北海道とNTT東日本は11月1日、NTTグループが取り組む次世代通信技術「IOWN(アイオン)」の実証デモを、北海道大学内にあるスマート農業教育研究センター内で公開しました。
次世代通信技術となるIOWNとは
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想は、最先端の光技術を活用し、「低消費電力」「大容量・高品質」「低遅延」を実現することで、世界中の様々な社会課題の解決、革新的サービスを創出することを目指しています。
2030年度以降は、伝送容量は125倍、エンドエンド遅延は200分の1を目標性能としているそうです。
さらに、これまでの電力効率は100倍となり、スマホの充電は、年に一度でよくなるとも言われているそうです。
IOWNで時差のない「よさこい演舞」を披露
今回の開催場所と約1.7キロメートル離れた場所をオンラインでつなぎ、よさこいソーラン踊りを同時に演舞。従来のインターネット回線に比べるとIOWNでは遅延が少ないように見受けられました。
演舞を披露したYOSAKOIソーランチーム「SAPPOROこいこい」の方は、「タイムラグを感じません。遠隔地のメンバーとも踊りを合わせる練習ができそう。IOWNが実現したら、取り入れたい」と感想を話してくれました。
続いて、じゃんけんのあっちむいてほいを体験した鈴木直道知事は、「緊張感がありますね。距離はあるが自然に感じます」とコメント。
さらに、札幌のVR企画会社キシブルは、手術現場を臨場感たっぷりに体験しながら、手順等を研修できる様子を公開しました。
このVR遠隔教育・コミュニケーションは、医療現場の研修や企業研修、観光体験など、幅広い分野での社会課題の解決に活用できると考えられています。
IOWN普及の効果と北海道の未来予想
NTT東日本でIOWNを担当する、瀧野祐太さん(経営企画部 IOWN推進室 担当課長)と、沖杏奈さん(北海道支店 第一ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネスグループ 地域基盤ビジネス担当 担当課長)にお話をうかがいました。
――IOWNが地域の方々へもたらす効果を改めてお教えください。
瀧野さん :現在、急速に拡大している生成AI関連事業には、大量のデータを、低消費電力で伝送する通信技術が不可欠となっています。
IOWNは、これまでのインフラの限界を超えた高速大容量通信を可能にし、将来的には、省エネ性能も飛躍的に向上させる技術として、DXの推進や経済成長の実現につながると考えております。
――道内での実証実験など具体的な北海道での取り組みの予定についてお聞かせください。
沖さん :2024年12月に遠距離伝送・ビジネスユース編、2025年2月には道内企業と考えよう編を予定しており、北海道でのデジタル技術を活用した実証やサービス・ビジネス開発に資する取り組みとなるよう活用してまいります。
――道内企業や機関との連携について、お話しできる範囲で構想含めてお教えください。
沖さん :岩田地崎建設さんとは、大容量データファイル転送検証を行い、建設業界をはじめとする大容量データを扱う業種・業態の皆様にご体感いただき、新たなユースケースの創出を目指していきたいと考えております。
テレビ北海道さんとは、同社が開発したVMO(バーチャルマスターオペレーター)を活用し、リモートプロダクション実証を行う予定です。遠隔地の映像や音声を非圧縮でリアルタイムに伝送する技術は、放送業界だけでなく遠隔監視等の様々な活用が想定されています。
瀧野さん :地域の課題解決やイノベーションの創出に向けては、多様なパートナーの皆様との共創が不可欠であると考えておりますので、本実証デモを通してIOWNを体感いただき、新たなユースケースを創出できる場となるよう取り組んでいきます。
このほかにもIOWNは、予防医療、自動運転、スマート農業などにも役立つそうです。さらに、視覚・聴覚のみならず、触力覚もリアルタイムに伝送できるそうで、まさに時空を超えてリアル感たっぷりな対面がかなうかもしれません。
SF映画で観たことが、あと数年で実現されるのかと思うと、これからが楽しみですね。
しだまゆみ しだまゆみ 学生時代に編集プロダクションでアルバイトをして、そのまま就職。かすかに版下と写植の存在を知っている。2000年よりフリーライター/エディター。地元企業の広報や採用にも携わる。最近はソーシャルビジネスに関心あり。 この著者の記事一覧はこちら(しだまゆみ)