委託先の運送業者に残業代を支払わなかったのは独占禁止法違反の恐れがあるとして、公正取引委員会は28日、オフィス家具大手「イトーキ」(東京都)に対し、文書で警告した。イトーキは取引先の約20社について残業時間を精査し、未払い分を支払う意向を示しているという。
公取委によると、イトーキは家具の配送や設置などを運送業者に委託。その際、委託費を午前9時〜午後5時の日額で計算し、残業代を追加で支払う契約を結んでいた。だが自社の倉庫での積み下ろし作業は残業とみなさず、トラックへの積み込みや使用済み段ボールの返却といった契約外の作業を無償でさせることもあった。
運送業者の多くはイトーキから残業代を受け取っていないにもかかわらず、自腹でドライバーらに支払っていた。一方、イトーキは2023年の売り上げと営業利益が過去最高だったという。
公取委の担当者は、イトーキの行為を「悪質だ」としたうえで、排除措置命令などの行政処分ではなく警告にとどめた点について「特に残業が増える繁忙期の年度末を前に、問題を解消することが最善と判断した」と説明した。
公取委は今回、独禁法の「物流特殊指定」を適用した。荷主による優越的地位の乱用を規制するため、下請け保護に準じる規定として04年に設けられ、警告は09年以来、3件目。残業規制で物流の人手不足が深刻化する「2024年問題」を受けて、公取委は物流特殊指定による取り締まりを強化している。【渡辺暢】
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