11月13日、警視庁五日市署は、八王子市に住む貞安瑠希(さだやす・るき)容疑者(29)を詐欺未遂の疑いで逮捕した。貞安容疑者は7月6日、あきる野市の80代女性宅を訪ねていた。
「屋根の土台の木が腐っている。取り換えないと雨漏りする」
そう言って、同月8日に屋根垂木(たるき)工事の契約を結んだ。工事代金は52万円。
しかし、同8日の午前中、別の近隣住民が「リフォーム業者を名乗る不審な人物が家に来た」と110番通報。周辺を警戒していた署員が貞安容疑者を発見。
リフォーム会社の名刺を持参
「職務質問をしたところ、被害者女性の契約が判明。警察の助言で被害者女性は契約を解除しました。専門家が調べると、屋根は腐っておらず、工事の必要はありませんでした」(全国紙社会部記者)
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貞安容疑者は警察の取り調べに対して、
「弁護士が来てから話します」
と供述しているという。
今回の“リフォーム詐欺”は未然に防がれたが、貞安容疑者とは、どんな人物なのか。
八王子の自宅は、6階建て、築40年の商業ビル。私鉄の駅から近く、別フロアにはクリニックや会社が入っている。
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「以前のビルオーナーが住んでいた2フロアがリフォームされて、半年前くらいに引っ越して来たようですが、住んでいる人の顔は見たことがないし、何人で暮らしているのかもわかりませんね」(同じビルに勤務する関係者)
貞安容疑者の自宅は、2フロアが中でつながっており、間取は4LDKほど。家賃は月額15万円弱。1人で住むには広すぎるように思える。インターホンを押したが応答はなく、室内からは小型犬らしき鳴き声が聞こえた。
貞安容疑者は、神奈川県横浜市に本社を置くリフォーム会社の名刺を持って、被害者女性宅の周辺を訪ねていた。肩書は《東京支店 支店長 現場責任者》。東京支店のある新宿の住所に行ってみると、ビルの案内板にリフォーム会社の名前はない。そこで、ビルに入っていた会社に聞いてみると、
「うちは企業に住所の名義貸しをしている会社です。そのリフォーム会社はお客さまですから、お話しすることはできません。直接、そちらから電話してください」
とのこと。そこで貞安容疑者の名刺にあった東京支店に電話すると自動音声になり、用件を録音するように案内された。横浜本社の電話も同じシステムだった。用件を吹き込み、待つこと15分。リフォーム会社の代表取締役から折り返しの電話がきた。
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“いつか、しょっぴいてやるからな”
「彼は断じて当社の社員ではありません。彼が勝手にうちの名刺を作って、東京支店長を名乗ってやったことなんです。だから、当社による会社ぐるみの犯行ということは、いっさいありません」
代表取締役の男性は、濡れ衣だと主張した。それどころか、今回の事件で被害を被っているという。
「事件が報道されて、ネットでは当社の名前が晒されて、現実に業務妨害になっているわけですから、今は弁護士と法的措置を考えております」(リフォーム会社の代表取締役、以下同)
しかしながら、貞安容疑者とは見ず知らずの間柄ではなかった。
「彼は2年程前に1年間ほど、社員ではなく、うちの下請けの塗装職人として働いていたことがあります。いわゆる“1人親方”で、うちの仕事を引き受けていました。仕事ぶりは悪くなかったし、腕のいい職人でしたよ。職人仲間もいて、悪いことをするような人柄ではなかったと思うのですが……」
ただ、気になる点もあったという。
「彼はもともと、あきる野市が地元で、以前に警察から“いつか、しょっぴいてやるからな”と言われていたそうです。もしかしたら、彼を逮捕することで、いま全国で起きている詐欺や強盗でつながっている仲間たちとのつながりを警察が探ろうとしているのかもしれませんが……」
たしかに、貞安容疑者は氏名不詳の共謀者と今回の事件を起こしたと警察は発表している。腕のいい職人がなぜ、嘘で金をだまし取る詐欺師に落ちてしまったのか――。