闇バイトに応募したあと連絡を絶っていた30代男性の住宅敷地に侵入したとして、17歳の少年ら2人が11月15日、建造物侵入罪の疑いで神奈川県警に逮捕されました。
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NHKなどによると、30代男性は、過去に闇バイトに応募。特殊詐欺に関わるよう指示され、報酬として数万円の前金を受け取ったそうです。しかしその後、指示役と連絡を絶っていたようです。
警察は、少年らが報酬を取り返そうとして、男性の住宅におしかけたとみて捜査を進めているようです。闇バイトによる強盗などが相次ぐ中、今回の事件は注目を集めています。
ここで疑問ですが、闇バイトの報酬として受け取ったお金は、闇バイトを実行しなければ返さなければならないのでしょうか。また、いったん犯罪に関わってしまった場合、取り返しや復讐をされないようにするにはどうすればよいでしょうか。
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民法上、「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」とされています。(民法708条本文。「不法原因給付」といいます)
今回の事件では、特殊詐欺という犯罪行為は当然違法です。したがって、犯罪の依頼者は、給付した数万円を返還するよう求めることはできません。
この数万円は男性のものとなり、返還する必要はありません。
なお、もし仮に30代男性が闇バイトのメンバーとして犯罪に加担していれば、報酬は「没収」の対象となりえます(刑法19条1項3号)。
たとえば、現実に詐欺行為やそれに密接に関連する行為をおこない、詐欺の具体的な危険が生じたあとに、犯罪組織との連絡を絶っているのであれば、詐欺罪の実行の着手(刑法43条本文)が認められ、詐欺未遂罪(刑法250条、246条1項)が成立します。
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この場合には、報酬として受け取ったお金は没収される可能性があります。
闇バイト関連のニュースでは、「いったん関わってしまうと、あとで家に来られるのを恐れて、抜け出すことができなくなった」という話をよく聞きます。
今回の事件でも、実際に取り返しに来たとみられますが、取り返しなどを防ぐためにできることはあるでしょうか。
今年の10月18日、警察庁の幹部が、Xで「警察は相談を受けたあなたやあなたの家族を確実に保護します。安心して、そして勇気を持って、今すぐ引き返してください」と呼びかけをしました。
警察庁幹部がこのように呼びかけることは異例であり、警察が犯罪組織を撲滅しようとする強い決意を持っていることがうかがえます。
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実際に、この呼びかけのあと、闇バイトを抜けようとして警察に相談して、保護される事例が相次いでいるといいます(日テレNEWSNNN2024年11月21日配信記事より)。
今回のケースのように、前金を受け取ってしまったような場合でも、すぐに警察に通報し、保護を求めるべきでしょう。
(弁護士ドットコムニュース編集部・弁護士/小倉匡洋)
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