【漫画】博士の遺言を信じて100年ーー健気なアンドロイドの姿に心打たれるSNS漫画『大予言』に涙

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2024年11月28日 08:00  リアルサウンド

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『大予言』より

 「私は死後百年を経て蘇る/お楽しみに」ーー。そんな博士の遺言を信じて待ち続けるアンドロイドの姿を描いた漫画『大予言』が2024年11月にXで投稿され、3万以上のいいねを記録するなど話題を呼んでいる。博士が蘇ることを待ちつつ、ついに再会のときを迎えて……。


(参考:漫画『大予言』を読む


 本作の作者・仁科さん(@2_4_7_3)は商業作家でありつつ、趣味としても創作をつづける人物。本作を創作したきっかけ、スポットライトを浴びた2人を描くなかで意識したことなど、話を聞いた。(あんどうまこと)


ーー本作を創作したきっかけを教えてください。


仁科:2024年11月に開催された「コミティア(一次創作物の即売会)」への出展に合わせて、短編漫画を描こうと思ったことがきっかけです。もともとSFっぽい雰囲気の作品が好きで、以前から本作の構想もふんわりと考えていました。


 実際に本作を描くにあたり、作品のつかみとなる冒頭の映像が思いついたので、このシーンからどんなお話がつくれるかと考えながら構想を広げていきました。


ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは?


仁科:再会を果たした2人の会話シーンですね。「殺されると知っていたんですか?」と台詞が重なったあと、だんだんと2人がかみ合わなくなっていく……。2人のテンポがずれていくところを描きたいと思っていました。


 2人とも同じ環境で育ってきて、お互いの気持ちはわかっているはずなのに、すれ違ったままお別れをしてしまう。そのことを会話のかみ合わなさとか、目線のズレで表現できたらと考えていました。


 またワンシーンとしては「さみしいんですけど」と言って博士とお別れするところも好きです。


ーー2人の関係を描くなかで意識したことは?


仁科:お互いを「パートナー」だと思っていることです。お互いがお互いに、心身ともに預け合えるような関係と言いますか……。一緒に育ってきたからこそ、お互いを尊重している関係だと思います。


 本作に限らず私が描きたいテーマの1つに「隣人愛」があり、キャラクターの様子から他者への思いやりが感じられるといいなと思っていました。


 また博士は主人であり、あの世へ勝手に逝ってしまった人。アンドロイド・ストラちゃんは従者であり、待ち続ける人ーー。そんな対比になるようキャラクターづくりを意識しました。この世に1人残されたストラちゃんが「(人間が蘇らないことに対して)知りませんね/そんなこと」と発する様子から察するに、2人はいいライバルのような関係と言いますか、お互いに読み合いをし合ってお互いを高め合う、健康的な関係なのかなと。


ーー健康的な関係。


仁科:傍から見たら依存し合っているようにも見えてしまうかもしれませんが、本人たちは意外とお互いのことにはさっぱりとしていて、ちゃんと自分を持っている。そんな関係だと思います。


ーー依存し合っていないことを象徴するように、本作は「再会」ではなく「別れ」で幕引きを迎えました。


仁科:死んだものは戻ってこない。それは世の中の不変的なルールとして存在していると思います。世界の理(ことわり)をねじ曲げてでも再会を果たすか否かと考えた際、本作は長いお別れに終止符を打つことの方がテーマに合った展開になる。蘇って再会を果たすドラマよりも、静かにお別れしていく方がこの2人のドラマとしていいなと思いました。


ーーアンドロイドであるストラさんを描くなかで意識したことは?


仁科:アンドロイド、そして従者として振る舞いつつも、最後に漏れた「さみしいんですけど」に彼女の本音を凝縮させることを意識しました。博士に抱きつくとか、再会を果たせず大泣きするとか、感情をあらわにするところは見せないようにしようと思いましたね。どちらかと言えば情緒が豊かな子というよりも、本作のラストシーンではじめて情緒が芽生えたという感じです。


ーー異世界転生までも想定し、博士の蘇りを待つストラさんの姿は愛らしく思えました。


仁科:夢想家とも感じとれるほどに、無限の可能性を考えられる賢さはあるので、彼女は死んだ人が蘇らないこともわかっているはずなんです。ただ、わかっているはずなのに博士が蘇ることをずっと待っているところに、ちょっとしたいじらしさ、かわいらしさを感じてもらえたらうれしいです。


ーー今後の活動について教えてください。


仁科:これからもずっと漫画を描きたいです。今の私が大切にしたい感情を描きたい、隣人愛やさみしさといったテーマで描きたい、SF作品を描きたい……といった、自分の興味をもとに作品をつくっていくこと。また商業的な作品として、面白い作品をつくるためにだれかと一緒に作戦を立てて作品をつくっていくことーー。ラッキーなことに現在はどちらも実現できる状況なので、個人制作と商業制作といった2つの柱を抱きながら、これからも走っていきたいです。


(あんどうまこと)



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