前回からの続き。私はサチエ(55歳)です。子どもたちはみんな成人して、実家を離れました。いまはパート勤めをしながら、お父さんとはつかず離れず、ちょうどよい距離を保ちながら生活しています。なにも変わらない平凡な日々を送っている私たちですが、そろそろ長男ヒロアキが結婚をするのではないかと楽しみにしています。あーあ。早く孫の顔がみたいなぁ。職場や街中でみかける子どもが、かわいくてかわいくて仕方がないんです。
ヒロアキには長年お付き合いをしているミツキさんという女性がいます。ヒロアキももう30代。いい加減結婚をしてもいい頃なのですが……。なかなかおめでたいニュースを聞くことができません。ちなみに次男は女っ気ナシなので、そういう意味でもヒロアキに期待を寄せてしまいます。
とっつきにくい感じもなく、話し上手で気配り上手。その後何度も会食し、すっかりミツキさんと打ち解けた私たち。私とお父さんの誕生日には毎年、ミツキさんからお花やお酒が送られてくるようになったのでした。しかし、ある日ヒロアキから「話がある」といわれ、嬉しいニュースかと期待していたら……。
ヒロアキよりもずいぶん年下の彼女。第一印象はまだまだ大学生、子どもといった感じです。かわいらしい印象はありますが、突然あらわれたこの子を、お嫁さんとして受け入れるなんて……。
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私たちは、ミツキさんがヒロアキのお嫁さんになると信じていました。うちのバカ息子はなんてことをしたのでしょう……。
シホさんもかわいらしい素敵な女性なんだと思います。実際に話をすると、とってもいい子なのが伝わってきます。しかし私たちは、ミツキさんがお嫁さんになることを諦めきれず、シホさんを受け入れることができないでいたのです。
そんな気持ちのままでの流産。絶望と共に押し寄せてきた感情は「あと5日、流産が早ければシホさんとなんて結婚しなかったのに……」という最低なものでした。
【第5話】へ続く。
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