子育て後の生き方とは? 50歳、家族に主婦業・母親業を求められ「もう嫌だ!」と宣言したら

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2024年11月16日 22:11  All About

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一人で行動するのが好きなタイプとそうでないタイプがいる。大人になった子どもと夫が「母親」を求め続けることが、我慢ならない。そろそろ開放されて、自分一人で行動したいと伝えてみると……。
「ひとりになりたい」と思うことはあるだろうか。あるいは「ひとりでいるのが本当に寂しい」と孤独感を募らせたことはあるだろうか。

人によって、孤独感への耐性はかなり大きく異なるようだ。

ひとりになりたい私に「変だ」という夫

大学を出て就職、27歳で結婚したトミコさん(50歳)。当時としては早くもなく遅くもない結婚だったという。

「社内結婚で、相手は2歳年上。彼は都内に実家があり、私は地方出身のひとり暮らしでした。結婚後、私も仕事を続ける選択肢はあったんですが、もともとそんなにキャリア志向でもなかったから、まずは子どもがほしいなと思い退職しました」

願い通りにすぐに妊娠、28歳で長女を、31歳で長男を出産した。意外なほど子どもへの愛情が強いことに、自分でも驚いたという。子どもべったりの母親になるつもりはなかったのに、気づいたら「子どもを幼稚園にさえ行かせたくないほど一緒にいたかった」と笑う。

子どもたちは高校、大学と進んでいく。それと同時に、トミコさんも子離れしていった。子どもの成長が何よりうれしかったし、小さいときに思い切りかわいがって一緒にいたから、あとは社会へ出すだけだと気持ちが楽になっていったという。

「ところがうちの子たちは、なかなか親離れしてくれなかった」

親離れしてくれない子に本気で困惑する母親

トミコさんはため息をついた。通常、こういう言葉を吐く母親は、「やっぱり子どもにとって母親は特別なんだろうと思う」と少し晴れがましい表情で言うものだが、トミコさんは違っていた。本当に親から離れて、自立することを望んでいたのだ。

「私もすでにパートに出ていたし、せめて18歳になったら私を食事作りから解放してほしかった。毎日、食事を作ること、洗濯や掃除をすることに疲弊していました。下の子が大学に入ったとき、もう嫌だ、食事は作らない、家族全員がそろった日だけ作ると宣言したんです」

それ以来、トミコさんはパート仲間と食事をしたり、早いときは惣菜を買って帰ってひとりでさっさと夕飯をすませたりした。だが夫も子どもも納得していなかった。

「夫と子どもたちは結託して、『お母さんのごはんが食べたい。帰宅が遅くなってもお母さんのごはんがあれば、自分たちで温め直して食べたい』と宣言し返してきたんです」

平日のみ週4回ということで折り合い、トミコさんはしかたなく食事作りを続けることになった。

「一人になりたい」という気持ち

ただ、そのころからトミコさんの心の中に「一人になりたい」という気持ちが大きくなっていった。

「大学入学から結婚するまでの10年近く、一人で暮らしていましたが、私、やっぱりあの生活が好きだったなと思うようになって。

家族が嫌なわけじゃないんです。でももうみんな大人だから、別に一緒に暮らさなくてもいいんじゃないかなと思って。夫にも言ってみたことがあるんですが、家族が大好きな夫は『いつかはオレたち二人だけになるんだから、今、無理に子どもたちを追い出す必要もないし、わざわざ一人になることもないでしょ』と、なんだか見当違いの返事が戻ってきました」

子どもたちを早く自立させたいと思っていたのは、自分自身がまた「一人暮らし」をしたいということだったのだと、トミコさんは気づいた。

「誰にも縛られない、早く帰ろうと思わなくてもいい、食べたくない時は夕飯を食べなくてもいい。そんな生活がしたい。そう思ったら、なんだか今の生活が窮屈でたまらなくなりました」

もともと一人でいるのが好きだし、映画や芝居も一人で行くというトミコさん。一人で外食をするのも平気だし、一人で行動するのはまったく苦痛ではなく、むしろ自由を楽しめるタイプなのだろう。

メンタルを回復させるための一人旅

「家を出ていくとお金もかかる。だけど自由を求める気持ちがどんどん大きくなって、昨年秋に、思い立って一人旅をしました。国内ですけど、4日くらいひとりで京都へ行って。家族には一人を楽しみたいから連絡しないでと言っておいたら、尊重してもらえたのでうれしかった。ずっと一人で気ままな旅をしたら、かなりメンタルが回復したんです」

家族には「変な人だね」と言われたものの、年に2回くらいは一人旅をしようと彼女は心に決めたそうだ。

娘はすでに就職したが、自宅から会社に通っている。家を出たくないのかなとトミコさんは不思議に思うが、娘は家族と離れるのは嫌だと言うそうだ。

「こちらも達観して、好きなようにすればいいよと言っています。その代わり、私は春と秋には旅に出る。この秋は海外です。夫は心配だからダメと言ったけど、もうそろそろ好きなようにさせてほしいと訴えました。私は私の意志で行くのだから、誰にも止める権利はないとまで言ってしまった。家族の心配はありがたいけど、家族によって私の気持ちを阻止されたくない」

いい年して反抗期みたいなことを言ってますねとトミコさんは笑った。そうなのかもしれない。長年、主婦業と母親業を一生懸命やってきた人ほど、その状況に反抗し、自らを取り戻したい気持ちがあるのではないだろうか。半世紀生きてきて、もう一度、自分だけの時間、自分だけの気持ちに忠実に行動する自由を、彼女は求めているのだろう。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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