きれいなお家で、まん丸おめめのキョトン顔で過ごすオス猫のなつは、控えめな性格ながらもマイペースな一面も併せ持つ、かわいいイケニャンです。安心した表情からは全く想像できない辛い過去がありました。
【写真】他の猫たちとゴミ部屋と化したアパートの一室で生き抜いていました
狭いアパートの一室で16匹以上の猫が過ごしていた
なつはかつて高知県内のとあるアパートで16匹以上の猫たちと一緒に過ごしていました。いわゆる多頭飼育崩壊で、部屋の借主はほとんど家に戻らず、電気・ガスなどのライフラインも止まっていました。部屋はゴミ屋敷と化しており、この中で仲間たちと一緒に行き場なく過ごしていました。
心ある近所の人や大屋さんたちがエサをあげてくれたため、なつはなんとか生き延びることができましたが、保護時、部屋の中には力尽きて亡くなった猫の死骸もありました。
他の猫にエサを取られても攻撃しない穏やかな性格
大家さんからの依頼を受け、なつを含む16匹の猫を保護することになったのが高知県の愛護団体、アニマルサポート高知家でした。
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団体メンバーが世話をすることになりましたが、なつはなかなか心を開かないシャイな性格でした。団体メンバーと目が合えば、すぐにどこかへ逃げていってしまったり、なんとか体に触れさせてくれてもなでようとすれば、逃げていってしまいます。
唯一、なつにとって落ち着いて過ごせる場所は、団体メンバーの家にあるハンモック。このハンモックの中に入り、他の猫たちが部屋中を走り回る様子を、いつも静かに眺めています。
もしかしたら、元いたあの狭いゴミ部屋の中で、飼い主からの世話はもちろん愛情を受けることなく、こんなふうに自分なりの居場所を作り他の猫たちの様子を見つめて過ごしていたのかもしれません。
そして、なつはエサを食べるのも一番最後。他の猫にエサを取られてしまうこともありましたが、それでもジッと我慢し攻撃を仕掛けることはありません。他の猫がお腹いっぱいになったところでようやく動き出し、自分のエサを静かに食べ始めるのでした。
里親さんに少しずつ心を開き始めた
そんなバックボーンと合わせて、その心情を想像すると切ない気持ちになりますが、ほどなくして吉報が届きました。「うちの家族になって欲しい」という里親希望者さんが現れたのです。
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ここまでの通り、なつが里親希望者さんに懐くかどうかはわからないものの、まずは一定期間のトライアルを実施。案の定、なつは里親希望者さんの家でも一週間ケージの中にこもりっぱなし。
この状態が続けば、譲渡は成立しないと思われましたが、しかし、二週間が経過した頃からケージの中から出始め、里親希望者さんにも少しずつ心を開き始めました。
「こんなに綺麗なお家、僕が暮らして良いのかニャ?」と言わんばかりのキョトン顔を浮かべつつも、マイペースに過ごすようになり正式譲渡が決定。この家で第二の猫生を送ることになりました。
なつの控えめでマイペースな性格は変わりませんが、心を開いたことでさまざまな表情を浮かべてくれるようにもなりました。元いた環境や元飼い主とはまるで違う、きれいなお家と優しい里親さんのもとで、なつがさらに自由で明るい生活を送ってくれると良いですね。
(まいどなニュース特約・松田 義人)
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