F1第22戦ラスベガスGPレビュー(前編)
ラスベガスの街は、光り輝くネオンで美しく煌(きら)めく。ラスベガスGPのパドックもムーディなライトアップで、華やかなナイトライフを楽しむ人々のスパンコールがキラキラと光り輝く。
だが、昼間のベガスは、多くの人々がイメージするのとは違った表情を見せる。ラスベガスストリップから1ブロックも離れれば平面的な建物ばかりになり、その先は砂漠と岩山の荒涼とした風景が広がっている。
ライトアップというのは、美しい部分だけに焦点を当て、見せたくない部分は覆い隠す。そうやってラスベガスの街は、光を放っているのだ。
そんなラスベガスで、角田裕毅(RB)は予選で7位に入る快走を見せた。
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昨年は大苦戦したこのロングストレートばかりの市街地サーキットで、しっかりとマシンを進化させることができたからこその結果だ。
「FP1では去年からの反省点を生かして大きく変えたセットアップを試したんですけど、それがうまくいきませんでした。でも、それも想定して別のアイデアも用意していたので、それをFP2で試してみたらうまくいって、方向性が見えてきたんです」
初日はアンダーステアに苦しみ、それがロングランでもタイヤをダメにする大きな要因になっていた。
気温と路面温度が10度を下回るような寒さのなかで、ラスベガスの公道を使ったサーキットはシーズンで最もグリップレベルが低い。そのため、スライドすることでタイヤ表面がひどくささくれ立ってしまうのだ。
予選・決勝に向けてセットアップをさらに変更し、タイヤに優しいマシンを目指した。その結果としてタイヤの温まりが悪くなり、コースインした次の周にもう1周、ゆっくりとした"ビルドラップ"をして、タイヤを温める必要が出てくるほどだった。
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しかし、角田の渾身のアタックもあり、予選7位という望外の結果を手にすることができた。
【最後の最後までセットアップを微調整】
「7位というのはあんまり予想していませんでした。Q3に行けたらとは言ったものの、本当にギリギリかなと思っていたので。
FP1は19位・20位でしたし、レース週末の走り始めはスムーズではなかったですけど、FP2でセットアップの方向性を見つけ、そこからうまく挽回して、セッションごとに徐々に改善していけたのがよかったと思います。それも1つひとつのセッションごとのステップアップ幅がかなり大きかったので。そこが勝因かなと思います」(角田)
レースエンジニアのエルネスト・デジデリオいわく、ふだんのレースではやらないくらい細かな変更の突き詰めを最後の最後までやっていたのだという。
「今までのレース週末では一度もなかったくらい、今回はセットアップをガラッと変えたんだ。昨年の失敗を踏まえて用意したセットアップでFP1をいざ走ってみると、大きく外れていた。でも、どう修正すればいいのか、(角田は)正しい答えを誰よりも早く見つけることができた。
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そこから先もフロントフラップやメカニカルバランスなど、調整できるものは最後の最後までずっといじっていた。ふだんならFP3までにはセットアップがほぼ決まっていて、あとは微調整だけど、今回は予選まで大きな変更を加え続けたんだ」
華やかな舞台裏で、角田はかつてないほど緻密で、重箱の隅を突くような地道な作業を続けていた。
その結果、「自分好みのマシンに仕上げられたことが大きかった」と角田は言った。そうでなければ、ハースやアルピーヌには勝てないからだ。
◆つづく>>