一見上手な獣耳メイドの美少女イラスト、プロが添削するとどう変化? 「黒色」をめぐる彩色の妙に驚き

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2024年11月25日 16:00  リアルサウンド

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動画サムネイル(https://www.youtube.com/watch?v=yBwkVcPhg1A)より

 レアカードの高額化も度々話題になる「ポケモンカード」の公認イラストレーターとして多数の人気キャラクターを手がけ、イラスト上達法に関する多くの著書を持つさいとうなおき氏が、自身のYouTubeチャンネルで展開する「添削動画」が人気を博している。


(参考:【画像】一見上手な獣耳メイドの美少女イラスト、プロが添削で激変していく様子


 さいとう氏は2019年10月1日、YouTubeチャンネルを開設。イラストレーターを目指す初心者に向けた講座のほか、上達のための具体的なアドバイスを送る「気まぐれ添削」シリーズで人気を高めてきた。クリエイターの個性に寄り添いながら、プロならではの視点でアドバイスを送る動画は、自分ではイラストを描かない人にとっても、審美眼が磨かれる貴重な内容だ。


 最新の添削動画は、「【きまぐれ添削177】黒の使い方に気をつけて...!!」と題されたもの。目から鱗が落ちるような、色使いのポイントについてアドバイスが送られている。


 この動画で取り上げられた作品は「桜と獣耳メイド」というタイトルの愛らしいイラストで、さいとう氏は、「猫耳メイドと桜という甘々な組み合わせでテーマ選びがよくできており、やりたいことがはっきりしているのが非常にいい!」と評価。一方、相談者の悩みは「背景が浮いて見える」「手の形や全体の影の入れ方が苦手」「色使いが暗くなってしまう」と多岐にわたるが、問題ははっきりしているという。「黒色と緑色がかなり大きなマイナスポイントになっている」というのだ。


 実際、さいとう氏が背景の緑色をラフに消してみただけで、雰囲気がガラッと変わることがわかる。一見、優しい色にも思えるが、緑は主張が強い色で、「使い方を間違えると悪さをする」のだという。また色味以外では、頬を赤らめて照れたような表情と、お盆のようなものをただ持っている「ポージング」がマッチしていないということで、お盆の位置を高くして、顔を隠そうとしているようなポーズに変更された。キャラクターの感情とポーズを結びつけることで、絵としての完成度がグッと上がるという添削だ。


 詳しくは実際に動画をチェックしていただきたいところだが、ここからの添削がすごい。作者は「色使いの暗さ」に悩んでいるということだったが、さいとう氏はあえて、キャラクターの明るさを落とす形に添削。これは主に、背景に広がる「外」が明るく、キャラクターは室内にいるため。髪色と肌の色を暗くしたため、いったんはイラスト全体が暗い印象になったが、髪の毛にハイライトを入れることで一気に明るいイメージに。絵全体が暗い印象になっていたのは、全体としてコントラスト(明るい・暗いの幅)が弱かったためだったのだ。さらに、カメラマンがレフ板を使うように、「反射光」を意識して「色を持ち上げる」ことで、イラストはより鮮やかな印象になっていく。プロの技術とともに、さいとう氏の言語化能力にも驚かされるアドバイスだ。


 そして、動画のタイトルにもなっている「黒の使い方」について。今回のイラストが暗い印象になってしまっている大きな要因は、キャラクターのまつ毛と服が「真っ黒」になっていることだ。カラーイラストにおいて黒は浮く色で、「空間性をぶち壊しにしてしまう」ほどの力があるという。そのため、基本的には黒はあまり使わず、「暗い茶色」や「暗い青」に置き換えるのが安全のようだ。実際、まつ毛をグラデーションのついた濃い茶色に調整すると、初見では「黒」と答えそうな色味でありながら、イラスト全体に馴染み、全体的な印象が明るくなった。


 さらに、背景の格子を縁取っていた暗いラインも削除し、光を描き入れて印象を和らげると、イラストは柔らかな雰囲気に様変わり。元のキャラクターを活かしながら、色味と細部の調整で一気にプロクオリティの作品に仕上げられた。なんとなくイラストを眺めているだけではわからない、彩色の妙。自分では絵を描かない人も、知識として覚えておけばイラストを見るときの解像度が一段階上がりそうな添削動画だった。


■参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=yBwkVcPhg1A


(向原康太)



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