施行前でも「コイルガン所持」で逮捕? 改正銃刀法を整理する

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2024年11月20日 15:02  ITmedia NEWS

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一般的な「コイルガン」

 電磁石の磁力を使って弾丸を発射する「コイルガン」(電磁石銃)を所持したとして、栃木県の29歳男性が逮捕されたとNHKや時事通信などが報じている。しかし、コイルガンの所持を違法とする改正銃刀法は2024年6月に公布されたものの施行前で、効力はまだない。にもかかわらず逮捕とはどういうことだろうか。


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●改正銃刀法で何が変わったのか


 改正された銃刀法(正式名称は銃砲刀剣類所持等取締法)は、自作拳銃で安倍晋三元総理を銃撃した事件や、長野県で起きたハーフライフル銃による殺人事件を受け、銃の悪用防止策を強化したもの。


 中でも今回の事件に関わる部分では、従来「装薬銃砲」(火薬式の銃や砲)と「空気銃」(エアガン)を合わせて「銃砲」と定義していたところに、新たにコイルガンが追加された。つまり、今まではコイルガンは規制対象ではなかった。


 改正法のもう一つの大きなトピックは「あおり・唆し(そそのかし)罪」の新設だ。これはざっくり言えば「拳銃などの不法所持を公然とあおったり唆したりする行為」を罰するもので、警察庁は例として


・インターネット上で、拳銃の自作方法を解説した動画を投稿し、不法所持を呼びかける


・不特定または多数の人が見ることのできるSNSで、「拳銃を販売します」などと言い、価格・売主の連絡先を投稿する


などの行為が犯罪に問われる可能性がある、としている。


 また、改正銃刀法の中であおり・唆し罪のみ7月に施行済みとなっている。


●容疑者は何の容疑で捕まったのか


 「コイルガン所持の疑いで逮捕」との報道もあるが、コイルガン所持を違法とする改正銃刀法は未施行であり、容疑者が逮捕された11月18日時点で違法ではない。


 ITmedia NEWSがこの事件の担当である警視庁に問い合わせたところ、容疑は「10月5日、被疑者方において回転弾倉式拳銃1丁を所持したもの」という。少なくとも法的観点では「コイルガン所持」が逮捕容疑ではなさそうだが、コイルガンが回転弾倉式拳銃の機能も持っていたのかは明らかでない。


 報道写真で出ているコイルガンのような構造の銃と、容疑にある「回転弾倉式拳銃」が同一のものかどうかは「確認と回答に時間がかかる」(警視庁)として直ちに答えは得られなかった。


●なぜネット民の間で話題になっているのか


 いままでコイルガンの所持や発射は合法かつ、一般的な電子工作用のパーツから製作可能だったこともあり、ニコニコ動画などに製作方法や発射時の様子が上がっていた(今もある)。


 合法である(かつ人を傷つけたりしない)限りは問題はなく、こうした「ちょっと危ない」ジャンルは一部の若年層の知的好奇心を刺激する。筆者が取材してきた中でも、現在はモノづくりで活躍している人で「コイルガンから電子工作を始めた」という人もいる。


 このような背景からコイルガンはネット上で一定の知名度を得ていた。


 NHKも「容疑者は製造する様子を写した動画を動画配信サイトで公開していた」と報じており、容疑者はネット上で活動していた人のようだ。


●見せしめではないか


 施行前にあえてコイルガンの情報を出したのは見せしめではないか、という意見もネット上では散見される。


 警察庁をはじめとする全国の都道府県警察は現在、コイルガン所持違法化の施行に向け、コイルガンの回収も行っている。施行日から6カ月以内は移行期間として、措置を行えば所持し続けられるとしているが、措置がない場合は不法所持となる。この周知のためだったのでは、という見方もある。


 容疑の対象となる銃の詳細や報道発表の目的について、警視庁から回答があり次第追記する。


●「レールガン」とは違うのか


 コイルガンとともに、電力で弾丸を発射する機構として知られるのが「レールガン」だ。最近も、防衛装備庁が巨大なレールガンの開発を続けているとして話題になっている。


 レールガンとコイルガンはともに電気を使って弾丸を発射するが、推力の得方が異なる。


 コイルガンは、コイルに電流を流して電磁石とすることで、鉄など磁性体の金属弾丸を引き付け、その勢いで発射するものだ。


 一方のレールガンは、磁力ではなくローレンツ力を使う。「フレミングの左手の法則」といえば思い出す人も多いと思うが、「電流が流れている導体に磁場をかけると、電流と磁場の直角方向に対して力が発生する」というものだ。改正銃刀法では電磁石銃の定義を「電磁石の磁力により金属性弾丸を発射する機能を有する銃のうち……」としているため、レールガンは改正銃刀法上の「電磁石銃」には当たらないとみられる。



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