とろサーモン久保田さん、メディアに「芸能人盗撮の撮影罪だぞ」と苦言 弁護士は「そんな犯罪ないです」

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2024年11月26日 11:30  弁護士ドットコム

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お笑いコンビ「とろサーモン」の久保田かずのぶさんが11月23日、Xアカウントで、自身を撮影しているとする一部のメディアに対して、「警察に届け出も考えてます」と“警告”する投稿をし、8500以上リポストされるなど大きな話題となっています。


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久保田さんは、「糞マスコミへ」と投稿の宛先を示したうえで、撮影しているとみられる人物や車をうつした画像と共に、「今年の9月くらいから連日連夜マンションの周りに蔓延り撮影してる人間がいます」と“盗撮被害”をつづっています。



「居酒屋まで着いてきて車の中から盗撮したり、タクシーの後ろを並走したり。マンションの玄関まで来てる時もありました」と被害状況を説明。「ほぼ犯罪です。証拠動画あります」としたうえで、「芸能人盗撮の撮影罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。警察に届け出も考えてます」と訴えています。



プライベートを無断で撮影されるのを避けたいと思うのは、芸能人であっても自然かもしれませんが、一部マスコミにとっては「メシのタネ」という実態もあります。



久保田さんを撮影していたのが本当にマスコミ関係者かどうかは不明ですが、マスコミが芸能人のプライベートを無断撮影することは法的に問題あるのでしょうか。また、久保田さんのいう「芸能人盗撮の撮影罪」とは本当に存在するのでしょうか。清水陽平弁護士に聞きました。



●粗探しのための撮影続けることは「必要性乏しい」

──マスコミが芸能人のプライベートを無断撮影することには、どのような法的問題があるのでしょうか。



もっぱら「肖像権侵害」の問題になると思います。



判例上、肖像権は人格権の一内容として認められており、肖像権侵害といえるかどうかは、最高裁平成17年11月10日判決(法廷内撮影訴訟)が次のように指摘しています。



「被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである」



このように、受忍限度を超えるかどうかという基準になっており、一概に違法かどうかは判断ができないものになります。



──撮影される人物が「芸能人」か「一般人」かで、法的な評価等に違いはあるのでしょうか。



一般人に比べれば、芸能人の方が取材という目的が出てきやすいという意味で保護されにくいとはいえます。特に何か事件等があったときであれば、その傾向は強いといえます。



もっとも、何か不祥事がないかといった粗探しのために撮影をし続けるといった行為には、必要姓は乏しいといえ、受忍限度を超える場合も出てくるといえます。



──撮影する側が「マスコミ」か「一般人」かという点はどうでしょうか。



最近は一般人でもSNSを通じて「報道」のようなことができてしまうこともあり、その違いは微妙なところがあるといえます。



受忍限度を超えるかという問題であるため一概には言えませんが、一般論としては、ファンなどが単に撮影をして私的に楽しむのであれば侵害ということが難しいケースが多いでしょうが、それを公表して収益を得ようとしているとすれば、撮影の目的として正当ではない、といえることがあり得るでしょう。



●久保田さん言及の“芸能人盗撮の撮影罪”は「存在しない」

──久保田さんのいう「芸能人盗撮の撮影罪」とは何を指しているのでしょうか。



このような罪はありません。



基本的に、性的な画像等を隠し撮りされたといった事例でない限り、盗撮は刑法上違法ということはできません。



また、ストーカーになるのではと考える人もいると思いますが、ストーカー規制法は、恋愛感情またはこれが満たされないことによる怨恨の感情といった要件があるため、マスコミに適用することは困難でしょう。



もっとも、地方自治体の条例で、「つきまとい」が禁止されている場合はあり、これが適用できる場合はあるかもしれません。



たとえば、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」5条の2ではつきまとい行為等を禁止し、法定刑は1年以下の懲役または100万円以下の罰金とされています。




【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022〜2023年) の構成員となった。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ・ドラマ「しょせん他人事ですから〜とある弁護士の本音の仕事〜」の法律監修を行っている。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:https://www.alcien.jp



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  • 行き過ぎた謝罪を規制する法律は必要だな。一般人より保護されにくいのは当たり前で、それが嫌なら有名になるなと言うだけの事。
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