'88年にリリースされ、社会現象にもなった『ドラゴンクエスト3』のリメイク版が11月14日、発売される。そのゲームの登場人物をめぐる変更について、ファンたちの間で物議を醸して─。
「キャラクターを男女で区別するのではなく、ルックスAとルックスBに変わると聞きました。何それ、って思いませんか?」(『ドラクエ』ファン)
基準も“世界市場”に
どうやらLGBTQの人たちへの配慮からの変更らしいが、同ゲームのデザイナーである堀井雄二さんは、
「男女にして誰が文句を言うんだろう。わからない」
と、この改変に苦言を呈した。特定の人物に不快感を与えないという、ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)も、堀井さんの言葉のとおり行きすぎのような気もするが、
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「この“改変”が企業の自主判断なのか、変更せざるを得ない状況だったのかによって論点が変わってきます」
こう話すのは、表現の自由やポリコレなどについて詳しい、憲法学者で武蔵野美術大学教授の志田陽子さん。
「現在、日本のゲームは世界にどんどん売り出されています。なので、世界からどう見られるかをかなり意識していると思います。何年か前にも海外で販売する際に、格闘家同士が戦ったり、銃を撃ってゾンビを倒していくゲームなどは、当地の規制に引っかかるということで日本で発売されているものより表現をソフトにしたこともありました。
日本のファンに“この改変は認められない”という声があったとしても、市場としてこれから開拓していく世界市場の大きさを考えれば、企業としてはそこに基準を合わせることは十分あり得ます」(志田さん、以下同)
“イタチごっこ”の可能性は
今回の改変、見方を変えると「非常に進歩的なのでは」と、志田さんはこう続ける。
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「トランスジェンダー問題が取り沙汰されている今、“ルックスA、B”という無機質な言葉はベターな表現かなと思います。ルックスAで見た目は男だけど、内面の性別はLGBTQのどれでもいいじゃない、と考えられますよね。企業がそこまで考えたかどうかは、深読みしすぎなのかもしれませんが(笑)」
しかし企業にクレームを入れることが目的で、重箱の隅をつつくような人もいる。今回の“A、B”も、男性がなぜAで女性がBなのかと言ってくる人も出てくるかもしれない。まさにイタチごっこになることも考えられるが……。
「“自分が気に入らない”という気持ちをポリコレに反する、と結びつけて、激しい反対運動にしている人は確かにいます。ポリコレの基準が日本に定着するには、まだ時間が必要かもしれません」
日本でのトランスジェンダー問題に対する議論は、始まったばかりだ。
「アメリカやイギリスは長い時間をかけて、LGBTQの権利を獲得してきました。日本はその歴史を、この10年で一気に消化している状態。それでも人権の観点から、多様性重視の問題が視野に入ってきたことは大切なことです。
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今回のようにゲームで男女の表記について論議になることは、いいことじゃないかなと思います。大事なことは多様性の尊重であり、人間性を織り込んでもらえれば、存在を表す文字がAだろうがBであろうが、ささいなことじゃないですか」