“新たな疑惑”が浮上してしまった。11月17日に兵庫県知事選挙で再選を果たした斎藤元彦氏に公職選挙法違反の疑惑が持ち上がり、物議を醸している。
「当選後の11月20日、斎藤氏の広報やSNS戦略を手掛けたと語るPR会社『株式会社merchu(メルチュ)』の折田楓代表取締役が、インターネット投稿プラットフォーム『note』上で、斎藤氏を当選させるために行った広報戦略のノウハウを公開。これが大問題となっています」(全国紙政治部記者、以下同)
斎藤氏は県職員に対するパワハラや、視察先で私的に物品をおねだりしていたという疑いが内部告発により問題化。この影響で今年9月に県議会から不信任決議が出され失職。出直し選挙に臨み、知事に返り咲いたばかり。
「いつか映画化されないかな!」
「折田さんは、斎藤氏の選挙PRにあたり、ポスターやチラシのデザインを一新するだけでなく、SNS運用に関する業務を担い“兵庫の躍動を止めない!”というキャッチコピーや、SNSで“#さいとう元知事がんばれ”といったタグを考案して有権者に刺さるアピールを戦略的に行っていたと、自身のnoteで堂々と打ち明けていました」
これらの文章の締めには、
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《ドラマチックすぎる出来事でしたので、いつか映画化されないかななんて思っています!笑》
と、記述するなど、彼女自身は今回の実績をnote上に記述したと思われるが、SNS上ではこの記事に対して、
《仕事として広報活動をしたなら、公職選挙法に触れるのでは?》
などと、物議を醸して炎上。折田氏は指摘を受けた後にnoteの記事の一部を削除するも、今回の知事選挙は斎藤氏が出馬するとあって日本中の関心を集めていたこともあり、騒動は簡単には収まっていない。
「公職選挙法では、政治家が有権者に金品を与えて選挙運動を依頼する行為を“運動買収”として禁止されています。折田さんがnoteで書いたように、SNSの運用に関する業務を有償で請け負っていたのが事実であれば法に触れる可能性もあるんです」
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“政治資金規正法違反”の可能性
一方の斎藤氏側は、折田氏の会社に選挙ポスターのデザイン制作など70万円を報酬として支払ったものの、SNS運用などは委託していないと表明するなど、公選法違反に触れていないという見解を示している。
合法か違法かの意見が分かれる今回の騒動。弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に見解を聞いた。
「総務省の見解では、業者が主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う場合には、当該業者は選挙運動の主体であると解釈され、当該業者への支払いは買収となる恐れが高くなり、法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮。または50万円以下の罰金となるとされています」
折田氏は投稿した記事の中で、斎藤氏のSNSについて“チームで協力しながら運用していました”と語っていたことから、主体的に行っていたように思えなくもないが……。
「しかし、買収が禁止されるのは、選挙運動を行うことに対してなので、斎藤氏が話しているように、ポスター制作に対してだけ金銭を支払っているのであれば、違反には当たらない可能性もあります」(正木弁護士、以下同)
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報酬の名目になっていなければ違反を回避できる可能性もあるようだが、無償でPR活動を行った場合、寄付という扱いになり“政治資金規正法違反”になるという意見も出ている。
「無償で戦略企画した場合、それが政治資金規正法違反となるのかは判断が難しいところです。もしも、会社として業務を行ったのであれば、対価を受け取らないことが財産上の利益の供与に当たるとして政治資金規正法違反になる余地もあるように思います。報道によると斎藤氏は、経営者の方がボランティアとして個人で参加したという旨の弁解をしているようですから、少なくとも会社の関与は認めず、政治資金規正法違反の可能性も考慮しているものと思われます」
違反なら「当選は無効」
解釈によっては合法とも違法とも捉えられる可能性があるようだが、明確な線引きはあるのだろうか。
「個人のボランティアとして活動する分には合法ですから、やはりお金の授受の有無が一つの線引きになると思います」
もし、違法と判断された場合、どうなるのか。
「現在、斎藤氏は疑われている状態ではあります。仮に違反の判決が確定するなら、今回の当選は無効となります。しかし、公選法で、地方公共団体の長の選挙については、繰上げ当選は認められていませんから、知事選で次点だった稲村和美氏が繰上げで当選することはありません」
再度、知事選の可能性まで出てきたこの騒動。斎藤劇場はまだまだ続くのだろうか。
◆弁護士プロフィール
正木絢生 弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや借金・離婚・労働問題・相続・交通事故など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。