「牝馬の時代」と言われて久しいが、ダートのトップレベルに限ると、牝馬が牡馬に交じって活躍することは少ない。JRAで唯一のダート中距離GIであるチャンピオンズC(3歳上・GI・ダ1800m)も例外ではなく、圧倒的に牡馬優勢。そんな逆風を跳ね返し、牝馬で唯一の勝ち馬となったのが15年のサンビスタだ。ホッコータルマエやコパノリッキーなどの砂の猛者を一蹴した一戦を振り返ろう。
サンビスタは父スズカマンボ、母ホワイトカーニバル、母の父ミシルの血統。5歳時にブリーダーズゴールドCで重賞初制覇。秋のJBCレディスクラシックで牝馬ダートチャンピオンの座に就くと、チャンピオンズCでも4着に好走した。馬主のヒダカ・ブリーダーズ・ユニオン所属の牝馬は6歳春で引退が既定路線だが、関係者が協議して現役を1年延長。これが英断だった。マリーンC、レディスプレリュードとタイトルを2つ加え、JBCレディスクラシックが2着。そして迎えた一戦がチャンピオンズCだった。
この年のチャンピオンズCはハイレベルだった。とりわけ前走でJBCクラシックを連覇したコパノリッキー、連覇を目指すホッコータルマエ、ジャパンダートダービーを含めて4連勝中のノンコノユメが「3強」と目されていた。一方、サンビスタは前走牝馬限定で敗れていることもあり単勝66.4倍の12番人気。伏兵の1頭に過ぎなかった。
しかし、競馬は何が起こるか分からない。スタートからM.デムーロ騎手に促されて中団のインを確保。4角でスムーズに進路をつくると、そこからグングン伸びた。前を行くコパノリッキー、ホッコータルマエをかわして先頭へ。そのまま後続を引き離すと、内から伸びたノンコノユメに1馬身半差をつける完勝。牝馬では初となるチャンピオンズC制覇、そしてJRAダートGI制覇を成し遂げたのだった。
この一戦を最後に繁殖となったサンビスタ。産駒のジレトールがダート短距離路線で活躍しているが、重賞ウイナーはまだ出ていない。とはいえ、まだ15歳。母仔2代でチャンピオンズC制覇の偉業を達成するような、大物の誕生を期待したい。