Q. 第六感とは、生まれもった特殊な超能力ですか?
Q. 「勘が鋭く、人の気持ちをくみ取ったり、何かをひらめいたりするのが得意な友人がいます。いわゆる『第六感』が優れている人だと思うのですが、脳科学的に『第六感』というものは存在するのでしょうか? 生まれもった、何か特殊な超能力と考えるべきですか?」A. 「理屈では説明しがたいもの」への名称ですが、超能力ではありません
私たち人間は、理解できないことがあると不安を感じます。そして、不安を解消するために、科学的に説明できないことにも名前をつけます。名前をつけるだけでも、何かしらの存在が確認できた気持ちになり、不安が軽減できるからです。典型的な例は「UFO」です。空に浮かぶ不可思議な物体を見たとしたら、少なからぬ人が「UFOだ!」と思うのではないでしょうか。何なのかが全く分からないままでは、気持ちが落ち着かず、不安が増します。しかし、とりあえず「UFOらしきものを見た」と結論づけてしまえば、不安感が少し解消します。
ちなみに、UFOは「未確認飛行物体(=Unidentified Flying Object)」の省略形なので、実際には何も判明していないわけです。それでも一般的に知られている「UFO」という言葉に当てはめてしまえば、なぜか「ああ、UFOか」と納得した気分になれるのが、人間の心理です。
別の例として、「マイナスイオン」という言葉も挙げられます。森林の空気を測定しても、「マイナスイオン」などというものは検出されません。それでも、森の中を散歩していてすがすがしい気持ちになり、「マイナスイオンがたっぷりで、癒された!」と感じる人もいるでしょう。
これも、「空気中にありそうな、何か癒してくれる物質」の漠然としたイメージに対して、「マイナスイオン」という言葉が定着しているからです。
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動物がもつ基本的な感覚は、「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」の5種類です。しかし、それらでは説明が難しい「心の動き」があります。これに対し、英語で「sixth sense」という言葉が作られました。これを和訳した言葉が「第六感」です。第六感という言葉は、「虫の知らせ」、さらには「霊感」のようなものとして使われることもありますが、多くの場合は、知的活動や芸術などにおける「ひらめき」や「直感」のようなものを指して使われます。
こうしたいわゆる「第六感」がはたらくときの脳の状態を科学的に解析してみると、五感では説明ができなくても、何か霊的で特殊なもののはたらきではなさそうだと分かります。科学的な解析では、いわゆる「第六感」に優れている人の脳は、より物事を敏感に察知し、さまざまな情報を捉えていたのです。脳のそうした反応は、「経験値の高さ」から説明できます。
つまり、多くの人が「第六感」と分類する能力は、偶然や生まれつきの超能力ではなさそうです。「ひらめき」や「直感」といわれる能力は、何もないところから漠然と生まれる能力というより、脳科学的には、豊富な経験や洞察力の高さに裏付けられているものだと考えられます。
阿部 和穂プロフィール
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
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