「費用を抑えながら。関西公演くらいなら」



弁護人「その費用は誰のお金ですか」
被告人「現時点では母ですが、今後はバイトなどで稼いでいきたい」



弁護人「今の段階で続けて問題ないと思ってますか」
被告人「今は続けるべきではないと思っています」



●誹謗中傷から抜けさなかったワケ「逃げたと言われるので」

検察官は事件に至るまでの被告人の考え方をたどるように確認していく。事件以前より、ファンクラブを退会させられ続けたことにも触れていた。



検察官「推し活の中でそれが問題と思えなかったのか」
被告人「やめるべきと思うが、理性でそう思えなかった」



検察官「あのような書き込みで、どうなるか想像できなかったのか」
被告人「未熟な私にはネットの恐さをまだ理解していなかった」



検察官「あなた自身も誹謗中傷されているのに、そういう場から抜け出す気はなかったの」
被告人「逃げたと言われるので」



今では反省のため、SNSをまったく見ていないと主張する被告人。しかし検察官は、現代社会においてネットに一切触れないというのも不可能として、SNSが悪いのでなく自身の特異な考え方にいかに向き合うかという点を繰り返し不安視していた。



懲役6月・執行猶予3年(求刑:懲役6月)の判決を、被告人はどう受け止めただろうか。



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