老舗繊維メーカーのユニチカが、衣料繊維、不織布、産業繊維(一部を除く)事業から撤退する。同社は現在、フィルムや樹脂、生分解性材料を生産する「高分子事業」、ガラス繊維等の機能材、不織布、産業繊維の「機能資材事業」、衣料やポリエステル繊維の「繊維事業」の3軸を展開しており、今回の撤退により事業規模はほぼ半減することになる。経営再建に向け、官民ファンド「地域経済活性化支援機構」(REVIC)に事業再生計画を提出し、同機構による再生支援が決定。また、同社の金融債権を有する取引金融機関に対しては約430億円の金融支援を要求するほか、同機構からは第三者割当増資による資金調達を行う。
ユニチカは、尼崎紡績として1889年に創業。1918年以降は三大紡績に数えられる大日本紡績として、日本の紡績業をけん引してきた。1969 年、グループ会社の日本レイヨンとの合併により総合繊維メーカーのユニチカに変更した。
同社は2017年度以降、売上高、営業利益ともに減少基調が継続。その後、2020年度初頭からのコロナ禍による事業環境の変化などがあり、売上高は若干の回復傾向にあったが、2024年3月期には、連結決算開始以来、初めての営業損失(24億7500万円)を計上。円安・原燃料価格の高騰によるコスト上昇、市況の変化に伴う需要減少、高分子事業においては東南アジアを中心とする海外での競争激化による販売単価下落、衣料繊維におけるコモディティ化による収益低下などの影響を受けたためだという。また、同期は減損損失39億円を計上したことにより純損益は54億円の赤字となった。
このような状況に陥ったことに対し同社は「基本的な収益性低下や、硬直化したコスト構造などの潜在的な課題を有していた衣料繊維やポリエステル繊維関連の各事業における抜本的対策に踏みこめていなかったことが大きな要因」と説明。今後、同事業再生計画の遂行により、2028年3月期には全事業で黒字化を実現し、2030年3月期には売上高約700億円を目指し、営業利益は約66億円までの回復を見込んでいる。なお、撤退事業に関する他社への事業譲渡や移管生産などは、2025年8月までの合意を目標とし取り組むという。なお、同社の取締役及び監査役は全員退任する予定だ。
◾️ユニチカ 直近3年間の業績<2022年3月期>売上高:1147億1300万円営業利益:60億500万円経常利益:63億9900万円純利益:22億2300万円 <2023年3月期>売上高:1179億4200万円営業利益:13億2700万円経常利益:10億6900万円純利益:1億200万円 <2024年3月期>売上高:1183億4100万円営業利益:-24億7500万円経常利益:-10億1400万円純利益:54億4300万円