ニシダ印刷製本は、オンデマンド印刷・ネット印刷サービスに関するアンケート調査の結果を11月7日に発表した。同調査は、2024年10月8日〜10月22日の期間、本を自主制作したことがある300人を対象に、クラウドソーシングサービスを用いて行われた。
自主制作した本のジャンルを聞いたところ、「漫画本、絵本」(109票)が最多となり、回答総数の1/3以上を占めた。続く2位、3位についても自身の撮影した写真や自分で描いたイラスト、自作の文学作品など、創作したものを手にとれるかたちで残しておくジャンルが挙がった。
そこで、本を自主制作したきっかけを尋ねたところ、真っ先にイメージされる「コミックマーケットや文学フリマなどへの出店」(33%)が最多ではあるものの、他の選択肢と大きく差がつかない結果に。3位の「出版社への売り込み(商業出版に向けた制作)」(30%)とあわせると、約2/3の人が何らかの形で自分自身の作品を世に広めたい、という目的で自主制作していることがわかる。
しかし一方で、残りの1/3の人の回答は「個人やグループ活動の思い出、知人への配布」(31%)と、あくまで活動の思い出や記念として印刷・製本しており、必ずしも作ったものを販売することにつなげているわけではないことも判明した。
初版分の印刷部数のもっとも多い回答は「101〜300部」(115票)で、それを超える部数は全体で13票と少なく、自主制作本の場合、目的を問わず300部以下で印刷する人が多い結果となった。
なお、「コミックマーケットや文学フリマなどへの出店」を目的とした人の回答に絞って印刷部数を見てみると、半数以上が50部以下と回答。即売会に出店して本を販売することを目的とする場合でも、たくさん作ってたくさん売る、という意気込みではなく、現実的に売り切ることができそうな部数に絞って作る人が多いという。
利用した印刷サービスランキングでは、1位に「しまうま出版」(64票)、2位に「冊子製本キング」「グラフィック」(62票)とつづいた。なお、印刷サービスのラインナップについては、「自主制作本 ネット印刷」で検索した結果の1ページ目に上がっていた企業(調査当時)+同社を対象にアンケートをとったものとなっている。
3位にランクインした「その他」(36票)の内訳として多かった回答は「プリントパック」(5票)、「ちょ古っ都製本工房」(4票)となり、やはり少部数の印刷に対応しているサービスが多く選ばれていた。
印刷業者を選ぶ際にもっとも重視するポイントを尋ねる質問では「コスト、費用」が90票で最多となったが、注目したいのは、僅差で二番手となった回答「要望に答えてくれるかどうか」(88票)だ。
個人で発注する以上、予算が限られておりコスト面を最重視することは当然といえる。しかしほぼ同数の人が「要望に答えてくれるかどうか」を業者選びのポイントとして挙げていた。
印刷といっても方法は無数にあり、「活版印刷でアナログな雰囲気に仕上げたい」や「箔押しで高級感のあるものに」「トレーシングペーパーに印刷したい」など、こだわればどこまでもこだわれるのが自主制作本だ。
インターネットを通じて誰でも簡単に作品を発表できる時代において、あえて自作の作品を本として形にする際には、「安く大量に販売するよりも、こだわりを持って作り、届けたい人に届くようにする」方が、個人で活動する多くのクリエイターに適したスタイルになってきているのではないかと同社は分析している。(松野千聖)