今季も予想外の出来事がたくさん起こったプロ野球。中でも特に球界をざわつかせた異変、珍現象、快挙の謎に野球評論家のお股ニキ氏が迫る!(全7回/第7回目)
* * *
今季のセ・リーグ最多セーブ投手に輝いた、来日8年目のライデル・マルティネス(中日)。その成績をよくよく見るとだいぶおかしな点が......。
今季60勝で最下位の中日において、マルティネスはキャリア最多60試合登板で2勝3敗43セーブ9ホールドポイント。単純に考えれば、ほぼすべての勝ち試合で投げたことになる。
「普通は強いチームほどセーブ機会が増えるもの。最下位球団でセーブ王が出るのは異例です。支配的だった外国人守護神といえば、2017年に日本新記録の54セーブを挙げたデニス・サファテ(ソフトバンク)が浮かびますが、あの年はチームが94勝しています。今季の中日で43セーブというのは稀有な成績といえるでしょう」
|
|
ではなぜ、これほど突出した成績を残せたのか?
「まずは投球内容の素晴らしさに尽きます。登板過多で多少球威が落ちている印象の試合もありましたが、モーションのタイミングを変え、スプリットだけでなくスラッターやカーブなど多彩な球種で抑えていました。
この冷静さ、球種の豊富さはリバン・モイネロ(ソフトバンク)と同じで、マルティネスも先発転向しても成功するタイプ。MLBでも中継ぎですぐに活躍できる力があります」
また、特定の選手に依存する立浪采配も、異質な数字につながった要因だ。
「今の時代、ひとりのクローザーに依存するのではなく、第2クローザーを配置して、35セーブと14セーブなど、うまく分け合う状態をキープするのがベスト。球界の宝を守るためにも、極端な依存采配は避けてほしいです」
|
|
今季で3年契約が切れるため、動向が注目されるマルティネス。中日は井上一樹新監督自ら会食に誘って説得に当たっているが、資金力のあるソフトバンク移籍が有力との報道もある。
ロベルト・オスナとマルティネスでダブルクローザーを形成すれば、ますますソフトバンクの強さに拍車がかかることになるが、果たして......。
文/オグマナオト 写真/時事通信社