J2ウォッチャー平畠啓史が語る 2024シーズンで見つけた、半端ない、面白い、最高だった選手6人

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2024年11月29日 07:21  webスポルティーバ

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平畠啓史の2024年J2総括 選手編

日本屈指のサッカーマニアでJ2ウォッチャーとして知られる平畠啓史さんの、2024シーズンのJ2総括選手編。今季も思わず話したくなる、魅力あふれる6選手を紹介する。

前編「平畠さんの2024年J2総括チーム編&J1昇格プレーオフ展望」>>

【今シーズン無視できない大活躍】

マテウス・ジェズス(V・ファーレン長崎/MF) 
Matheus Jesus/1997年4月10日生まれ/187cm、80kg

 やっぱり今年のマテウス・ジェズス選手は無視できない。半端ないというか、ひとりで全部やりきれる。すべてにおいてやりきれる選手って、J2では久々に見たような。

 ボールを取ってから5秒、10秒全部自分でやって、最後に点まで決めきるっていう。だからあの新スタジアムに映える選手ですよね。最高のスタジアムで、あんまりこうチマチマしたサッカーより、なんかもうブワーって舞台を全部使うみたいな感じで主役の役者が動いて、最後決めきるみたいな。ピーターパンがワイヤーで吊られてるじゃないけど(笑)。

 髪の毛も長崎のカラーにしたりとか、そういうところもなんか長崎愛を感じます。中盤をやっていたのが、シーズン最後のほうはいきなりFWになって、でも当然のように結果を出す。サイドからカットインして、左足にボールを置いた時にもう決まるなって思える選手ってなかなかいないじゃないですか。

 本当に何でもできる選手なので、「じゃあ悪いけど左サイドバック(SB)やって」と言われたらたぶんやれてしまう。ブラジルってああいう選手が左SBやったりしてるんですよ。下平隆宏監督も、あの選手をてっぺんに置いたのはすばらしいですよね。

【スマートすぎないよさが出ている】

木村太哉(ファジアーノ岡山/MF) 
きむら・たかや/1998年7月8日生まれ/175cm、71kg

 特に終盤戦に向かってマイブームになったのが、岡山の木村太哉選手。面白い選手ですね。何が面白いかっていうと、洗練されすぎてないよさみたいなところがあるんですよ。ちょっと語弊があるかもしれないんですけど、スマートすぎない。

 木村選手のことを、たまに実況の方で「ドリブラー」っていう人がいるんですけど、ドリブラーってスピードできれいにかわす人、きれいなフェイントや技術でかわしていく人だと思うんですよ。でも木村選手の場合は、僕は「アグレッシブ」っていう呼び方が一番いいと思うんですけど、きれいに抜き去るよりも、相手とちょっとぶつかるような感じになりながらも、必ず自分の前にボールが出てくる。

 ミュージシャンとか音楽家って音大とか行きますよね。「コードの押さえ方がこうで」「譜面がこうです」みたいに、知識で入っていくじゃないですか。サッカー選手もたぶんJユースとかで育っていくと「こういう動きするんです」「こうやってパスを受けてターンして、こうドリブルするんです」みたいな、教わることがあるじゃないですか。木村選手って、なんかそういう感じじゃないんですよね。自分で覚えたみたいな。

 だからたまに「え、なんでそんなミスする?」みたいなこともある代わりに、予想外とか想定を超えるプレーも出す。そのプラスもマイナスもすごく魅力的なんです。それだけに木山隆之監督も、たぶんあえてそのまま起用していると思うんです。

【ザ・フォワードという雰囲気が好き】

矢村 健(藤枝MYFC/FW) 
やむら・けん/1997年6月9日生まれ/169cm、69kg

 藤枝の矢村健選手の点取り屋な雰囲気ってたまんないですよね。ちょっと遠目の距離からでも打つ。ザ・フォワードっていう雰囲気がすごい好き。

 矢村選手も洗練されすぎてないし、ちょっと荒々しいぐらい。藤枝みたいなボールをしっかりとつないでいくサッカーにおいては、一番前の人が決めてくれるか決めてくれへんかで、そのつなぎの意味が全然変わってくるわけじゃないですか。だから矢村選手の存在はでかい。

 結構アクロバティックなゴールを決めたり、インパクトが強いんですよね。ものすごいシュートを打つ意外性。FWにとってそれって結構大事じゃないですか。たぶんお客さんとしてスタジアムに見に行ったら「今日矢村決めへんかな〜」みたいな気持ちになるFWですね。勝った負けたとかよりも、帰りの電車の間もずっと矢村選手のゴールについてしゃべれる感じ。「今日、矢村のゴールやばかったな」って。シーズンが進んでいくにつれて、どんどんボールが集まり始めるっていうのも、今シーズンの藤枝を見ていて面白いなと思ってました。

 キャリアハイの16得点ですが、たぶん周りの選手が矢村選手の使い方を理解した。矢村選手は要求してたと思うんですよ。「今ここに出したら俺シュート打てんのに」って。周りから見たら「いやいや、それ無理でしょ」っていうタイミングだったと思うんですよ。でもそれがだんだんボールが出るようになって、点を重ねていくなかで、矢村選手のタイミングに周りが合わせるようになっていったんじゃないかと。

 須藤大輔監督も言ってますけど、ゴールだけじゃなくて結構守備でも体張ったりとか戻ってきたりするんですよ。やっぱりそういうことをすると、周りは使ってやろうっていう気になりますよね。

【上のカテゴリーでも活躍できる可能性】

大崎航詩(水戸ホーリーホック/DF) 
おおさき・こうし/1998年6月30日生まれ/177cm、71kg

 まず左足のキックがうまい。パスも、クロスもいいし、ミドルシュートもある。水戸が今季は3バックにして、その3バックの左に入っているんですね。もともとは左サイドバック(SB)でしたが、3バックの左もできるんですよね。

 前にスピードのある新井晴樹選手がいます。ここの左サイドのラインがめちゃくちゃ面白くて、大崎選手は3バックの左なんですけど、どんどん攻撃に加わっていく。中からも行けるし、外からも行ける。大崎選手の攻撃力がすごく活きている。

 それほど大きい体じゃなくて、見た目もちょっと可愛らしい顔してるんですけど、ヘディングがめっちゃ強いんですよ。空中戦がめっちゃ強い。もっと上のカテゴリーでも活躍できる可能性が十分ある選手だと思います。

 今年はSBの時よりも、ビルドアップの時に余裕を持ってボールを持てたりしたので、そのパスセンスとか、ボールの動かし方みたいなところでさらに幅が広がっていて、大崎選手のよさがより出たかなという気はしましたね。

【攻守に強度のあるプレー。チームの柱】

ユーリ・ララ(横浜FC/MF) 
Yuri Lara/1994年4月20日生まれ/173cm、74kg

 ユーリ・ララ選手は、まさに"BOX TO BOX"の選手ですね。守備だけじゃなくて、攻撃でも非常に強度のあるプレーができる。中盤での守備力も本当にすごいんですけど、自陣に帰ってゴール前とかでの守備もすごい。さらに攻撃に加わった時の迫力が最高ですね。

 もっと世間で騒がれていい選手かなと。これ見よがしな技術を披露したりしたら、みんなもっとすごいとか言うのかもしれないですけど、ユーリ・ララ選手のプレーに関わる強度の回数とかがすごいんですよ。横浜FCはこの選手がいなかったら、ちょっと厳しかったかもしれないというぐらい。

 五分なボールでもマイボールにできるので、そこから攻撃に移っていける。去年のJ1でも結構そういうシーンからゴールに絡んだシーンを何度も見てますけど、やっぱりJ2でも見せてくれていて、本当チームの柱ですね。チームの背骨とも言える存在ですね。

【攻撃が面白い千葉のなかでも際立った存在】

横山暁之(ジェフユナイテッド千葉/MF) 
よこやま・あきゆき/1997年3月26日生まれ/171cm、66kg

 千葉は残念ながらプレーオフに行けなかったですけど、今年もやっぱりいいチームでしたね。攻撃的な姿勢であったり、攻撃の爽快感とか。小森飛絢選手も23点取りましたし。

 そのなかで横山暁之選手のテクニックはもう最高ですね。見ていて面白い。ボール受けてからヒラヒラとひとりふたりかわしていく。ボックスの中にいる選手に一度当てて、自分が潜っていったりして、密集したところを崩していく。狭い場所での技術の発揮の仕方が、見ていて最高です。

 リズム感って結構大事やなって思うんですよ。横山選手だけが持っているリズム感みたいなのがある。岡山の木村選手とはまたちょっと違う感じで、横山選手のリズム感って、みんなが合わせやすい。全部の楽器をうまくつないでいく感じ。心地よいリズムを出せるというか、横山選手と一緒に演奏したらなんか楽しいよね、みたいな。そんな独特のいいリズムを持っていますね。

 今季は5得点ですが、得点以外の貢献度も部分も大きいと感じます。横山選手に預けるといい形でボールが戻ってくる。だから預けたくなる感じはあると思います。攻撃が面白い千葉のなかでも際立った存在でしたね。東京ヴェルディユース育ちらしい、きれいなボールタッチ。

 ひとくちメモとしては、横山選手はピアノが弾けるんです。

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