部下が相談する気をなくす、上司の無神経な「たった一言」

0

2024年11月18日 08:31  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

報連相する気をなくさせる、上司の「一言」とは

 「報連相が足りない」と嘆く上司は多い。しかし、その原因は意外なところにあるかもしれない。部下が報連相しようとしたときの上司の何気ない一言が、部下の心を萎縮させているのだ。


【画像】効果的な報連相とは?(イメージ)


 組織にとって報連相は重要だ。しかし、部下からすれば「報連相したいタイミング」と「上司が受け入れられるタイミング」がなかなか合わないと、徐々に報連相をする気がなくなっていくものだ。


 私は組織内コミュニケーションで最も大事な要素が「報連相」だと思っている。その理由もしっかり解説するので、人材育成に悩む経営者、マネジャーは、ぜひ最後まで読んでもらいたい。


●上司の無意識な一言とは?


 部下が報連相をしようとしたとき、あなたは次のような言葉を返したことがないだろうか?


 「今、ちょっと忙しいんだけど」


 いったん聞いてから、長くなりそうであればまだしも、最初から拒絶すべきではない。さらに、こんなことも言ってしまったとする。


 「何でもかんでも報連相すればいいってもんじゃないから」


 部下はよかれと思って報連相しているのに、このように言われたら一気に報連相する気を失うだろう。


 「ちょうど来週会議があるから、その時でいい?」


 私が最も気になる上司の切り返しがコレだ。「来週の会議でいい?」という言葉は、致命的だ。なぜ来週の会議まで待たなければならないのか? いま聞いてくれればいいじゃないかと思うはずだ。


 しかも会議の議題が多いと後回しにされ、さらに「ごめんごめん、今回は時間がなくて。来月の会議でいい?」と先送りされることも多い。


 タイパを重視する部下にとって、この「待たされ感」は耐えがたい。しかも、その間に問題が大きくなることもある。結果として部下は「報連相するだけムダだ」と思い込み、次第に報連相をしなくなっていく。


 一度そう思い込んだ部下の心を、もとに戻すのは至難の業だ。上司は自分の言葉が部下に与える影響の大きさを、もっと考えるべきである。


●「報連相」こそが最強のコミュニケーションツール


 私は報連相こそが、組織内コミュニケーションを活性化するうえで最も重要なツールだと考えている。報連相さえ極めれば、上司と部下との関係が崩れることはないだろう。


 「え? 報連相? 今どき?」


 このように受け止めた人も、多いのではないか。「報連相を徹底するだけで職場の人間関係が良好になるのなら、誰も苦労しない!」と思う人もいるはずだ。しかしこれは紛れもない事実だ。


 笑顔であいさつをすることも、部下からのメールに即レスすることも、会議資料の提出期限を守ることも、全て普通のことだ。誰もそんな秘訣を知っても心が躍らないだろう。しかし、これらをおろそかにしている人も実に多いのだ。


 従って、報連相についてもこの機会にしっかり見直していこう。20年近く現場に入って支援をしてきたが、報連相が徹底されている企業はとても生産性が高くなる。


 それでは、そもそも本当に意味のある「報連相」とは何かについて触れたい。


●効果的な報連相の順番


 報連相とは、報告・連絡・相談の略だ。しかし覚えるときは、次の順番を守り、実践するようにしよう。


・連絡:事実や情報を関係者に伝えること(発生型)


・報告:進捗や結果を関係者に伝えること(設定型)


・相談:迷ったときにアドバイスやヒントをもらおうとすること(設定型)


 それではまず「連絡」について簡単に解説しよう。報連相の中で、最も心理ハードルが低く、絶対に欠かせないのが「連絡」だ。


 「来週の月曜日に緊急の朝礼を行うと、メンバーに連絡しておいて」


 「お客さまに9時半には到着すると、連絡してくれないか」


 このように上司から言われて連絡を怠ったら、間違いなく部下は叱られる。葛藤するようなことではないし、誰だってできるわけだから、ついつい連絡を忘れてしまうような人は信頼されない。


 これは上司もそうだ。


・メールはいつ返信してくれるのか


・次回の打ち合わせはどんな内容になるのか


・課長会議で決まったことは何なのか


 こういった基本的なことを何も連絡しない上司は、部下から信頼されない。「そのうち連絡するから」と言っておいて、なしのつぶての上司がいる。部下には「連絡がない!」と叱るくせに、自分は連絡を怠るのだ。ひどい例は、あとで発覚することだ。


 たまたま部長と話をしているときに、次のような会話になったらどうだろう。


 「来月、大事なイベントがあるのに、そんなのんきなことやっていていいのか? 課長から聞いていないのか?」


 「え? 来月にイベントがあるんですか? 課長からは何も連絡を受けていませんが


 「なんだと?」


 おそらく部下は「いつも課長は大事なことを連絡してくれない」とレッテルを貼るはずだ。こういった基本的なことを連絡せずにいたら「減点」されるに決まっている。


●正しい報告をするための2つのポイント


 次に報告だ。


 連絡と異なり、報告するときは、自らが設定しなければならない。進捗はもちろん「変化」「結果」も意識することだ。上司はいつも気にしていることだろう。


 「この商談はどうなってるんだ? ちゃんと進捗を報告しろよ」「あの研修は終わったのか? 終わったのならキチンと結果の報告をしなさい」と、報告を怠る部下に小言を言う。しかし報告を怠る上司も多いのだ。


進捗報告と結果報告を意識しよう


 「来週から4日間、組織風土診断のアンケートが始まる。必ず提出期限を守るように」


 という連絡があったとしよう。それでは、こうしたときに望ましい報告とは?


 「組織風土診断のアンケートを専門の企業に分析してもらっている。予想以上に時間がかかっているようだ。結果は10日後に出ると思う」


 「先日行った組織風土診断のアンケートだが、結果はさらに3日ほど遅れるようだ」


 これらが「進捗報告」である。報告は状況に変化があるたびにしよう。次に「結果報告」はこうだ。


 「3日遅れると伝えたが、予定通りに分析結果が出るようだ。結果が出たら、全社員に開示する」


 これが結果報告である。このように、報告には主に「進捗」と「結果」の報告がある。部下から上司はもちろんのこと、上司から部下に対してもまめに報告すべきである。


 「あれって、どうなったんですか?」と部下から質問されるようでは、人間関係を良好に保つことはできない。


●相談は相手への「報酬」と考えよ!


 そして最後が相談だ。


 相談することがなくても、相談しよう。とくに上司に対しては「報酬」と捉えるべきだ。上司は部下から相談されるとうれしいものだ。相手と良好な関係を築くためと考えて、積極的に相談しにいく。


 これは上司から部下に対してもそうだ。部下に対しては「報酬」にはならないが、関係を築き、維持するのにとても役立つ。


 「オンライン会議のやり方、とても上手だよね? コツがあったら教えてほしいんだけど」


 「SNSでこんな意見を見つけたんだけど、君はどう思う?」


 こんな他愛もない相談でいいのだ。真剣に問題解決しようとせず、会話のきっかけ作りに使えると受け止めたらいい。


●全方位で「報連相の鬼」になれ!


 私は自分に対しても、部下に対しても、クライアント企業の営業にも「報連相の鬼になれ!」と伝えている。上司や部下に対してはもちろんのこと、お客さまに対しても「報連相の鬼」になってコミュニケーションをとるのだ。


 世の中には、いろいろな「話し方」「伝え方」「コミュニケーション」のテクニックが紹介されているが、私は「報連相」が基本だと思っている。


 どんなに口下手でも、聞き上手じゃなくても、報連相さえしっかりしていれば、人間関係を悪くなることはない。たかが報連相、されど報連相だ。意外とみんなできていないので、「報連相の鬼」になるだけで、大きな強みを手に入れられるものと受け止めたい。


●著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)


 企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。



    前日のランキングへ

    ニュース設定