手足の「冷え」がひどくて寝つきが悪い……、という季節が今年もやってくる。
手や足の先端が温まりにくく、慢性的に冷えている感覚があることを「冷え症」と呼ぶ。
「冷え症は、体温調節がうまく機能していない状態です。主な原因として、熱を産生している筋肉量が加齢や運動不足で減り、発熱や血流量が少なくなってきていることが考えられます。このほか、ストレスや不規則な生活などで自律神経が乱れる、女性ホルモンの分泌が乱れて血行が悪化する、といったことも関係してきます」
そう指摘するのは、大阪大学大学院血管作動温熱治療学の嶋良仁特任教授だ。私たちの体は、臓器が集まる中心部を一定の温度に保とうとする。寒いときは血液を集めて温度を維持しようとするため、末端にある手先や足先には血流が行き届かなくなり、冷えを感じやすくなる。
「冷え症の背景には、毛細血管の劣化もあります。毛細血管は、動脈から枝分かれした細かな血管で、末梢に栄養や酸素を届けるために全身に張り巡らされています。本来まっすぐに伸びていますが、加齢により蛇行してきます。すると、毛細血管の壁細胞と内皮細胞にすき間ができ、血流が滞ります。一度曲がった毛細血管は元に戻らないと思われるかもしれませんが、実は加温するとまっすぐになるのです。血行が促進されるため、『冷え』の解消にもつながります」(嶋特任教授、以下同)
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毛細血管を蘇らせるためには、体の特定の部分を意識的に温めることが効果的だ。嶋特任教授らの研究によれば、ひじの上を毎日温めると、毛細血管がまっすぐに伸び、すき間がなくなったという。
「手先の冷えに悩む人を対象に、カイロを使って手首、ひじ、首を温める実験を行い、温めた部位と症状の変化について検証しました。朝から夕方くらいまで温めることを1週間続けたところ、ひじを温めることが冷えの解消にもっとも効果的という結果が得られたのです。ひじの周辺は筋肉が少ないため、熱が伝わりやすいことが関係していると考えられます」
厄介な手の冷えをひじにカイロをあてるだけで改善できるとはなんともお手軽。そこで嶋特任教授に、ひじを効果的に温めるポイントを教えてもらった。
「低温タイプのカイロを、ハンカチやハンドタオルなどでくるみます。100円ショップなどで手に入るひじ用サポーターを使い、締め付けすぎないように両ひじの上側に固定させましょう。低温やけど防止のためにも、肌に直接あてるのではなく、シャツの上からなどのほうが安全です。1日6時間くらいは温めるようにしてください」
朝着替えるときにつけて、夕方外すようにすればOKだ。ただし注意点も。
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「低温やけどを起こさないためにも、少しでも熱いと感じたら、ただちに外すようにしてください」
毎シーズン冷えが気になる人は、いまのうちからひじを温めて、毛細血管をイキイキとさせておこう。
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