「サブウェイ」再浮上なるか ベタ惚れしたワタミが全てを賭けるワケ

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2024年11月26日 10:51  ITmedia ビジネスオンライン

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日本のサブウェイはどうなるのか

 ワタミは10月25日、日本サブウェイを完全子会社化した。グローバル本部であるオランダのSubway International B.V.と、日本におけるサブウェイのマスターフランチャイズ契約を締結し、今後ワタミが国内のサブウェイ事業を展開する。


【画像】こんなメニューも! カスタマイズができないサブウェイとしては異例のサンドイッチ、「あんこ」と「マスカルポーネ」を挟んだ菓子パンメニュー、一番人気のえびアボカド、ゴロゴロ野菜のスープ(計5枚)


 本件の記者会見に登壇したワタミの渡邉美樹会長兼社長は「カーネル・サンダース氏は65歳で起業して、ケンタッキーフライドチキンを世界ブランドに育て上げた。私も今年65歳になった。今日を第2の創業として彼にならい、これから『サブウェイのワタミ』をつくりたい」と宣言。今後、ワタミの事業は、サブウェイがメインとなっていく見通しだ。


 渡邉会長によれば「ワタミには国内外からハンバーガーのチェーンをやらないかと、話を持ち込まれたが、マクドナルドには勝てないと思った」とのこと。マクドナルドに勝てる強い商材、ブランドを探していたところ、サブウェイにたどり着いた。


 「居酒屋のワタミが、なぜサブウェイ?」と思う人も多いだろう。渡邉氏がこれほどまでサブウェイに期待を寄せる要因には「ワタミモデル」との親和性が挙げられる。


 ワタミは2002年から、有機野菜の栽培に取り組んでいる。現在は国内7カ所の「ワタミファーム」で農業・酪農を手掛けている、日本最大級の有機野菜の生産者でもある。「鳥メロ」「ミライザカ」「和民のこだわりのれん街」といったワタミの居酒屋に行くと、ワタミファームの野菜を使ったサラダなどのメニューがあり、ワタミファームから旬の新鮮な野菜を仕入れられる点は、サブウェイとの親和性が高い。


 同社が北海道の美幌峠牧場で育てている乳牛のミルクから製造した「美幌グラスフェッドアイス」は、市販のアイスクリームと比較してカロリーが低い。非常にあっさりした味わいで、健康的な点もサブウェイとも相性が良く、売りになるだろう。


 当面は、国内マクドナルドの店舗数に肩を並べるため、今後10年で現在の約180店から1000店超に拡大していく方針だ。サブウェイは9月現在で世界100カ国以上、約3万7000店を出店する巨大ブランドであり、マクドナルドの約4万店とそう遜色ないことから、ポテンシャルは間違いなくある。


 ワタミは今や、外食より宅食の方が売上規模が大きい。外食も、テークアウト専門を含めて「焼肉の和民」「すしの和」、和牛串の「築地牛武」にアメリカン・カジュアル・ダイニング「TGIフライデーズ」など、非居酒屋にも多彩な業態を有している。


 近年は若年層を中心に、飲酒する人が減少傾向だ。コロナ禍以降、夜まで出歩かずに早く帰宅する人が増えている。居酒屋を取り巻く状況は厳しく、非居酒屋を伸ばす方が確かに合理的だ。


●2010年代に伸び悩み 投資ファンドの下で再出発中のサブウェイ


 そんな中でワタミが目を付けた、サブウェイの歴史を振り返ってみよう。創業は1965年、米国・コネチカット州にて。「ピートズ・スーパー・サブマリン」という、ロードサイドのサブマリン型サンドイッチ(細長いパンを潜水艦に見立てて具材を挟んだサンドイッチ)の店をオープンした。当初からカスタマイズ可能なつくり立てのサンドイッチを、手頃な価格で提供する趣旨の店だった。


 創業者は当時17歳のフレッド・デルーカ氏と、彼の家族の友人だったピーター・バック氏。デルーカ氏の学費を調達するために開業したとされ、初期投資の1000ドルをバック氏が出資した。その後1968年にサブウェイに店名を変更し、店舗網を拡大。さらなる成長のためフランチャイズ(FC)店を展開し始め、この戦略が大成功した。


 1981年に200店を達成すると、1984年にバーレーンで海外1号店を出店し、海外にも積極的に出店するように。1987年に1000店、1990年に5000店へと急拡大。現在は4万店近くを運営している。


 順調に拡大してきたかに見えるが、サブウェイは2010年以降はあまり店舗数が伸びておらず、頭打ちの感がある。創業者のデルーカ氏は2015年に67歳で、バック氏は2021年に90歳で亡くなった。


 2023年に米国の投資会社、ロアーク・キャピタルの傘下に入ったが、これは再度の成長を模索している段階に入ったとも受け取れる。そのタイミングで、日本ではワタミに声がかかった。ワタミの記者会見にはサブウェイのチッジーCEOも出席し、ともに日本のサブウェイ事業を飛躍的に発展させる方針だと力を込めて語った。


●サントリーが運営も、手放した過去


 日本にサブウェイが上陸したのは、1992年。1号店を東京の赤坂見附にオープンした。サントリーが子会社として日本サブウェイを設立し、米国本部とマスターフランチャイズ契約を結んで、しばらく米国式の商品とサービスで展開していたが、まだ時期尚早だった。自由にパンや野菜の量などを選べるスタイルが日本になじみがなく、パンの固さなどが受け入れられず、伸び悩んだ。


 その後、1999年から日本人の好みに合ったしっとり感のあるパン生地を採用したり、日本独自のメニューを投入したりと、ローカライズ戦略を基に成長。最盛期の2014年には、国内で500店近くまで伸びた。にもかかわらず、また伸び悩むどころか不調に陥ってしまった。5年後の2019年末には200店ほどに半減している。


 背景には、コンビニのサンドイッチやサラダメニューの拡大に加え、いわゆる「パワーサラダ」専門店の台頭、急成長で人材が育っていなかったためのサービス低下などがあったとされる。そのころサブウェイ本部は、海外店をマスターフランチャイズから直営へとシフトしていた。日本もサントリーホールディングスが2016年に、株式の65%を本部へと売却。2018年には残りも売却して、完全に手を引いた。


 とはいえ日本から撤退まではいかず、新生・日本サブウェイはコロナ禍でさらなる不採算店の整理を進め、185店にまで減っていた。2023年には本部の経営が投資ファンドへと変わり、再び海外店をマスターフランチャイズに戻す動きが進む。過去3年、中国など20カ国以上でマスターフランチャイズ契約を締結。2024年の新規開店の40%以上がマスターフランチャイズ各社がオープンしており、サブウェイの成長エンジンとなっている。


●赤字店舗は1つもなし 全店が黒字


 11月14日にワタミが開催した2025年3月期上期決算説明会で、渡邉会長は「10月25日から3週間、サブウェイについてさらに知見を深めた」とし、「これからの日本のサブウェイの味は、ワタミが決めることに了承をいただいた。もっともっとおいしくなる」と、自信を見せた。


 なぜ、渡邉会長はサブウェイが大きく成長すると思えるのか。現在国内で展開している178店に年間で赤字の店舗は1つもなく、全店が黒字なのが大きい。6.5坪と狭い立地で出店でき、駅前や郊外、学校や病院など場所を選ばないのも、有利な点だ。渡邉会長によれば「2000万円の投資で、6000万円の回収ができている」という。


●ようやく「ワタミモデル」が板についてきた


 今後、ワタミは3000店の出店予定を定め、逆算して計画的に出店していく方針だ。2025年1月から2026年3月で、まず35店を出店。2026年4月〜2027年3月は50店を出店し、翌年からは毎年100店前後を出店しながら、10年で1065店を達成する計画だ。


 具体的には、2025年1月に東京都大田区のワタミ本社ビル1階に研修店舗を出店予定。2月中旬には、新しいサブウェイの形を示す、フラッグシップ店舗を出店する予定もある。


 なお、ワタミの2025年3月期上期決算は、売上高が433億8600万円(前年同期比7.6%増)、営業利益が22億1500万円(同22.5%増)、経常利益は18億8600万円(同44.3%減)。親会社株主に帰属する中間純利益は14億3700万円(同48.6%減)だった。順調に売り上げと営業利益が大きく伸びた一方、経常利益と中間純利益は激減している。3月末と比較してドル円の為替レートが円高で進行した影響が原因とのことだ。


 セグメントごとの営業利益は、国内外食事業が売上高163億7100万円(同9.2%増)、セグメント利益が6億9600万円(同56.7%増)となった。居酒屋業態が好調に推移したのが大きく寄与している。コロナ禍を経て宴会ができる場所が減ったため、相対的に多く残ったワタミの店舗に、宴会需要が集中しているという。渡邉会長が中間決算発表で明らかにしたが、ここまで宴会予約は前年比で116%、12月は136%とさらに好調だ。顧客単価も鳥メロが130円、ミライザカが175円、上がっている。


 ワタミファームで生産した有機野菜や、グラスフェッドアイスなどの畜産物をメニューに組み込み構想をあたためてきたワタミモデルがようやく現実化してきた感がある。料理の味を決めるソースなども、OEMやメーカーに頼るのを止め、全国に5カ所ある自社工場に戻した効果もあるだろう。


●「固定メニュー」の充実が今後のカギか


 現在の主力である宅食事業は、売上高が201億5000万円(前年同期比増減なし)、セグメント利益が23億4000万円(同16.4%増)だった。調理済み商品の配達数が、2940万6000食(同4.9%減)と、コロナ禍が落ち着いて需要減になったが、単価増で増益となった。新規事業として、日本人の5人に1人が悩むとされる糖尿向けの宅食を、ワタミファームと連携してスタートしており、成長が見込まれる。


 海外事業は、売上高が52億3700万円(同47.7%増)、セグメント利益は7800万円(同665.7%増)。為替の影響と、シンガポールのLEADER FOODグループを買収したことで、増収増益となった。


 農業事業は、売上高2億6500万円(同5.2%増)、セグメント損失が8400万円(前年同期は9200万円の損失)。万年赤字の事業だったが、黒字転換が見えてきた。今後は「天然のインスリン」と呼ばれるイヌリンを含み、糖尿病の人に好まれる菊芋の生産や、サブウェイに供給するグラスフェッドアイスや有機野菜に生産を集中する。投資家から見れば赤字の農業を切り捨ててほしいが、サブウェイや糖尿患者向け宅食と一体化して、黒字になるなら話は別だ。


 せっかく育ててきたワタミファームを守るためにも、ワタミにとってサブウェイは絶対に欲しいブランドだったといえるだろう。今後の成長に向けたヒントは、サブウェイが11月に発売した商品にあるかもしれない(ワタミはかかわっていないけれど)。


 ハインツ日本とコラボした商品として2種類のサンドイッチを発売したもので、サブウェイでは異例といえるカスタマイズができない商品。これまでの歴史を振り返ると、極めて日本向きの企画といえるだろう。サブウェイの顧客には「サブマリン・マイ・ウェイ」で自分でパンも野菜も選びたい人もいれば、カスタマイズがない固定メニューの方が良い人もいる。ワタミでは、両方のニーズに応えるシステムを考えていくといい、期待が集まる。


(長浜淳之介)



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  • サブウェイのメニューがワタミの食事みたいにしょぼくなり、具も干乾びて、お値段が高くなりますよ。
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