天才が凡人とお笑いコンビを結成したら――。その両者の野望がぶつかりあう白熱の漫画作品が短編『炎天下』。Xでは『絶望的に笑いの才能のない男と、漫才することになった話』とポストされている。
(参考:お笑い好き必見の漫画『炎天下』を読む)
作者はBLを含む、少年ふたりを描いた作品を多く手掛けてきた野良おばけさん(@noge__)。多様性のある日本の漫才の世界に魅了された経験を落とし込んだ、という本作はどのようにして生まれたのだろうか。(小池直也)
――作家名の由来を教えてください。
野良おばけ(以下、野良):もともと「響きが可愛い」という理由で「野良」または「おばけ」のどちらかを名乗っていました。商業漫画を描き始めるタイミングでふたつを合体させたんです。あまり意味はないですね(笑)。
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――作品の反響などはいかがですか?
野良:もともとはカドコミに掲載した短編だったのですが、なるべく多くの方に読んでもらいたいと思ってXに上げました。
実は思うように数字が伸びなかったのと、思い入れのある作品なこともあって貪欲に何度か再掲しています。漫画の好きな方だけでなく、大学のお笑い研究会の方が読んでくださった形跡もあり嬉しかったです。
――制作の動機について教えてください。
野良:10年ほど前、お笑い番組や芸人さんのバラエティ番組を追いかけていた時期があって、ずっと憧れだった彼らをモチーフにした漫画を描きたいと思っていました。
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だから制作の経緯は自分の好きなものから。知り合いに某大学のお笑いサークルの裏方をやっていた人もいたり、取材先もあったことも決め手でした。
――主人公の緑法助(ポン助)と阿内考太郎のふたりにモデルはいますか。
野良:モデルはいないんですけど、もともとは別で進行していた連載企画がベースになっています。連載を転がしていくための引きとして「才能のある人とない人を組ませたい」と。
お笑いの才能ではなく技術や方法論で上り詰めていくキャラがいたら面白いと思ったんですね。お笑いはスポ根な面もあるので、それ部分を彼らを通して描きたかったんです。
お笑いコンビの独特な関係性を描きつつ、普段お笑いを見る見ない関わらず多くの人に刺さる作品にしたいという想いもありました。
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――漫才シーンの緊張感も印象的でした。
野良:お笑い漫画を描いてきた先人の皆さまも工夫されてきたと思います。私はセリフだけで表現するのはもったいないので、自分が見ていた漫才の立ち振る舞いや目線、大きく作った表情を漫画に落とし込むように意識しています。
――続きが気になる読者もいると思うのですが……。
野良:緑と阿内も描きたいのですが、できるのであれば色々なお笑いコンビが出てくる短編集が作れたらいいなと考えています。色々な芸人さんがいて多様性があることが素敵だなと思うので。
――現在は2作の連載を担当されていますね。
野良:そうなんです。コミックDAYSで描いている『赤と青のハザード』は15歳のふたりの少年が主人公です。その片方がボクシングに出会って夢を得るのですが、もう一方の親友がそれを崩していくというストーリーで、「この先はどうなるんだろう?」と追いかけてもらえる作品にしていきたいです。
そしてカドコミアプリでは『165185』が月刊連載中です。こちらも少年ふたりが主人公で、高校の卒業式に片方がもう片方にダメ元で告白をしたら、なぜかOKをもらえてしまうんですね。身長もスクールカースト的にも立場が違う彼らが両者が少しずつ理解しあう物語。
――色の違う物語を並行して描くのは難しくはないですか。
野良:上手く切り替えて描けているかなと思います。必死なボクシングを描く緊張感から、『165185』で理解しあう人間同士を描いて和んだり。片方を描きながら、もう一方の作品のアイデアが浮かぶこともあって、いい影響を与えあっているんじゃないかなと。
――体力的には?
野良:スケジュール管理が趣味なんですよ。それを遺憾なく発揮して余裕を持ちつつ、お休みもいただきつつ走っております。冬のコミックマーケット(月曜日・東地区・ウブロック・07b)でスケジュール管理について漫画『安全原稿のススメ』も出すので、そちらもぜひ読んでいただければ嬉しいです。
(小池直也)
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