難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者から依頼を受け、薬物を投与して患者を殺害するなどしたとして、嘱託殺人と殺人の罪に問われた医師大久保愉一被告(46)の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。長井秀典裁判長は、懲役18年(求刑懲役23年)とした一審京都地裁の裁判員裁判判決を支持し、無罪を主張した弁護側控訴を棄却した。
弁護側は一審に続き、患者の選択した「穏やかな死」を実現するための行為で、被告の刑事責任を問うことは、憲法が定める幸福追求権に反すると主張。しかし、長井裁判長は被告が実際に患者を診察するなどした形跡はないと指摘した上で、真摯(しんし)な行為とは認められず「社会的相当性を認める余地はない」と述べ、退けた。
判決によると、大久保被告は2019年11月、元医師山本直樹被告(47)と共謀し、ALS患者の女性=当時(51)=の依頼を受け京都市内の自宅で薬物を投与し、急性薬物中毒で死亡させた。11年3月には東京都内のアパートで山本被告の父=同(77)=を何らかの方法で殺害した。
山本被告は父に対する殺人罪で懲役13年が確定。女性への嘱託殺人罪で懲役2年6月とされ、控訴している。